萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

secret talk9 愛逢月act.3―dead of night

2012-10-01 05:46:51 | dead of night 陽はまた昇る
※念のためR18(露骨な表現は有りません)

滴らす、



secret talk9 愛逢月act.3―dead of night

湯をはじく肌に、水滴の玉がきらめく。
筋肉で覆っても隠しきれない華奢な骨格、その肩に水の光が彩らす。
素直に背を向けた首筋の、しなやかなラインが初々しくて、そっと英二は唇を寄せた。

「…あ、」
「きれいだ、周太…」

囁きながら背中から抱きしめて、シャワーの湯がふりそそぐ。
ふれる胸になめらかな背中ごし鼓動が伝わる、すこし速い音に小柄な体の無垢が慕わしい。
ほら、こんなにも初心な心と体、それを手離して独り行かせることが不安になってしまうのに?

「ね、周太?風呂場でも気を付けないと、こんなふうに抱きつかれるかもしれないよ?…気を付けてよ、」
「ん、…はい」

素直に頷いてくれながら恥ずかしげにタオルを引寄せている。
こんな恥ずかしがりだと、逆にそそられるかもしれない?そんな危険にため息吐きたくなろ。
今まで新宿署では無事だった、けれど異動後はどうなるか心配な自分がいる。

―七機は個室だけど、風呂は共同なんだよな

待機寮の設備を考えながら、英二は目の前の背中を流し始めた。
待機寮、いわゆ官舎の単身者用は以前は大部屋だったが、最近は個室に作りかえられている。
新築ならワンルームマンションのタイプもあるらしい、けれど第七機動隊は再来年くらいに新庁舎完成予定でいる。
きっと現行隊舎は青梅署寮と同じ、個室でも水回りは共同だろう。それでも大部屋よりはずっといい。

―大部屋だったら寝こみが心配だし…でも風呂だって心配だけど…雰囲気とかどうなんだろう、木下さんに訊いてみようかな

奥多摩交番の木下は昨冬まで第七機動隊の山岳救助レンジャーに所属していた。
木下に限らず警視庁の山岳救助隊員は、一度は七機の山岳救助レンジャーに所属した経験者が多い。
後藤副隊長はもちろん、御岳駐在所長の岩崎も経験者になる。けれど直近の雰囲気を知るなら木下が一番良い。

―でも、山岳と銃器じゃ雰囲気違うかもしれないか…でも、そっちも知っているかもしれない

こんな考え巡らせて、婚約者が住む場所のことを事細かに心配して、考え込んでしまう。
けれど手はきちんと動いて、眼前の洗練された背中をきれいに磨いてシャワーで流した。

「周太、背中は終わったよ?だからこっち向いて、」
「…あの…前はじぶんで洗ったから」

恥ずかしげな声がつぶやいて、洗い場から立ち上がろうとする。
その背中を抱きしめ捕まえて、頬よせると英二は囁いた。

「ダメだよ、周太?風呂も身体検査だって言ったよな」

言いながら体をこちらに向けさせて、遠慮なく洗い始めた。
向かい合う貌は薄紅そまって額まで赤く、瑞々しい洗い髪が艶めかしい。
恥ずかしげに腕で掌で体を隠そうとする、その腕を掴んでそっと開いた。

「ほら、周太?ここも洗わないと。言うこと聴いて?」
「…だめ、」

恥ずかしげな声が短く訴えて、素早くタオルで隠してしまう。
こんなの本当に逆効果なのに?

「隠していたいの?周太、」
「…ん…はい」

こっくり頷いてくれる頬に、洗い髪がおちかかる。
黒く艶めいて薄紅の肌にこぼれ、雫が頬から顎へと伝いおちていく。

―水も滴る美少年だ

心に呟いた声が、自制心を1/3ほど折り取った。
この程度ならまだバランスとれるかな?そう自分の心に笑って英二は、初心な婚約者に笑いかけた。

「じゃあ隠してて?そのまま洗ってあげるから、」
「ん、ありがとう…」

ほっとしたよう微笑んでくれる貌が、また可愛い。
こんな湯に火照った肌は扇情的、つい艶めかしさに惹かれてしまう。
惹かれ見つめるまま掌に石鹸を泡立てると、そっと恋人の胸元にふれた。

