Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン

2025-01-12 | 映画(は行)


◼️「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン/Fly Me To The Moon」(2024年・アメリカ)

監督=グレッグ・バーランティ
主演=スカーレット・ヨハンソン チャニング・テイタム ウディ・ハレルソン

米ソの宇宙開発競争が激化する時代、アメリカのアポロ計画は国民の関心を失いかけていた。そこに宣伝プロデューサーとして手腕を発揮していたケリーが雇われ、議員への根回しとイメージ戦略が展開される。NASAで打ち上げの指揮を執る生真面目なコールと対立しながらも、予算は確保でき、打ち上げの準備が進められた。ところがケリーに別なミッションが依頼される。それは月面着陸の失敗に備えて偽の映像を準備すること。

アポロ月面着陸の映像はフェイクであるとの噂は昔からあって、それを検証する様子をテレビで見たことがある。月面に立てられた旗の動きがおかしいとかなんとか。本作のストーリーはそんな噂から着想を得たんだろう。

チャニング・テイタム演ずるコールはとにかく生真面目で嘘が嫌い。一方で売り込みの為なら嘘を手段とすることも平気なケリー。男女として惹かれ合いながらも、その対照的な仕事ぶりからたびたび衝突する。そんな2人が、ソビエトとの競争に勝つために嘘で塗り固めようとする政府関係者の方針に共に立ち向かう様子にワクワクする。

偉業を成し遂げる裏側の人間模様、性格もやり口も違う2人のタッグ。ハリウッドらしい予定調和と言われればそれまで。だが、数々の秀作良作を生んできた宇宙開発という題材の安定的な面白さ、「キューブリックはクソ」「ビートルズより有名にしてあげる」といった60年代末期の空気感は、アメリカ映画でないとできない楽しさ。そして、もはやロマコメに見える男女の距離感。往年のハリウッド映画のような王道感がある。やっぱり映画館で観ておきたかったな。

アポロ11号関連の映画もあれこれある。アームストロング船長が主役の「ファースト・マン」の生真面目さもいいけれど、月からの中継を支えた田舎の天文台を描いたオーストラリア映画「月のひつじ」はお気に入り。



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オリエント急行殺人事件 死の片道切符

2025-01-10 | 映画(あ行)


◼️「オリエント急行殺人事件 死の片道切符/Murder On The Orient Express」(2001年・アメリカ)

監督=カール・シェンケル
主演=アルフレッド・モリナ レスリー・キャロン メレディス・バクスター アミラ・カサール

アガサ・クリスティ「オリエント急行の殺人」の映像化で、本作はアメリカのテレビ向けに制作されたドラマ版。申し訳ないけれど、シドニー・ルメット監督版(名作!)やデビッド・スーシェのテレビシリーズ、ケネス・ブラナー版には遠く及ばない。本作を観てクリスティ作品を観た気になってもらっては困る。いい作品は他にいっぱいあるぞ。

クリスティの原作を現代劇に翻案した試み。発想はわからんでもないが、ちょっと無理がある。何よりも大きいのは、原作の当時とは違ってオリエント急行は東西を結ぶ国際寝台列車ではなく、観光列車の性格が強くなっていることだ。本作でポアロが乗客に聞き込みする度に、列車に乗った理由をいちいち尋ねるから話がまどろっこしい。空路ならパリまであっという間になのに、わざわざ列車に揺られて遠回りすることはないのだから。

アルフレッド・モリナが演ずるポアロも、従来のファンには物足りない要素があれこれ。本作のポアロは、僕らがポアロに抱いている小綺麗な紳士のキャラクターとは違う大柄なヒゲ男だ。おまけに現代劇なので、ノートパソコンでアームストロング事件を検索したり、乗客も携帯電話使ってるし、かつてPDAと呼ばれた情報端末(90年代のザウルスとか・懐)まで登場する。いやいや、ポアロはこんなことしないよ。おまけに最初と最後に美しい恋人(?)も登場。彼女の職業にびっくり!🫢。それ付き合う相手間違ってない?

残念なのは、列車で移動しているムードが感じられないこと。車窓が映されるシーンも少ないし、ガタゴト揺られているような演出もあまり出てこない。最後はカーテン閉め切ったラウンジのような車両で謎解き。なんだかなぁー。

ともかく、アルフレッド・モリナのポアロが見てみたかったのでした。往年のスター、レスリー・キャロンが老夫人役で出演。




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ボルテスVレガシー

2025-01-08 | 映画(は行)


◼️「ボルテスVレガシー/Voltes V: Legacy」(2024年・フィリピン)

監督=マーク A. レイエス V
主演=ミゲル・タンフェリックス ラドソン・フローレス カーラ・アベラーナ

オリジナルの日本アニメ「超電磁マシーン ボルテスV」(1977)は見たことがない。民放2局(当時)の県に住んでいたから、きっと放送がなかったんだと思う。そのアニメがフィリピンで大人気。その作品への愛で実写映画化してしまったのが本作。日本アニメが海外で愛されているのは嬉しい。

