※R18(露骨な表現は有りません)
深く、この贖罪と祈りに
secret talk9 愛逢月act.5―dead of night
ゆっくり浮上する意識に瞳が披かれる。
見上げた天井は薄暗い、あわいスタンドランプの光がオレンジに滲む。
素肌おおう温もりに瞳を動かすと、やわらかな黒髪が肩こぼれて顎を撫でた。
華奢な骨格やさしい少年の肩、ランプに艶めく背中なめらかに凭れかかり、この体の上に眠っている。
「…周太、」
そっと名前呼んでも、寝息は途切れない。
規則正しい眠りの吐息が肌ふれて、リネンのした絡まる脚は熱いまま動かない。
微睡おちる恋人は体重ねたまま、目覚めは遠い。起こさないよう体ずらしかけて、体内の感触に意識ふるえた。
「っ、ぁ…」
内からの感覚に、声がこぼれてしまう。
体の奥深くが熱に擦られ、あまやかな吐息が背から奔りあがる。
まだ周太の一部が自分の体内に納められている、その熱が楔のよう穿たれ動けない。
なぜこんなことになっている?そう記憶を辿らせて言葉と感覚がおしよせた。
―…あたたかい…このままいさせて?英二のなかに入れたままにしたい
愛しい声の記憶は、いつもより熱が高く耳朶に残る。
ぎこちない指が唇が肌ふれて、不慣れな愛撫に鼓動ごと奪われて。
そのまま体を拓いて熱は充てられ、内へ深く侵されるまま恋人の体を受入れた。
今、肌重ねている稚い寝顔、この少年の体が自分を抱いて、求める無垢のまま自分を犯し快楽に攫いこんだ。
―抱かれたんだ、俺が…初めて、ひとに抱かれた
今夜、初めて周太は「抱く」ことを覚えた、この自分の体で。
周太を受入れることは今夜が初めてでは無かった、けれど全身を委ねて「抱かれた」のは初めてだった。
相手の好きなように任せて体を交わす、その経験を今夜、自分も初めて知った。
こんなこと絶対に誰にも許さなかった、けれど今夜、この稚い体に許してしまった。
―抱くのと抱かれるのと、こんなに違うなんて…
この3月、この身の処女と引き換えに周太の童貞を貰った。
身を任せてくれる周太の腰に自分から乗り、初めてに震える熱を自分の内へと納めこんだ。
初めて内臓器を性愛に遣い受入れる感覚に体は痛かった、けれど怖いとも不安とも思わなかった。
初めて体内へと他の体を受け入れる、その押し広げられる感覚の不慣れに痛んでも「抱く」なら主導権は自分に有る。
この主導権が自分はいつも欲しい、誰かに自分をコントロールされるなんて誇り高すぎる自我には許せないから。
けれど今夜、初めて自分は「抱かれた」、この幼げな恋人に自分を明け渡した。
―すこし大人びて見えた、抱いてくれるときの周太…熱っぽい目で、俺を見て…
そっと黒髪に指を絡めて、みだれ髪を梳いてやる。
やわらかに指からます髪は少年のまま優しくて、零れる香も変わらない。
いま眠りの吐息こぼす唇は清楚に艶めいて眠る。けれどすこし前、この唇がこの体をキスに埋めて快楽をくれた。
求めて抱きしめて、熱い楔をこの身に挿し入れて「大人の男」として施す側のセックスを初めて覚えてくれた。
―周太に抱かれたんだ、俺は
自覚がことんと心におちて、吐息が唇ついて零れる。
まださっきの一度きり、けれど気怠いような甘さが全身を浸しこむ。
この感覚は何だろう?セックスの後こんなふうに力が脱けているなんて今まで無かったのに?
