Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

ドラゴン怒りの鉄拳

2024-01-08 | 映画(た行)

◾️「ドラゴン怒りの鉄拳/Fist Of Fury」(1972年・香港)

監督=ロー・ウェイ
主演=ブルース・リー ノラ・ミャオ ロバート・ベイカー ジェームズ・ティエン

高校時代に地上波で観たのが最初。あの頃はアクションや復讐劇だけを楽しんでいたけれど、改めて観ると時代背景や人間ドラマも興味深い。

突然亡くなった師匠の葬儀のために精武館に戻ってきた主人公チェン。虹口道場の嫌がらせに怒ったチェンは単身乗り込んで仕返しをする。しかしこれが精武館の仲間を窮地に陥れることになってしまう。師匠が毒殺されたことを知ったチェンは、身を隠しながら虹口道場に復讐を決行する。

清朝末期の中国は、租借地を認めたり、各国の勢力圏があって、まさに列強に食いものにされていた"中国分割"の時代。舞台となるのは上海の日本人租界。租界とは警察権がその国がによって掌握されている場所だけに、日本人に逆らうことが難しい。映画の中でも警察署長が精武館と日本武術の虹口道場の対立の板挟みになる様子が描かれる。そうした時代だけに、中国を支配する外国人に対する怒りはくすぶり続けていた。

そんな背景を考えると、外国人たちが一斉に銃口を向けるラストシーンに込められた悲しみは一層深くなる。怒りと絶望が無言で表現された、もはや伝説的な名場面。ブルースの死後製作された「死亡遊戯」でも引用されているだけに、そのインパクトがいかに大きなものだったか。

多くのカンフースターの中でも、ブルース・リーのアクションはやはり別格。華麗なヌンチャクさばきは何度観ても惚れ惚れする。ロー・ウェイ監督による続編、多くのリメイクも製作された時代を超えてその凄さが語り継がれる作品。クライマックスの日本庭園での死闘は、「キル・ビルvol.1」のラストに影響与えてるのかも。

袴の履き方が前後逆だったり、ソーラン節でお座敷ストリップ…とおかしな日本描写が出てくる。日本文化に対する理解が進んでいない時代の作品。




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宇宙戦艦ヤマト劇場版 4Kリマスター

2024-01-06 | 映画(あ行)

◾️「宇宙戦艦ヤマト劇場版 4Kリマスター」(1977年・日本)

監督=舛田利雄
声の出演=富山敬 納谷悟朗 麻上洋子 伊武雅刀

2023年映画館納め。最終日最終上映にヤマト好きの仲良しと滑り込みっ!ちゃんと観たことがなかった劇場版第1作。4Kリマスター版がスクリーンで観られるなんて機会はもうないだろうから、これは観ておかねばっ!😆

最初のテレビシリーズが放送された1974-75年、僕は小学生。時期的には永井豪のロボットアニメにギャーギャー言ってた頃だが、ヤマトはしっかりと覚えている。赤い地球に滅亡までのカウントダウンが重なり、「真っ赤なスカーフ」が流れるエンディングをすっごく寂しく感じながら、毎週テレビを見ていた。その後も再放送があれば見ていたな。そうそう、小学校6年の鼓笛隊では主題歌を演奏したっけ(懐)。

本作はテレビシリーズの総集編だから、話の進行が駆け足なのは仕方ない。木星で浮遊大陸を波動砲で吹っ飛ばす場面はあっても、その強大なエネルギーの怖さには触れていない。反射衛星砲で苦戦するエピソードもすっごく悲壮感を感じていただけに、本作ではあっさりとしている。それでもストーリーの軸となる見せ場はしっかり押さえている。特に七色星団のドメル戦のど迫力と、もうダメかも…と子供心に思った危機感はそのまま。ガミラス星での死闘も、4Kリマスターのノイズのない綺麗な映像で味わえたことがありがたい。それにしてもこうして話をつなぐと、見せ場ばっかりだから130分は実に濃密。リメイクの「追憶の航海」でも同じことを思ったな。

最後の戦闘でガミラス星を滅ぼしてしまったヤマト。「戦うべきではなかった。愛し合うべきだった。」古代進の台詞は、初めて見た時も子供心に強く刻まれたけれど、今回はその直前の森雪のひと言、「あたしにはもう神様の姿が見えない」も重く感じられた。ヤマトシリーズの作品には様々な魅力があるけれど、貫かれたのは、誰かのために自分に何ができるか。戦闘シーンや戦術の面白さはもちろんあるけれど、作品を通じて君ならどう考える?どうする?と突きつけられているような気持ちにさせられる。