とは言え、僕はオリジナルを知らないから、地球の危機に5人の若者が立ち上がる物語に触れるのはこれが初めて。オリジナルは動画サイトでチラ見したが、見せ場の合体シーンだけでなくそれぞれの場面がオリジナルに準拠しているようで、並々ならぬ愛を感じた。ドクロの宇宙船の再現度、角の生えた異星人を大真面目に演ずる役者さん。スーパー戦隊をチープにしたような映画と思っていたけど、フィリピンでの国民的な人気を裏切れないという心意気を感じる。いいねぇ。ガミラスを妙なCGにしたヤマト実写版より遥かにいい心意気だw

世界規模で危機が起こっているのに狭い孤島だけで話が進行してない?
コクピット内でいちいち振り返っているがそっち向いて見えるのか?
ドクロ宇宙船の攻撃は手ぬるいでしょ
いろいろツッコミどころはあるけれど、楽しめました。

劇場公開後、その年のうちにBSで放送されたことにもびっくり😳



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マドモアゼル a Go Go

2025-01-06 | 映画(ま行)


◼️「マドモアゼル a Go Go(女の望遠鏡)/ Trop Jolies Pour Etre Honnetes」(1973年・イタリア=フランス)

監督=リシャール・バルデュッシ
主演=ベルナデット・ラフォン ジェーン・バーキン エリザベート・ヴィエネール セルジュ・ゲンスブール

本作は1974年に「女の望遠鏡」のタイトルで公開された。その後、渋谷系からフレンチカルチャーが人気になった90年代に「マドモアゼル a Go Go」と改題して再上映された作品。ジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンスブール共演作ではあるが、一応の主役はベルナデット・ラフォン。犯罪者から金を奪おうと計画する4人の女性たち。その一人がジェーンで、セルジュは彼女らがターゲットにした犯罪者の相棒を演じている。

ニースの海辺に建つマンションでルームシェアして暮らしている4人娘。船員の彼氏からプレゼントされた望遠鏡を覗いていたら、向かいのアパートの一室で大金を扱う男が。世間で騒がれている泥棒だと信じた彼女たちは、その金を横取りしようと企む。果たして計画は成功するのか!?

「黄金の七人」や「ミニミニ大作戦」のような華麗な犯罪映画を期待してはいけない。無駄としか思えない訓練風景と、準備不足で隙だらけの計画。ストーリーの展開も結末も、なんとも都合のいい話ではあるのだが、船員の彼氏が事態を引っ掻き回す様子にはドキドキさせられる。

彼女たちのファッションと行き当たりばったりの活躍をニコニコして見守られる方ならば、きっとお気に召す作品。堅いこと言わないで年末気軽に観るにはちょうどよかったかも♪

音楽担当はセルジュ。電子オルガンで遊んでるような軽妙なメロディがクセになる。ジェーンはメガネっ娘の女医役で、4人の中ではドジっ子担当。ホームセンターで電動ドリルの使い道を尋ねられて、「金庫を開ける」と答えちゃうのがおかしいw



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おとぼけオーギュスタン

2025-01-04 | 映画(あ行)


◼️「おとぼけオーギュスタン/Augustin」(1995年・フランス)

監督=アンヌ・フォンティーヌ
主演=ジャン・クレティアン・ジベルタンブルン ステファニー・チャン ギ・カザポンヌ 

ココ・アヴァン・シャネル」のアンヌ・フォンティーヌ監督初期の作品で、60分の中編。パートタイムで保険会社に勤務しながら、俳優業をしているオーギュスタン。彼の日常とメジャー作品のオーディションに挑む様子が描かれる。

タイトルとジャケットのデザインから、ムッシュユロ(「ぼくの伯父さん」)みたいな小洒落たコメディを期待していた。だがこれがなかなか曲者の主人公で、ケラケラ笑えるような作品ではなかった。

俳優の仕事もないのに、三枚目役は嫌、感情表現は苦手とか変な注文ばかりつける。オーディションはホテルボーイ役だからと高級ホテルで一日見習いを頼み込むが、部屋の清掃をする中国人女性に「また会いたい」とか言い寄る始末。職場では同僚の仕事ぶりを上司に悪く言って点数を稼ぐけど、女性社員には終始からかわれる。

彼は生真面目すぎる人なんだろうけど、ちょっと扱いにくいタイプ。タイトルにある"とぼけた"人でもない。本人は大真面目に物事に向き合っている。周囲と噛み合わない様子で笑わせるのが狙いだろうが、今ドキの若い世代に"イタい"と言われそうなオーギュスタンを笑いのネタにするのは、観る人によっては不快に映る気もする。

