Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

爆竜戦隊アバレンジャー20th許されざるアバレ

2023-09-09 | 映画(は行)

◼️「爆竜戦隊アバレンジャー20th許されざるアバレ」(2023年・日本)

監督=木村ゆうじ
主演=西興一朗 富田翔 いとうあいこ 阿部薫

当時のリアルタイム世代の感想が多いので、当時のお父ちゃん世代も感想書かせていただきますw。

スーパー戦隊は長男が未就学児だった頃から数年間一緒に楽しんでいた。まあ自分はゴレンジャー世代なんで、基本好きなんですけどねw。長男が見ていた時期の作品の一つが「爆竜戦隊アバレンジャー」。20周年の本作はまさに同窓会のノリ。年齢は重ねたけど基本線は変わらないメンバーの活躍が楽しい。

されど。時代は変わっているもので、行き過ぎだと誰かが思えば、世間が「××ハラスメント」と騒ぎ出す。おっさんが一年戦争の話を始めたらガンダムハラスメントと言われ、「ボヘミアン・ラプソディ」を思い出まじりに語ったらクィーンハラスメントとまで言われる始末だ。一人のインフルエンサーがアバレンジャーは暴力を肯定する集団だと発言したことがきっかけで窮地に陥ってしまう。テレ朝の討論番組のパロディも登場するし、SNSの怖さも描かれる現代的な味付けだ。

でも。今思えば20年前も、
👩🏻‍🦱「うちの子ったら、毎週日曜の朝に、暴れ者の戦隊ヒーロー見ているのよ、奥さん」
👩🏻「うちもよ。いやぁねぇ、暴れる子でいいと思ってんのかしら」
なーんてお母様方が顔をしかめていた。僕ら世代がウルトラマンは暴力的などと言われていたのと同じ反応。僕はそれを横目で睨みながら思っていた。
😏「奥さん。彼らの言うアバレは普通の状態から一歩踏み出して、全力で何かに挑み続けることなんすよ。ヒーローたちは敵に挑み、今の自分を超えて成長するんすよ。子供たちもそれに憧れて、チャレンジする子、頑張る子になるんすよ。それの何がいけねぇんですか」
アバレた数だけ強くなれる 
アバレた数だけ優しさを知る♪
もちろん口に出したら総スカン喰らうんでしょうけど🤣

だけど悪に挑む彼らのスピリットは変わらない。そして世間の誤った先入観に対するアンサーがここにはある。長男と見てた頃より涙腺がゆるくなったせいか、なかなかジーンとくる。「仮面病棟」の木村ひさし監督は、テレビのテイストをきちんと活かして、過剰なアップデートにしていないのが好印象。オリジナルのオープニングそのままもいいね。芸能界を引退していたいとうあいこが出演して、再びイエローを演じているのも嬉しい。博多弁がナイスです。

遠藤正明が歌う主題歌が好き。カラオケで歌うと気持ちよさそう…といつも思ってた。今度試してみるかw。





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リオの男

2023-09-07 | 映画(ら行)

◼️「リオの男/L'Homme De Rio」(1964年・フランス)

監督=フィリップ・ド・ブロカ
主演=ジャン・ポール・ベルモンド フランソワーズ・ドルレアック ジャン・セルヴェ シモーヌ・ルナン

休暇でパリに戻ってきた航空兵のアドリアンは、フィアンセのアニエスの家を訪れる。パリでは南米古代文明の像が持ち去られる事件が起こっていた。アニエスの父である教授が発掘に携わっていたことからアニエスは事件に巻き込まれ、犯人グループに連れ去られてしまう。あとを追うアドリアンが乗った飛行機が着いたのはリオデジャネイロ。彼女と像の秘密に関係する3人の男を追って、アドリアンはリオを駆ける。

ジャン・ポール・ベルモンドはスタントなしでアクションをこなす役者として知られているが、本作でも数々の見せ場が用意されている。3体の像を揃えるとお宝が隠された場所がわかるというクライマックスは、「レイダース/失われたアーク(聖櫃)」で、メダルに差し込む光が場所を示す場面を思わせる。スピルバーグも本作がお気に入りらしく、インディ・ジョーンズシリーズの元ネタと聞くが、わかる気がする。ベルモンドに協力する靴磨き少年も「魔宮の伝説」のショート君につながるのかも。

一方で、ベルモンドは魅力的な女性に振り回される役柄もよく似合う。「暗くなるまでこの恋を」ではカトリーヌ・ドヌーブの嘘に振り回されるが、本作ではドヌーブの姉フランソワーズ・ドルレアックが相手役。

像を持つ男の一人、ブラジルの富豪を演ずるのは「007/サンダーボール作戦」の悪役アドルフォ・チェリ。こういうキャスティングも楽しい。また地理の授業で計画都市(都市計画に基づいて人工的に建設された都市)の例として挙げられるブラジリアの、できて間もない頃の様子が見られるのも興味深い。

気楽に楽しめるアクションコメディ。




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ふたりのマエストロ

2023-09-04 | 映画(は行)

◼️「ふたりのマエストロ/Maestro(s)」(2022年・フランス=ベルギー)

監督=ブルーノ・シッシュ
主演=イヴァン・アタル ピエール・アルディティ ミュウ・ミュウ キャロリーヌ・アングラーデ

オーケストラの指揮者として名誉ある賞を受けたドニ・デュマール。母とビジネスパートナーの元妻は祝福してくれたが、偉大な指揮者である厳格な父フランソワ・デュマールは会場にも現れなかった。そんな父の元に一本の電話が入る。それは念願だったミラノ・スカラ座の音楽監督就任の依頼だった。当然、父は上機嫌。しかしその翌日、スカラ座の総裁に呼び出されたドニは、監督の依頼は父ではなくドニにで、秘書がデュマール違いで伝えたミスだと告げられる。ドニは父の誤解を解き、関係を修復することはできるのか!?