何よりも、今回映画館で観られた喜びは大きい。宮川泰のオリジナルの音楽を映画館の大音量で聴けるなんて。シリーズ最初の方で見られる肌の色の塗り違いが語り草となっているが、今回のリマスター版でも修正はされずに場面が変わると肌が青く変わったりもそのまま。物足りなかったのは、帰路でのデスラー逆襲シーンと「古代君が死んじゃう!」がなかったこと。でもあの場面があったら、たっぷり2時間半超の長尺だったな。



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tak's Movie Awards 2023

2024-01-02 | tak's Movie Awards




2023年の映画生活は、ここ数年のうちで最も映画館通いができた年。アニメ率が異様に高いのと、サマーシーズン以降ヒット作中心だったことから、前半に見逃した映画も多かった。それでも観られる本数は限られているから、選球眼と情報収集は大切。Filmarksでの率直な感想と口コミは大事な情報源だった。
さて。いち映画ファンとしての年中行事、2023年の年間ベストを発表しまーす。この1年間にわたくしtakが観たオールタイムの映画からセレクト。公開年にタイムリーになってません。配信で旧作を観なおす機会も多かったので、ご了承くださいませ。

tak's Movie Awards 2023

■作品賞=「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」(2023年・アメリカ)

上半期に外国映画にありつけなかったことやリバイバル上映が楽しかったこともあり、下半期いちばんの衝撃となったのは本作。マーチン・スコセッシらしい裏社会の描き方が、アメリカの黒い歴史をスクリーンに刻み込む。

今年の10本
SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(2022)
TAR/ター(2022)
イニシェリン島の精霊(2022)
帰れない山(2022)
キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023)
ゴジラ-1.0(2023)
翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~(2023)
バッファロー’66(1998)
ファルコン・レイク(2022)
私がやりました(2023)

■アニメーション作品賞=「さよならの朝に約束の花をかざろう」(2018年・日本)

Filmarksの再上映イベントにて鑑賞。勝手に恋愛ものだと思って避けていた。スクリーンのこっち側との接点がまったくないファンタジー映画だけど、ここに描かれる人を思う気持ちは普遍的なもの。

■監督賞=ボブ・フォッシー「キャバレー」(1972年・アメリカ)

ミュージカル映画がもつ音楽の力と、映画がもつ物語の力が見事な調和をもたらす傑作。2022年の「午前10時の映画祭」を見逃し、配信も近場のレンタル店でもありつけず、やっと観ることができた。ノミネートに旧作が多いのはそれぞれのすごさを思い知らされたから。

今年の10人
今村昌平「カンゾー先生」
イヴ・ロベール「わんぱく戦争」
今敏「パーフェクトブルー」
北野武「首」
ジョン・フランケンハイマー「大列車作戦」
トッド・フィールド「TAR/ター」
フランソワ・オゾン「私がやりました」
ボブ・フォッシー「キャバレー」
マーティン・スコセッシ「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
宮崎駿「君たちはどう生きるか」

■主演男優賞=ルカ・マリネッリ、アレッサンドロ・ボルギ「帰れない山」(2022年・イタリア=ベルギー=フランス)

育ち方も生き方も違う二人の心のつながりに胸を打たれる。心のどこかで人と自分に優劣をつけて日々を過ごしている僕らに、気付きを与えてくれる。二人の対比があるからこその素晴らしさ。ペアで選出といたします。

今年の10人
イヴァン・アタル「ふたりのマエストロ」
コリン・ファレル「イニシェリン島の精霊」
ジャン・ギャバン「現金に手を出すな」
トム・クルーズ「ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPART ONE」
バート・ランカスター「大列車作戦」
ヴィンセント・ギャロ「バッファロー’66」
ホアキン・フェニックス「ナポレオン」
光石研「逃げ切れた夢」
ルカ・マリネッリ、アレッサンドロ・ボルギ「帰れない山」
レオナルド・ディカプリオ「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

■主演女優賞=ケイト・ブランシェット「TAR/ター」(2022年・アメリカ)

