萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

secret talk9 愛逢月act.10―dead of night

2012-10-16 04:27:17 | dead of night 陽はまた昇る
君の隣の時間、



secret talk9 愛逢月act.10―dead of night

繋がった電話の背景に、かすかな嗚咽が交じる。
こんなふう聞えるなんて、結構な号泣をしているのかな?
周太の肩に凭れながら予想に微笑む、その向こうから、ほっと溜息が笑ってくれた。

「なんだ、おまえか。自分ので架けりゃいいのに、」
「俺だって解らない方がいいのかな、って思ってさ。内山、そこで泣いてるんだろ?」

さらっと聴いた向う、ちょっと笑った気配がある。
困りながらも笑っている、そんなトーンで関根は口を開いた。

「おう、そうだよ。個室でノンビリしてんだけどよ、すげえ寛いでんなって思ったらなっちまって。どうしたらいいんだ?」

困って途方に暮れてる、でもなんだか微笑ましい。
そういう雰囲気が関根の声に温かい、解からないままにも受け留めようとしているのが解かる。
こういう温かさが関根の良い所だな?そんな良いヤツへと微笑んで、恋人の肩に頭載せたまま英二は答えた。

「存分に泣かせてやればいいよ。何も言いたくないけど独りで泣くの寂しくて、おまえの前で泣いてるんだと思うよ?」
「あー、なるほどな。俺だったら頭悪くてワケ解んねえから、図星とか言えないしな?それならいいや、」

解決したな、そんなふう明朗に笑ってくれる。
こうした良い意味での単純さが関根は明快で、さわやかな男気が温かい。
こんな男が姉の恋人であることが素直に嬉しい、嬉しいままに英二は訊いてみた。

「内山、いま泣きながら飲んでるんだろうけどさ、でも会話は聴いてるって感じだろ?」
「おう、」

短く答えた声が、困りながらも微笑んでいる。
そんな関根の「困った」を少し楽にしてやりたいな?
そう考え廻らせながら見つめる恋人の瞳が「大丈夫かな?」と見つめてくれる。
優しい周太だから関根と内山の両方を心配しているのだろう、その黒目がちの瞳に微笑んで英二は口を開いた。

「俺と喋ったこと、正直に言ったら良いと思うよ?その方が内山、俺と会ったとき話しやすいだろ、」
「そっか、そうさせてもらうな?さっきも話に出たんだけどよ、そっからこうなっちまって、」

自分の話題が引金なんだ?

それは納得できる、この納得に自分の予想と危惧は当たりだと解かる。
今後の内山はどうするのかな?考えながら至近距離の頬に頬よせて、英二は笑った。

「俺で良かったら電話くれって言っといて?じゃ、またな、」
「おう、ありがとな、」

通話を切って、閉じた携帯電話を隣のポケットに入れる。
そんなことにも頬染めていく恋人に、嬉しくて笑いかけた。

「お待たせ、周太。さっきココア飲んでたね、間接キスしてくれたんだ?」

ほら、言った言葉にまた紅潮は華やいでいく。




(to be continued)

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