オーディション場面で相手をしたティエリー・レルミット。何を言われても大らかに対応する姿がいいね。


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tak's Movie Awards 2024

2025-01-02 | tak's Movie Awards

 


2024年の映画生活は昨年に引き続き多くの作品に触れることができた。新作はもちろん、宅配レンタルで名作と称される作品や配信にあがっていない作品を観るのが楽しくて、心の向くまま無節操に観るものを選んできた。そのため例年以上に新旧混じったベスト作品の選出になっている。Filmarksでの率直な感想と口コミには今年もお世話になりました。
いち映画ファンとしての年中行事、2024年の年間ベストは、この1年間にわたくしtakが観たオールタイムの映画からセレクト。公開年にタイムリーになってませんので、ご了承くださいませ。

tak's Movie Awards2024

■作品賞=「PERFECT DAYS」(2023年・日本)

孤独を楽しんでいるようで、人との触れ合いが恋しくなる。詩が韻を踏んでいるような映像の反復が美しい。

今年の10本
PERFECT DAYS(2023)
アイミタガイ(2024)
哀れなるものたち(2023)
関心領域(2023)
親密すぎるうちあけ話(2004)
ちひろさん(2023)
デューン 砂の惑星PART2(2024)
パリタクシー(2022)
フィツカラルド(1982)
落下の解剖学(2023)

■アニメーション作品賞=「ルックバック」(2024年・日本)
アニメだからできること、アニメだから伝わること。

■監督賞=ヨルゴス・ランティモス 「哀れなるものたち」(2023年・イギリス)
演技も演出も美術も音楽も、あらゆる要素がとにかく大胆。こんな映画はなかなかない。
今年の10人
ヴィム・ヴェンダース「PERFECT DAYS」
ウィリアム・ワイラー「友情ある説得」
上田慎一郎「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」
ヴェルナー・ヘルツォーク「フィツカラルド」
クリストファー・ノーラン「オッペンハイマー」
ジョナサン・グレイザー「関心領域」
ダルトン・トランボ「ジョニーは戦場へ行った」
パトリス・ルコント「親密すぎるうちあけ話」
ヨルゴス・ランティモス「哀れなるものたち」
リドリー・スコット「グラディエーターⅡ英雄を呼ぶ声」

■主演男優賞=ダニー・ブーン 「パリタクシー」(2022年・フランス)
人間不信に陥りそうな現実の中、スクリーンからあふれ出す人情という温かさ。人間観察に優れたコメディアン兼役者は、そこにリアルを吹き込んでくれる。
今年の10人
アラン・ドロン「サムライ」
キット・ハリントン「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」
クラウス・キンスキー「フィツカラルド」
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ「DOGMAN ドッグマン」
ジェラール・ドパルデュー「メグレと若い女の死」
ダニー・ブーン「パリタクシー」
ファブリス・ルキーニ「親密すぎる打ちあけ話」
フレデリック・マーチ「セールスマンの死」
ポール・ニューマン「傷だらけの栄光」
役所広司「PERFECT DAYS」

■主演女優賞=有村架純「ちひろさん」(2023年・日本)
人とのつながりを避けているようで、自然に人と人をつないでくれる。孤独との向き合い方、人との向き合い方。架純たん、いい役者になりました🥲
今年の10人
有村架純「ちひろさん」
アンナ・カリーナ「はなればなれに」
エマ・ストーン「哀れなるものたち」
カトリーヌ・フロ「アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵」
クリステン・スチュワート「ランナウェイズ」
ザンドラ・ヒュラー「落下の解剖学」
サンドリーヌ・ボネール「親密すぎるうちあけ話」
ダイアン・キートン「赤ちゃんはトップレディがお好き」
フェイ・ダナウェイ「ネットワーク」
ルアンヌ・エメラ「エール!」

■助演男優賞=デンゼル・ワシントン「グラディエーターⅡ英雄を呼ぶ声」(2024年・イギリス=アメリカ)
善人イメージの強いデンゼル・ワシントンだが、こういうしたたかな悪役も巧い。単なる悪人でなく、そこに至るまでの人生を感じさせる重みある演技が素晴らしい。
今年の10人
アンソニー・パーキンス「友情ある説得」
ウィレム・デフォー「哀れなるものたち」
大沢たかお「キングダム 大将軍の帰還」
クリストファー・ウォーケン「デューン 砂の惑星PART2」
ジェーソン・ロバーツ「ジュリア」
ジェームズ・ガンドルフィーニ「ザ・メキシカン」
デンゼル・ワシントン「グラディエーターⅡ英雄を呼ぶ声」
ピーター・フィンチ「ネットワーク」
ポール・ジアマッティ「デュエット」
ロバート・ダウニーJr.「オッペンハイマー」

