■「メリンダとメリンダ/Melinda And Melinda」(2004年・アメリカ)
監督=ウディ・アレン
主演=ラダ・ミッチェル クロエ・セヴィニー ウィル・フェレル
あるレストランで劇作家と仲間たちが討論になる。「人生をより見つめているのは喜劇なのか悲劇なのか?」について。そこで彼らは、あるホームパーティの席に訳アリの女性メリンダが転がり込んできた、という同じ導入から始まる二つの物語を語り始めた・・・という珍しい構成。ウディ・アレンの映画は、時にイングマル・ベルイマンみたいにシリアスに人間を描いたかと思えば、コメディに徹することもある。どっちのアレン映画が好きかと言われれば個人的には後者が好みだが、もちろんシリアスなアレン映画も素晴らしいものがある。「メリンダとメリンダ」はそれをどちらも味わえる、一粒で二度美味しい映画?と言えるのかな。
全体的に地味な映画だし、他のアレン映画の傑作には及ばないものの、それでもウディ・アレンらしさをどちらの物語からも感じられて興味深い。僕はどちらかと言えば喜劇版の方が好き。冴えない男のひがみ感情やスノッブな人々への冷ややかな目線、セックスコメディとしての面白さ。このあたりは最もウディ・アレンらしい部分。ウィル・フェレルが冴えないけれど優しい男を上手に演じていて面白いし、ロマンティクコメディのお手本のような細かなところ、ドアにバスローブの切れ端が挟まってしまう場面やグラマー美女が急に自殺しようとする場面などの巧さには、思わずニヤリとさせられる。一方で、悲劇のパートも上手な役者そろいで惹かれ合う男女の心理的な葛藤に、こっちまでハラハラ。ただ時間が短いだけに切ない情感を描ききれないのがむしろ残念なところ。クロエ・セヴィニーが美しい。
結局人生には喜劇性も悲劇性もあるわけでどっちが優れているとは言い切れない。それでも男と女は惹かれ合うもの。ウディ・アレンが言いたかったのはむしろそっちなのかな。そしてウディ・アレンはこの後、イギリスへと活動の拠点を移すことになる。デューク・エリントンの「A列車で行こう」などジャズと、バルトークなどクラシックが聴ける音楽もなかなか楽しい。
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