「…っ、」

ふれられ息呑んだ貌が、可愛い。
恥ずかしげに唇閉じて、心配そうに掌を見つめている。
そんな様子も可愛くて、俯き加減の長い睫に光る水滴がきれいだと息を止められる。
優しげな含羞に惹きこまれながら、それでも掌は泡をなめらかな肌へと奔らせた。

「気持ちいい、周太?」
「……わからないです」

質問に恥ずかしげな声が小さく訴える。
その声にまた欲求が誘われながら、胸元から腰へと掌をすべらせていく。
ゆっくり洗って、小柄な体が泡塗れになる。その伸びやかな脚を今度は洗い始めた。

「ほら、周太?脚開いて、内側も洗わないと困るだろ?」
「…はい、」

恥ずかしげな声が応えて、閉じていた膝をすこし開いてくれる。
その隙間へと体挿し入れると英二は、隠すタオルの上から泡に包みこんだ。

「…あっ、」

声が上がって体が逃げようとする、けれど片腕に抱きこんで動きを封じこむ。
そのままタオルごと泡でくるんで、やわらかに洗い始めた。

「ま、まってえいじ…や、」

零れだす声に肌は薄紅染められて、体の力が脱け出していく。
すこし小さな掌が英二の肩を押そうとする、それに英二は嫣然と笑いかけた。

「周太、危ないから俺に抱きついてよ?…甘えて、頼ってくれるんだろ?」
「…あっ、ん、やぁっ、」

小柄な体は身悶えて、なめらかな肌から泡がすべり落ちていく。
泡に濡れた肌は殊更に艶めいて扇情させられる、そんな素肌に魅せられるまま小柄な体を抱きあげた。
その体からタオルは落ちて露わになる、そっと見惚れながらタイルに降ろすと浴槽の縁に掴まらせた。

「周太、ここに手をついて、」
「あ、あの…」

途惑う声を聴きながら、シャワーの湯量を調整する。
ブルーの紋様も美しいタイルに湯が流れる、ゆるく昇らす湯気に黒目がちの瞳が潤む。
体を隠すようタイル張りの浴槽へ体を向ける、その肩越し見せる横顔は途惑いと羞恥が愛しくなる。
青い縁に掴まり座りこんだ腰を抱きあげ、膝をつかせると指すべらせて、そっと窄まりへと挿し入れた。

「あっ、…あぁ、」

切ない声があげられて、逸らされる背中が艶めかしい。
後ろから抱きかかえながら、ゆっくり挿し入れ触れる脹らみを撫でていく。
その指に合わせるよう唇から喘ぎが上げられた。

「や、っああ、え、いじ、っあ!」
「気持ちいいんだね、周太?…ほら、風呂でも注意しないと、こんなことされちゃうんだから…わかった?」
「は、い…っあ、ぁ…」

上がる声に指をまた挿し入れて、3つ入りこむ。
こんなふうに予めほぐさないと体を傷めてしまう、こうした支度が男同士のベッドは必要になる。
この手間を今の自分は嫌だと少しも思えない、何かしてあげられる事が嬉しくて見せてくれる貌がただ愛しい。
いま支度を施す体は薄紅の火照りまばゆい、こんなに恥ずかしがる初々しい肌が可愛くて見惚れてしまう。

「…周太、もっと気持ちよくなって?…ここ、ゆるめていて、」

囁きながら指で押し広げながら、そっとシャワーの湯を当てる。
指でほどいたままに湯は入り込む、その感覚になめらかな背は逸らされた。

「あ、あっ…ん、あ」

洩れだす声に、なめらかな太ももを湯が伝いおちていく。
この支度を周太は恥ずかしがって、見られないよう自分でしたがると知っている、それも道理だろうと思う。
けれど羞恥の姿も見ていたい、すこしでも何か多くしてあげたくて、夜の支度までしてしまう自分がいる。
こんなこと誰にも思えなかった、この少年のまま無垢な恋人に出逢うまでは。