■助演女優賞=グウィネス・パルトロウ「デュエット」(2000年・アメリカ)
カラオケがつなぐ人間模様。ずっと観たかった本作を宅配レンタルで初鑑賞。離れ離れになっていた父親との再会と和解。父娘のデュエット場面は泣くかと思ったぞ🥹
今年の10人
アニー・ジラルド「殺人鬼に罠をかけろ」
アンヌ・ブロシェ「親密すぎるうちあけ話」
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ「華麗なるアリバイ」
エレナ・アナヤ「サン・セバスチャンへ、ようこそ」
グウィネス・パルトロウ「デュエット」
草笛光子「アイミタガイ」
スーザン・サランドン「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」
ドロシー・マクガイア「友情ある説得」
バーバラ・ベル・ゲデス「めまい」
ピア・アンジェリ「傷だらけの栄光」

■音楽賞=トーキングヘッズ「ストップ・メイキング・センス 4Kレストア」(1984年・アメリカ)
この頃のトーキングヘッズをよく知らなかったけど、これは映画館で観るべき作品。ステージをひたすらカメラは追う。観客の盛り上がる様子は最後でチラ見せ。僕らは特等席にいるのだ。
今年の10人
イェルスキン・フェンドリックス「哀れなるものたち」
キース・モリソン「スパルタンX」
クロード・ボラン「ボルサリーノ」
ソニー・ロリンズ「アルフィー」
トーキングヘッズ「ストップ・メイキング・センス」
バート・バカラック「007/カジノ・ロワイヤル」
パット・メセニー「コードネームはファルコン」
フランシス・レイ、ミシェル・ルグラン「愛と哀しみのボレロ」
ミカ・レヴィ「関心領域」
ミシェル・ルグラン「はなればなれに」

■主題歌賞=夜明けのマイウェイ(黒木華)「アイミタガイ」(2024年・日本)

劇中の台詞「今はそういう話を信じたい」が強烈に胸に響いた。70年代末期のテレビドラマ楽曲だが、こんなに映画にマッチするなんて🥹。映画館の暗闇で一緒に歌っていた。
今年の10人
Angel Queen(Dara Sedaka)「劇場版1000年女王」
blast!(TRUE)「劇場版響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」
Cold Song (Klaus Nomi)「愛の記念に」
Everchanging Time(Siedah Garrett)「赤ちゃんはトップレディがお好き」
MacArther Park(Donna Summer)「ビートルジュースビートルジュース」
The Power Of Love (Frankie Goes To Hollywood)「異人たち」
This Is Not America(David Bowie)「コードネームはファルコン」
月並みに輝け(結束バンド)「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:」
夜明けのマイウェイ(黒木華)「アイミタガイ」
ロタティオン(LOTUS-2)(平沢進)「千年女優」







今年も素敵な映画と出会えますように。


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アガサ・クリスティ 〜謎の失踪 失われた記憶〜

2025-01-01 | 映画(あ行)



◼️「アガサ・クリスティ 〜謎の失踪 失われた記憶〜/Agatha Christie : A Life In Pictures」(2004年・イギリス)

監督=リチャード・カーソン・スミス
主演=オリヴィア・ウィリアムズ アンナ・マッセイ レイモンド・クルサード スティーブン・ボクサー

アガサ・クリスティーが11日間失踪した1926年の事件は謎に包まれている。それはミステリーファンやクリエイターの想像をかき立て、数々のドラマや映画が製作されてきた。

本作は、発見時に記憶を失っていたアガサに向き合う精神科医が、催眠療法で失踪の謎に迫ろうとするお話で、英国BBCテレビの製作によるドラマ。失踪期間がこうだったら面白いという発想で製作されたドラマ「アガサと殺人の真相」(2018)のライトなミステリー仕立てとは違って、アガサ自身の行動と心の闇に迫るドラマになっている。

本編は大きく2つのストーリーが並走する。アガサの失踪であたふたする周囲の人々、精神科医とのやり取りを描く1926年パートと、舞台「ねずみとり」10周年を祝う1962年のパーティ会場でアガサが受けるインタビュー。若き日のアガサはオリヴィア・ウィリアムズ(「17歳の肖像」の先生役が良かった)、老年のアガサはアンナ・マッセイ(ヒッチコック「フレンジー」で殺される被害者の一人)が演じている。

史実としては、アガサが大戦中看護に従事したこと、薬に詳しくなるエピソード、離婚を経て2番目の夫マックスと出会うまでが紹介される。幼い頃から繰り返しみる夢に出てくる銃を持ったうす汚い男のイメージが、ことあるごとに彼女を精神的に苦しめる描写は、ホラー映画のテイスト。全体的にはどよーんと暗い雰囲気で娯楽作ではない。だが2000年代に入ってもこうした作品が製作されるのは、クリスティに対する人気と興味が衰えを知らない証でもある。




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