抱かれる方が負担があるという、それが今の状態だろうか?そう考え廻らせながらリネンを引寄せ、眠る恋人の背を包んだ。
「…周太?…いつもこんなだったんだね、」
気付かされたことが言葉こぼれて、胸の上の恋人を見つめる。
なめらかな頬を胸にのせ眠る貌はあわい紅潮に幼げで、けれど睫の陰翳は清楚な艶に深い。
同じ齢なのに稚いままの純潔まばゆい、愛しさにリネンごと婚約者を抱きしめて英二は微笑んだ。
「愛してる、…周太だから俺、抱かれたんだよ?」
そっと想いを言葉に伝えて、また黒髪に指からめて梳く。
どこまでも純粋で少年のままの周太、この心も体も愛しくて仕方ない。
この愛しさのままに全て与えたくて、周太が抱え続けているコンプレックスも解いてあげたかった。
鍛えて筋肉に鎧っても華奢な骨格は変わらない、その中性的な肢体を悩む心へ「大人の男」として自信を贈りたい、そう願った。
それは本来なら女性が与える「男の自信」性差の肉体により贈られるもの。
けれど周太は女性を抱くことはもう無い、そして他の男性とも体を交わすことも無い。
この無垢な恋人の純潔は生涯を誓う英二しか交情を求めない、だから我が身を与えてしまった。
周太が女性を抱く、本当はそれが一番良いと知っている、けれど周太にはもう出来ない。
周太にとって最大の肉体コンプレックスが「英二の子供を産めない」ことになってしまったから。
英二の婚約者として将来は妻になる、けれど妻でありながら「子供を生めない」体であることを周太は哀しんでいる。
英二を愛してくれるゆえの叶わぬ願いに、子供を産める女性の体に深いコンプレックスを周太は抱いてしまった。
こんなコンプレックスを抱いてほしくない、けれど周太が英二を愛するほど純粋なまま、憂悩は深みに墜ちていく。
それを止めてあげたい、けれど方法が解からない、ただ共に過ごす時間を1つでも多く笑顔で温める事しか出来ない。
本来、周太は女性嫌いではない。
親友は女性である美代だし、英二の姉のことも大好きで、憧れの女性もちゃんといる。
今日も英二の祖母と仲良くなって菫とも信頼を結んでいた、初任総合では後輩の女性警官とも友人になっている。
いつも真直ぐ相手を見つめて、性別を越えた部分からフラットに好きになって、穏やかな性質の素直に周太は向き合う。
そんな周太は女性に好かれやすい、それは母親の美幸が真直ぐな愛情を惜しみなく息子に与えた、その賜物だろう。
そこが自分と周太の大きな違いだと知っている、結局のところ自分は周太のようには真直ぐ女性を見ることは難しいから。
これから先に実母との関係が好転しても女性への不信はもう拭えない、それだけ虚無な肌と時間を重ねてしまった。
確かに自分はバイセクシャルだろう、けれど本気で恋愛する相手は周太と、もうひとり光一だけで二人とも男だった。
きっと周太が女性でも自分は恋をした、けれど光一は「同性の男」であることが深い信頼と感情の基点になっている。
この光一への想いからも気づいてしまう、自分は女性を伴侶としてパートナーとしての恋愛には見つめ難い。
もし可能性があるとしたら唯ひとり、けれど想い交す可能性は0%より低いと知っている。
だから気付いてしまう、想ってしまう、そして痛い。
もし父親の馨が「殉職」しなければ周太は、女性と恋愛して穏やかな幸福を築くことも出来た。
この運命の陥穽がなければ周太は警察官にはならない、英二とも出逢う必要は無かった、そうしたら女性と恋愛出来た。
この可能性への自責が本当は痛い、コンプレックスの原因は「英二」と「50年の束縛」そう解るから、自分を周太に与えたい。
だからこそ、この自分が「大人の男の自信」を周太の心と体に贈りたかった、だって自分は周太の運命を援ける為にいる。
この純粋無垢な心と体を、全てを懸けて護り愛することが自分の幸福、だから何を与えても惜しくは無い。