「周太、このまま暫く我慢して?…そのあいだしてあげるから」

笑いかけ囁いて、湯を入れた後に指を挿し入れる。
浴槽に凭れこんだ少年の肢体をシャワーで流す、水滴はじく肌を泡がすべり落ちていく。
その腰を抱き寄せ唇つけて、うなじから背中へキスなぞり挿し入れた指の周りに口づけた。

「っや、だ、め…っ、」

ふれさせる指と唇から、愛しい体が逃げようとするけれど離せない。
この5分ほど後のことに恥らっている、そう解るから逃がしたくはない。
こんなに恥ずかしがる周太なのに、それでも拒まずいつも受入れてくれる、それが嬉しい。

「周太、そろそろ行こうか?ほら、掴まって、」
「あ、あの、ひとりでいきます…っ、」

恥ずかしがって腰を引こうとする、けれど挿し入れた指に動けない。
どうしていいか解からない、そんな貌は薄紅いろ華やいで途惑いの清楚が美しい。
俯けた首筋しなやかな艶は少年の美貌、無垢まばゆい無意識の誘惑に充ちてしまう。

こんな姿が男だけの世界に座りこんだら?

そんな予想は自分も男なだけに貪婪を見て、怖くなる。
もちろん男だって理性は充分にある、けれど精神と肉体の状態次第で性的欲求への箍は緩んでしまう。
それも20代の盛んな時なら尚更に好奇心も旺盛で、美少年への禁断を少し覗きたがる男だって当然いる。
そういう好奇心にとって、周太の雰囲気はセクシャルな対象になる可能性が高い。

周太は生来の内気で穏健だけれど聡明で、凛と端正な性格でいる。
それは気の強さにもなって優れた運動能力から喧嘩も強い、以前は英二も勝てなかった。
きっと滅多な相手には負けないだろう、けれどセクシャルなことになると周太は未熟すぎて隙が多い。
しかも周太は23歳成年だから児童虐待の違法にもならない、合法的に軽い好奇心を満たせる誘惑は男を愉しませてしまう。

自分と同じ司法の警察官であるなら、そんな愚行はしないでほしいとも思う。
けれど現実には組織内の虐待は存在する、まして機動隊は出動待機の為に隊舎という閉鎖空間に常駐する。
そうした閉鎖社会での鬱屈に嗜虐は生まれやすい、そこに性的未熟者が混じれば被虐の対象にされる可能性はゼロと言えない。
たぶん山岳救助レンジャーの方は鬱屈も少ないだろう、それは山ヤの精神性を自分も知っているだけに信頼はしやすい。
けれど銃器は解からない、射撃特練にある独特の空気を光一の経験から考えると、いじめの可能性が怖い。

―しかも周太の場合、特別措置が多すぎるんだ

卒業配置期間にも関わらず、周太は署付とはいえ射撃特練に選ばれた。そして出場した2大会とも満点優勝をしてしまった。
この実績に周太の実力を認め賞賛する者も数多くいる、けれど「特例」であることに拘り妬む人間がいても不思議じゃない。
そういう人間が周太の、性的受動になりやすい未成熟な少年気質に気付いたら?

―やっぱり行こう、そのためにも

そっと心に決断をして、シャワーを止める。
そのまま抱きあげて英二は婚約者に笑いかけた。

「ダメだよ周太?身体検査なんだから、ちゃんと全部みないと、」
「だめ…っ、ぁ…はずかし、の…」
「恥ずかしくないよ、周太?奥さんなんだから、いいんだよ、」

綺麗に笑いかけて浴室の扉ひらくと、バスタオルをとり抱きあげた体に掛ける。
そのまま廊下に出て横切るとドアノブ開いて、バスタオルに包みながら恋人を便座に腰掛けさせた。
そして最後に指をぬきとると、そっと腕と掌で肌隠しながら黒目がちの瞳が困ったよう見上げてくれた。

「あの、ほんとにみるの?…このまま?」

これで「見る」って言ったら変態認定かな?
そんなことを考えながら英二は、初心な婚約者へと綺麗に笑いかけた。




(to be continued)

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