無農薬・自然菜園(自然農法・自然農)で、持続できる自給自足Life。~自然な暮らしの豊かさの分かち合い~

信州の大地で自然農と自然農法で育てる自給農園で、日々の営みや生命を通して感じることや想うことを発信するブログ。

中干しとは? 自給稲作における中干し前後の水やり

2016-07-11 19:25:13 | 日々の自然菜園
本日、

久々にゆっくり自分の田畑を眺めました。
というのは、先週は祖母が他界し、週末は研修のため出張しており、久々の自宅だったからです。

先週から、地域の田んぼは本格的な中干しの時期に入り、生徒さんからも中干し後の水管理に関してご質問をいただくことが多くなりましたので、私見ですが、以下を参考にしてみてください。


通常、この梅雨の時期に、全国的に稲作では「中干し」と呼ばれる灌水中止、強制排水、田んぼを乾かすのが一般的です。

中干しの目的と効果は、

水を切ることにより生育を抑え、茎数過多を防ぎます。
※特に化学肥料栽培の場合、過剰分けつ、過繁茂しすぎる茎を中干しで調整します。
無化学肥料の田んぼでは、過剰分けつは行われないので、むやみな中干しは、有効な分けつを強制的に止めてしまいがちです。

土の中に酸素を供給し、還元状態で生成される有害成分(二価鉄、硫化水素、有機酸)を除去して、根を活性化させます。
無農薬の田んぼでは、ガス抜きや有機物の分解を促進させ、根が地中深く張れるようになります。

機械作業に適した土の固さを確保します。この時期に一度しっかり干すことで、収穫直前の落水でも容易に田が硬くなり、機械作業がスムーズに行えます。
※特に、水はけが悪い田んぼや、大型機械のコンバインなどで収穫する場合は、中干しをしっかりする傾向があります。
そのため、地域によっては、田んぼの水が水路の元で止めてしまう場合もあります。


具体的には、田んぼによっては、排水が悪く溝を切って強制的に排水を2週間ほど行い田んぼがひび割れるほど乾かします。


ヒビが入るほどに田んぼを乾かした中干し後は、水をただ入れて溜めてはいけません。
というのは、中干しで乾燥させた根を再びすぐに深水に戻すと根ぐされしやすく、下葉が枯れやすくなるからです。
けれども、穂が出る最も稲が水分を欲する時期には水をたっぷり張っておきたいという矛盾が生じます。

そこで、中干し後は水を徐々に入れては自然落水させながら徐々に根を水に慣らし、穂が出る時期は溜めておいて、また稲刈りに合わせて落水するといった流れです。
専門用語を使えば、「中干し後から落水前までは間断潅水を基本とするが,幼穂形成期~出穂までの期間だけ深水管理とする。」ということです。


つまり、中干しの効果はとてもあるのですが、同時にその前後の水管理などがとても難しくなるので、両刃の剣の技術ともいえます。

というのは、中干し前後で稲の根が変わってしまうからです。

中干し前の田んぼは水がたまっているので、水の中でも生きていけるような特別な還元状態で生成される有害成分(二価鉄、硫化水素、有機酸)をまとった「水根」状態といえます。

ところが、田んぼを一度乾燥させてしまうとその状態がなくなり、適度に酸素があり、適度に水がある「畑根」状態になります。
この「畑根」では、水の中では酸欠状態になり、根ぐされを起してしまいます。

そこで、その為、水を入れたり、抜いたりし、活力低下や枯れ対策として間断潅水の必要があります。

「間断潅水(かんだんかんすい)」とは、大体、3~4日掛けて水を入れ、2~3日掛けて水を抜く水やりをいいます。

特に、中干し終了後の潅水は、走り水を1~2回繰り返してから徐々に潅水しましょう。
急に潅水すると、根傷みして下葉が枯れ上がり易いので気を付けて下さい。

また、ヒビが入るほど乾燥させた場合、ヒビと同時に、根も寸断されていますし、水も溜まりにくいダダ漏れの状態になっているので要注意です。

結論からいうと、
化学肥料栽培の場合、分けつが止まらず、過剰繁茂になり、穂が出るための栄養を無駄に茎葉づくりに使ってしまい、風通しも光も通りにくく、充実した実をつけられず、しかも病気が出やすい環境になってしまいます。
そこで、強い中干しで、水を絶ち、根を絶ち、強制的に無効分けつを止めて、機械が入りやすい田んぼにした上で、水を張り直し、寸断した根でも吸える化学肥料で穂に必要な養分を追肥します。
化学肥料栽培ならでは完全生育コントロール栽培になります。