あらすじを読んで、チラシの絵柄を見れば結末の落としどころは確かにわかってしまう。でもそこに至るまでの人間ドラマがこの映画の見どころ。父も息子もこだわりある人だから、自分の思いばかりを押し付けがち。それに修復すべき関係は親子だけではない。ドニはバイオリニストの恋人とのすれ違いもあるし、父は大役オファーが来たことでパートナーへの感謝を今さらながら形にしたい。そんな彼らの間で接点となってくれるのが息子や元妻だったりする。

父が息子に語る真実は驚きの展開だが、予想以上に動揺することもない。それだけ父に与えられたことの大きさが、ドニにはあるんだろうな。ドニの母役ミュウミュウは若い頃に奔放な役柄が多かった人だけど、年齢重ねてからの仕事は素敵なお婆ちゃんが多い。

補聴器を装着する場面のサウンドの使い方も丁寧なつくりで好感。また、全編に流れるクラシックは耳になじみのある有名曲が多いので、クラシック音楽詳しくないからとこの映画を敬遠する必要はないと思う。派手さはないけれど、人間模様にほっこりしたい向きにはお勧めできる。

結末が宣材でバレバレだとしても、サマーシーズンの長尺活劇大作で疲れた身体には、この上映時間と音楽はちょっとした癒しになったかも。こんな感想を書く僕は、ちょっと夏バテ気味なのかもしれないな。




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アリスとテレスのまぼろし工場

2023-09-03 | 映画(あ行)

◼️「アリスとテレスのまぼろし工場」(2023年・日本)

監督=岡田麿里
声の出演=榎木淳弥 上田麗奈 久野美咲 瀬戸康史 林遣都

製鉄工場の事故をきっかけに時間が止まり、空間的にも閉鎖されてしまった町。大人たちも子供たちも変わらないでいることを強要される。大きな変化を望むと空がひび割れ、その空の隙間を狼の頭をした煙が巻き起こって埋めていく。そしてまた何事もない日常が続く。それがまぼろし工場のある本作の舞台だ。

「うる星やつら ビューティフル・ドリーマー」や「涼宮ハルヒの憂鬱」にも出てくる閉鎖空間。変化を望む心がその壁を打ち砕く。それはこの「アリスとテレスのまぼろし工場」でも同じだ。本作では14歳の彼ら彼女らの知らず知らず知らずに惹かれあう気持ちが、変わろうとするひとつの原動力となっていく。

岡田麿里監督が携わった作品では、過去と向き合う辛さが示されてきた。それは今と対比することで観客の僕らをも巻き込んで、共感の気持ちを湧き上がらせた。これまでの作品をちょっとした共通点は確かにある。出られない空間や過去の人物への片思いは「空の青さを知る人よ」、自分の気持ちを吐き出すような告白は「ここさけ」を思わせる。

でも確実に違うのは、本作はただひたすらにまっすぐ未来を見据えていること。映画の中の街の行末は混沌としているけれど、スクリーンのこっち側も未来もなんなモヤモヤしている。でも、今いる世界がどうであれ、今自分はここにいる。ここにいて人とつながっているし、時には惹かれあっている。その気持ちに嘘はない。上気した頬の火照りや、息づかい、肌が触れるもの、匂い、ぬくもり。これまでのアニメでは見たことのない、生々しさを感じる描写は、確かにそこに彼ら彼女らがいる証を示す。「好き」という気持ちが急に高まる様子や、どれだけ胸をざわつかせる感情なのかを、丁寧に描いてみせる。
「好きって、痛い?」
そうだよ。好きになるって、そういうことなんだよ。主人公の叔父を通じて、大人の「好き」も、ちょっとだけ示される。いいね。

「好き」が行動の根底にあるお話だけど、正宗が絵を描くのが得意なのも「好き」→イラストレーターになりたいって変化につがっている。惚れた腫れただけの話だけではない。

多くの方の感想にもあるように、タイトル回収してくれないことに、正直僕も戸惑っている。岡田麿里監督のインタビューを読んで、そもそもの構想(狼少女2人の物語)や言葉を選んだ気持ちはなんとなくわかった。哲学者の名前が二人組の名前だと勘違いしていた幼い頃の記憶が発想の元にあるのだそうだ。

映画館を出て、なーんとなく浮かんだ落としどころ。自分の存在、憧れ、未来、生きる意味について深く考えている正宗と睦実たちこそ、結論を出せずにいる悩める哲学者コンビ。そしてその世界に現れた謎の少女は不思議の国に迷い込んだアリスなんだ。こんなことを考えちゃうのは、「空の青さを知る人よ」のタイトル回収場面で泣いてしまった自分😭だからなのかも。

なーんかまとまりのないレビューになったけれど、なかなかの力作なのは間違いないです。はい。

試写会にて鑑賞。
 


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