稽古開始時間6時ちょうど、部屋の扉を開けた。おおーっ、全員集合、さらに4期生のOさんまで加わり、台本を読んでいる。無駄話一つない。張り詰めた空気、余計なことしゃべらんでいいから、早く台本読み、始めろ、無言の圧力。挨拶もそこそこに本読み開始。
ト書きを読みながら、舞台の様子など説明、さて、配役に従って、読み進める。最初の驚きは、あれっ、この人の声ってこんなんだった?違和感強烈!台本書きながら、僕の頭の中で響いていた声とあまりに違うんでびっくり!普段の会話と本を読むときって気構えが違うから声のトーンもまるで変ってしまうってことだ。でも、ちょっと不安。読み方、話し方も、まるで別人。当て書きのつもりだったが、勘違いだったか?全体に声が低いし、読むテンポも、よく言えばゆったり、本音で言えばもっさり、違うなぁ、それ、全然違うから。なんとか役とセリフの調子を掴みかけているのは、事務局で5回目の出演となるGさんだけ。もっと高い声で、もっと早く、っと差し出口を挟みたくなるが、ぐっと堪えて、うん、まっ最初の読み合わせなんだから、ともかく読み通そう。
今回の、いや、今回も、メンバーの持ち味、特技をできるだけ生かして台本を書いた。オープニングはよさこいだし、途中、白浪五人男まがいの出し物も用意した。コーラスやってる人には歌ってもらっているし、生前葬のご当人には得意の社交ダンスでエンディングを飾ってもらうことにしてある。だから、そのシーンに出会えば、大喜びとはいかぬまでも、ほくそ笑みくらいは漏れるかと思いきや、ただこたすら緊張の面持ちだ。
これ、これは、もしかして気に入ってもらえないの?つまらないという無言の意思表示か?読み終えた後も、いいものに出会えたという満足感はさっぱり広がらない。聞いているこちらもまるて゛つまらない。笑いのセリフが笑えない。グッとくる口説きがさらりと流れる。やれやれやれ。
いつものことだ。菜の花座だってそうなんだ。まして台本なんてもんを初めて読んだシニアたちだもの、役やセリフのニュアンスが掴めなくて当然。本の良しあしを判断するなんて滅相もない、それ以前にこんな役できるのか?こんな大量のセリフ覚えられるのか?心配、不安が先に立って固まってしまっているのだろう。まっ、これから、これからですよ、稽古に稽古を重ねて行けばそれらしくなって来ますから。心配ないですよ、絶対、面白い舞台になりますからね。僕の作る芝居はいつだって、終わってみれば好評、もう一度再演も、って話になるんですから、って落ち込むメンバーたちを慰めた。セリフ覚えについては、Gさんが、暗記用CDを作るからご安心を!とフォロー、それでも、ダンス、よさこい、五人男、合唱、さらには衣装、装置、・・・と課題は山積み、最後まで、こりゃえらいことになったわ!っていう不安から逃れられぬままの散会となった。
これから本番までの3か月、人生最大の奇跡が待ち受けているからね!