そのため、化学肥料栽培においてもいつどれくらい中干しするのか、その後の追肥、水管理次第で上手下手が出てしまうのでかなり難しい見極めが必要です。

そこで、無化学肥料栽培の稲作で同様な強い中干しを行うと、②のメリットよりも、
生長中の有効な分けつを止め、根を痛め、その後の水管理を難しくし、穂の生育を著しく悪化させ、収量を落としたうえで、水田の草を復活させてしまいかねないデメリットを強調させてしまいがちです


そのため、無農薬・無化学肥料栽培では、最高分けつ期に合わせた分けつ促進の浅水管理のち、軽い中干し(足跡に水たまりができる程度)を1週間前後行い、②の効果を最大限に生かし、
その後、出穂後30日間は間断灌水で水やりを行い、根が稲刈りまで枯れないように地力を最大健に使えるように水管理を行います。


もちろん、出穂前後の最も水が必要な時期には、水を切れないように浅水にしたり、最高温度が日中35℃、夜間25℃以上にならないように、水のかけ流しなど工夫も必要です。






我が家の田んぼは、この中干しの時期、逆に深水に戻っております。
梅雨の間なので、水には困りません。

無農薬栽培では適期に適度に軽い中干しをし、その前後から間断灌水するのがセオリーですが、
適期の適度の中干しが難しいため、中干しをしないで水を溜めたままでいられる方法を研究しております。



梅雨の雨の多い時期なので、下手に中干しを行い、中途半端にならないように、最高分けつ期までは超浅水で、しっかり土を表面トロトロで、下はぼそぼそで固めになるようにしておきますが、
中干しをしていないので、水を溜めたままでも根は「水根」のままなので、深水にできます。


実は、「水根」のままで深水にすると、

①分けつが穏やかになる
②茎が太くなり、穂が長くなり、粒が増える
③冷夏・猛暑の影響を受けにくくなる
④出穂、開花後粒張りを良くし、高品質化のための水分補給が容易


といったメリットがあります。
デメリットは、
稲の倒伏
→これは、深水に戻す前の超浅水(超軽い中干し)で改善中

稲刈りの際にぬかるみやすい
→これは、最後の最後まで稲の根と葉が元気なため、稲刈り1週間前に落水し始めると、稲が残った水を最後まで吸ってくれるので、晴天が続けばバインダー程度の軽量機械では問題ない

でほぼ解決できるので、デメリットを最小限にし、メリットを最大限に生かせるともいえます。

なぜ、中干しをほぼしないで、深水に戻すかというと、
①一度「畑根」に切り替えるには、梅雨の時期なので、なかなか思うように畑根に切り替えられない難しい時期ということと、

②分けつが途中で止まってしまったり、中干しで根が切れたり、穂が出る大切な時期に水が張れなかったり、中干し後の水管理が難しくなったり

デメリットの方が目立ちやすいという理由があるからです。

簡単にいえば、一度も「畑根」にしていないので、水管理が難しくなく、最後まで根が傷むことなく、稲刈りまで葉の枚数が維持できやすいからです。

自給用の稲作は、難しい技術の多様よりも、シンプルで簡単、しかも失敗が少ない方がいいと思います。


ちなみに、現在深水の田んぼは、浮き草で覆われていたり、






網状に発達する藻類の一種アミミドロ類が、田んぼを覆っており、草は生えず、水田内の水温もあまり高くなりすぎていないようです。

生えている草は、相変わらずほとんど見当たりません。




田んぼの畦周辺では、水が大好きな畦豆(丹波系黒豆)やサトイモ、ショウガ、セロリなど順調に育っております。


苗代跡地や不耕起区は、現在一度も草取りに入っておりませんが、草は生えていないようです。
畦から入る「キシュウスズメノヒエ」取りだけ、今週どこかで行おうと思います。

まだまだわからないことが多い自給用の自然稲作ですが、軽い中干しはとても効果的な高等テクニックなので、その後の水管理を間断潅水をとりいれてみたり、
もともと畑根にしない深水田んぼのままで行ったり、風土に合わせて美味しいお米が育つように役立っていただければと思います。



自然菜園の7月の見学会のお知らせ


2016年内容充実で、
『無農薬・自然菜園入門講座』が第一水曜日長野市城山公民館で18:30~21:30までスタートしています。
城山公民館での「これならできる!自然菜園入門講座」講座が開催です。毎月の野菜と土づくりのテーマで質問時間もたっぷりあるので是非お越しください。

コメント (7)
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