「ね、周太…俺のこと抱いたんだから自信ついただろ?そのために俺をあげたんだ…だから俺のこと、もっと信じて、頼ってよ」
静かな声に訴えながら、やさしい黒髪を梳いて撫でる。
こんなふうに全身を預けて眠る恋人、こうして見つめてふれる肌は瑞々しくて青年より少年。
もう23歳の成年でありながら幼さ残る中性的な美しい体、その引け目から周太は英二の肉体を羨望にも見つめている。
だから自分を周太に犯させたかった、羨む成熟の体を抱いて犯せる体を自分は持っている、そう自覚をさせたかった。
その自覚は体に対する自信に変わる、それは身体的コンプレックスを超える力になって「大人の男」である自信になる。
そんな周太の未成熟な輝きまばゆい肢体、それなのに「死線」の現場に立ちに行く、もう、その瞬間が訪れると今日聴かされた。
だから今夜、この体を与えたかった。この体で「大人の男」である自信を贈って、生還する力を与えたかった。
これから「死線」に立てば自助の瞬間が多くなる、そのとき自分を支える力は絶対の自信しかない。
生死の分岐点は謙虚な自信が道の選別へと繋がっていく、それを自分は「山」の世界にいつも見つめている。
この自分は必ず生きられる、帰れる、そう信じて生への努力を怠らず諦めない、それだけが死の淵から帰る原動力になる。
だからこそ自分は帰ってこられた、あの冬富士の白魔も、鋸尾根の雪崩も、いつも己の心身への絶対的自信に生き抜いた。
だから今、ここで周太の心と体にも自信を1つ増やして欲しい、自分を信じぬいて生き貫いて、無事に帰ってきてほしい。
どうか如何なる死線からも帰ってきて?そう祈り撫でる黒髪のあたまが、そっと動いて長い睫が披かれた。
「…えいじ?」
名前を呼んで見つめてくれる、その眼差しの無垢がどこか熱い。
不思議な黒目がちの瞳へと英二は、すこし困りながら笑いかけた。
「…周太、起きたの?」
「ん、…えいじ、っあ、」
声があげられ体の内、熱の動きに呼吸止められる。
ほんの一瞬の身じろぎ、けれど息つかせぬ熱は脊髄から奔りあげ、喉逸らされ喘いだ。
「…ぁ…っ、ん、」
止まった呼吸のはざま声こぼれ、その声がひどく甘い。
ほら、こんなふうに「抱かれる」は違う、この差に途惑う体をしなやかな腕が抱きしめた。
「えいじ、かんじてくれるの?…あったかい、えいじのなか…」
囁くよう素直なまま告げて、唇そっと重ねてくれる。
あまやかな熱こもるオレンジの香、ふれて口移されて熱からめられる。
ぎこちない舌の熱に蕩かされ奪われる、抱きしめる腕が肌が熱く体を覆って、解からなくなる。
―こんなになるなんて…この俺が
こんなに奪われている、体も心も、この自分の全てを。
肌ふれる熱に、唇から注がれる熱に、体の深くに挿しこまれたままの熱に犯される。
もう自分を明け渡して委ねている、この少年の心と体に操られるまま溺れていく。
「…っ、ぁ…」
ほら、また零れる声が甘い。
ただキスをされ抱きしめられているだけ、それなのに。
いま体の内に少年の熱を納めたまま、その熱の気配が心ごと体を奪い、動けない。
ただ挿しこまれてある、それだけで動いてもいない、けれど熱が膨らみだす感覚が内から責めあげる。
―これだけなのに…侵される、すべてが
心に吐息こぼれて甘い発熱が起きる。
挿し入れたままの熱に熱が起される、あまやかに自分の深奥から発熱が侵しだす。
微熱が血潮めぐらせ指先まで支配される、朦朧と心ほどかれ体が拓かれていく。
ふれる唇ぎこちないキスが愛しくて、そっと離れた吐息に微笑んだ。
「しゅうた…きもち、いい?」
「ん、はい…きもちいい、」
感覚に息止められながら訊く、見つめる凛々しい眉がすこし寄せられる。
黒目がちの瞳を微熱に潤ませて頬うす紅そまる、その表情に、これから起きる事が解かってしまう。
