ここ数年、音楽とは別居状態が続いてた。正しくは3.11から後だ。なんか、音楽が白々しく感じてしまって、ほとんど聞く気にならなかった。いつだって肩寄せ合ってるのが当たり前だっのに、急に別の顔を覗いてしまった恋人みたいに。うんざりして、やりきれなくて、お互いに愛想尽かし、そのよそよそしさがいつの間にか、当然になり自然になり、身近にいなくたって一向差し支えない、はるか昔の元カノみたいな存在になってしまっていた。
このところ、そんなよそよそしさが、時折のぞく梅雨の晴れ間のように晴れる瞬間が訪れるようになっている。まっ、以前のような一緒にいなければ夜も日も明けぬ熱愛状態とは程遠いんだけど。時折会って懐かしくおしゃべりする程度には撚りが戻りつつある。菜の花座の『女たちの満州』でも、そのお堅い内容にもかかわらず、音楽はふんだんに使ったし、菜の花シニアの『クロスロード』なんてほとんど音楽劇だった。やっぱり音楽って、いいよなぁ、ってとこだ。
となって、もう少し身近にいて欲しいと思うようになった。昔のように再生装置の前にどっしり腰を落ち着かせて面と向かい合うんじゃなくて、肩の力抜いて程よく愛し合う、そんな付き合い方があってもいいよな。大人の恋、いや熟年のお付き合いかな。
今、僕の暮らしって言えば、農作業と走ること、それに日々の家事を除けば、ほぼパソコンの前に座り続ける生活を送っている。台本を書き、ブログを続け、ニュースや話題をチェックする。ここに音楽が寄れ沿ってくれるとしたら、やはりPC作業の時間帯だろう。Itunesに保存してあるお気に入りもあるし、インターネットラジオも悪くない。ただ、この4万円のHP製パソコンのスピーカーじゃとてもとても!ご勘弁。で、ヘッドホーンを買ってみた。これはまったくの大誤算、大失敗だった。安物で音も大したことなかったせいもあるが、何より、外界の音が聞こえない。当たり前だ、そのためのヘッドホーンなんだから。これが気になって仕方がない。誰か呼んだじゃないか、電話が鳴ってるんじゃないか、果ては、後ろに怪しい気配まで感じるまでになって、とても耐えられない!と諦めた。
でもなぁ、なんかいい方法はないもんかい?作業しながらBGMとして流したり、仕事の合間に耳を傾けたりできる気楽な奴が。書斎のデスクにパソコン置いてるなら、性能の良いPC用スピーカーを据え置きするって手もあるが、なんせ無精者、食堂の食卓にラップトップ置いてすぐ右手にテレビ、その向かい側には台所、反対側はそのまま玄関て、まるで学生の1kマンションみたいな暮らし方。パソコンともども簡単に片づけられないと、食事も覚束ない。これじゃ無理か。
ふと思いついたのがブルートゥーススピーカー。主にスマホ向けに売られてる奴だ。あれどうだ?さっそく調べてみると数千円でなんかそれなりのものが出回ってるようじゃないか。1週間悩み3日間機種選定に頭を使い、それほどのものかよ?結局手に入れたのが、アンカーって会社のスピーカー。
小さ過ぎず大きすぎず、見た目のわりにズシリと重い。これなら低温も厚みがあるか?つややかな黒のボディにスイッチ類はたったの四つ、シンプル!だけど、上品な仕上げだ。気に入った。これで音と使い勝手か良ければ、年来の願いも叶うはず。
そうだ。だったら迷っていたアマゾンプライムも登録してしまおう。プライムミュージック聞き放題、これ、PC作業のお供には最高じゃないか。ネットラジオあり、新着アルバムあり、ピーター・バラカンのお勧めCDもある。商品送料無料と引き換えにしたアマゾンのやり方には気に食わないところもあったけど、PCにスピーカーつなぎっ放しにして、音楽楽しめるんなら、年間3900円も許そう。
昨夜はアンカーとプライムミュージックの使い初め。夜10からはネットラジオのジャズを静かに流しながら台本書き、作業を終了してからはお勧めのアルバムを聞きまくり、これだと、あまり知らないグループや歌手も聞けて、思いかげない楽しみ、これは続けられそう。気に入った曲は自分のプレイリストにしまっておけば、次回はそこから引っ張ってこれる。
そうそう、音の評価だよ。まぁ、小さいからね、ちょっと無理して声張り上げてるかなぁって感じはないわけじゃない。音量を絞ると高音、低温が貧弱になるのは、この値段じゃ仕方ない。ちょっと驚くのは、この小さな体でかなりの音量出せるってことだ。ボリュームをフルにしたらあまりにも大きくて慌てて窓を閉めて回ったほどだった。しかも、中程度以上の音量だと、この値段でよくぞここまでというほどの音の良さだ。特に中音域がしっかりしている。これなら満足。これなら使える。
次々にアルバムを飛び移り聞き倒すして、最後はビートルズTOP50を全曲チェックしてしまった。気づけば1時を回っていて、横に置いたウィスキーのボトルも半分近くに減っていた。のめり込まぬよう、誑し込まれぬよう、うーん、これは警戒が必要だぜぇ。