全編出ずっぱりで主人公のあらゆる感情を表現し尽くす。撮影後に引退もほのめかす程に完全燃焼した名演技。音楽家としての音楽に向き合う姿勢や厳しさ。普通の人間性では高みにはたどり着けない。その凄みを思い知らされる。

今年の10人
イザベル・カレ「ムースの隠遁」
キャリー・マリガン「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」
ケイト・ブランシェット「TAR/ター」
シアーシャ・ローナン「ウエスト・エンド殺人事件」
ジェーン・バーキン「彼女とTGV」
ゾーイ・カザン「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」
ソフィア・ローレン「ふたりの女」
マルシューカ・デートメルス「肉体の悪魔」
ミシェル・ヨー「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
ライザ・ミネリ「キャバレー」

■助演男優賞=キー・ホイ・クァン「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(2022年・アメリカ)

80年代映画育ちにとっては懐かしい友達との再会。マルチバースで様々な顔を見せる役柄だが、僕らはこれまでの彼のキャリアに重ねてしまう。お下品なギャグやふざけた作風が硬派な映画ファンに嫌われる本作だが、俳優陣の頑張りは評価されるべき。

今年の10人
エイドリアン・ブロディ「ウエスト・エンド殺人事件」
キー・ホイ・クァン「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
クリストファー・ウォーケン「グリニッジビレッジの青春」
ジョエル・グレイ「キャバレー」
バリー・コーガン「イニシェリン島の精霊」
ブルース・ダーン「ブラック・サンデー」
ブレンダン・グリーソン「イニシェリン島の精霊」
マッツ・ミケルセン「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」
リノ・ヴァンチュラ「現金に手を出すな」
ロバート・デ・ニーロ「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

■助演女優賞=リリー・グラッドストーン「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」(2023年・アメリカ)

じわじわと迫る日常の恐怖の中、夫への信頼と白人への疑念の間で葛藤する女性を演じて、堂々たる演技で大物男優と渡り合う見事な仕事。

今年の10人
イザベル・ユペール「私がやりました」
オリビア・ハッセー「サマータイム・キラー」
ケリー・コンドン「イニシェリン島の精霊」
シェリー・ウィンタース「グリニッジビレッジの青春」
ジャンヌ・モロー「大列車作戦」
ジョアンナ・シムカス「冒険者たち」
ノエミ・メルラン「TAR/ター」
浜辺美波「シン仮面ライダー」
ミュウ・ミュウ「ふたりのマエストロ」
リリー・グラッドストーン「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

■音楽賞=上原ひろみ「BLUE GIANT」(2023年・日本)

予告編見て音楽が上原ひろみと知った瞬間に、これはすんげえもんが聴けるに違いないと確信。2023年に最も聴いたサントラ盤はこれ。モーションキャプチャーによる演奏シーンのビジュアル表現に賛否は分かれたようだが、その絵の向こうで演奏される音の力に僕は圧倒された。

今年の10人
上原ひろみ「BLUE GIANT」
大友良英「色即ぜねれいしょん」
クインシー・ジョーンズ「ホット・ロック」
ジャスティン・ハーウィッツ「バビロン」
ジョゼ・ベルグマン「わんぱく戦争」
ジョン・カンダー、フレッド・エブ「キャバレー」
岩代太郎「首」
フランソワ・ド・ルーベ「冒険者たち」
ルイス・バカロフ「サマータイム・キラー」
ロビー・ロバートソン「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

■主題歌賞=心音(中島みゆき)「アリスとテレスのまぼろし工場」(2023年・日本)

ストーリーとシンクロする歌詞の叫びが心に焼き付く秀作。「心音(しんおん)」というタイトルが主人公たちの胸の高鳴りだけでなく、息遣いまで思い出させてくれる。

今年の10人
Cabaret (Liza Minnelli)「キャバレー」
DIGNITY (Ado)「沈黙の艦隊」
In This Country (Robin Zander)「オーバー・ザ・トップ」
Le Refuge (Louis-Ronan Choisy)「ムースの隠遁」
SOULSOUP(Official髭男dism)「劇場版SPYxFAMILY CODE:White」
Still Standing (Robbie Robertson)「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」
Winner Takes It All (Sammy Hager with Edward Van Halen)「オーバー・ザ・トップ」
アンサンブル(TRUE)「特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト」
心音(中島みゆき)「アリスとテレスのまぼろし工場」
灰色の街(松田優作)「ヨコハマBJブルース」






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