けれどそれで良い、肩でひとつ息吐き体ゆるませたとき、遠慮がちでも我儘なトーンが言ってくれた。
「ね…このままさせてくれる?…北岳にいく約束を、させて…おねがい英二、いうこときいて?」
ほら、やっぱりそうだ。
予想通りの求めに微笑んで、英二は恋人へと笑いかけた。
「おいで、周太?」
呼びかけに黒目がちの瞳が微熱を見せて、ゆっくり体を動かした。
体内に動いた熱に鼓動がうたれる、その唇に優しいキスを重ねられる。
オレンジの香あまく蕩かされて意識がゆれる、ぎこちなく熱ふれるキス深くなる。
唇を深く繋いだまま絡みあう脚、ふれる肌と縺れる繁み、その奥に挿しこまれた熱い楔が動き、責めだす。
「…っ、ぁ…ぁぁ…」
深奥の感覚に声あげられる、キスの狭間からこぼれてしまう。
体内の熱が芯へ伝わり脹らんでいく、重ね滑らす肌のはざま自身も熱く硬くなっていく。
こんなにも自分が感じさせられてしまう、その初めての経験に初々しい声が重ねられた。
「えいじ、きれい…、ぁっ…もっとあえいで、かんじて…おれをみて」
愛しい声が快楽に求めだす。
その求める声は無垢なまま、けれど微熱こもらせ強い。
この微熱は支配する者がもつ手綱、抱かれる者を操り侵していく緊縛。
この緊縛が自分は嫌だった、ほんとうは怖くて不安で、誰にも「抱かれる」ことは赦せなかった。
「…し、ゅうた…ぁ、ぁ…っ」
それなのに声、いま甘くこぼれだす。
愛しい声に熱に誘われるまま感覚は奔り、意識ごと心操られ支配される。
いつも支配する側に立つ自分、目の前の人間に都合よく動いてもらう術を考えてきた自分。
それなのに今、この無垢な少年に全てを明け渡したまま、この体を抱かれて犯され、乱されていく。
「きれい、えいじ…こんなかおするんだね…だいすき…っん、」
「っあ、…っ、っぁ」
ぎこちない腰の動きに、奪われる。
呼吸止められ吐息だけこぼれ、体の深く熱が穿たれていく。
こんなことが自分の身に起きるなんて?信じられない現実と、酷く甘い満足に喘いでしまう。
「きもちいいの?…こうするのいいの?…っ、…ん」
「ぁあっ、しゅ、うた…」
掛けられる言葉に、心ふるえて快楽に襲われる。
支配の熱に艶めく声、それでも可愛いトーンが愛しいままの無垢な欲求。
本当に子供のままの周太、いま自分を抱きあげる肩も腕も繊細な輝きに、あわい汗が紗をめぐらす。
こんなふうに馴れない稚げな体、それでも自分の成熟した男の体を抱いて、思うまま快楽に穿ち支配する。
―これでいい…このまま自信つけてほしい、周太
体内に灼熱を挿しこまれ、深い発熱に祈りを想う。
ただ揺すぶられる意識と感覚に墜ちていく、深く祈りが体ごと穿たれる。
この体を心を全て捧げて愛して、恋して、触れさせない筈の深奥に受容れた肌へ祈りを籠める。
この無垢な体と心に支配をゆるし受入れ、自信の喜びを純粋な心に覚まさせたい。
それは、この自分の贖罪なのかもしれない。
この体で自分は、ずっと恋愛への冒涜を犯してきた。
この体の美貌と力に惹かれて集まる相手たちを、いつも都合よく選んで利用してきた。
気に入れば一夜の快楽を与えて愉しんで、けれど深入りされたくなくて厭きられるよう仕向ける。
心も想いも与えず快楽だけをセックスに愉しんでいた、その虚無に蝕まれながらも孤独に止められなかった。
それは互いの利害の一致でもあった、それでも自分の犯した罪への自覚が今はもう解って痛い、そう気づいている。
もう心から大切に見つめる恋愛が自分にはある、こんな自分なのに二人も相手を与えられ、孤独は充たされた。
だから今こそ償いたい、無知な自分が犯した冒涜を償いたい、それは誰よりも唯ひとりの為に償いたい。
―周太、きみに償いたいんだ、強姦のこと…ゆるしてほしい
冬富士の雪崩に遭った、その後に自分は周太を強姦した。
嫌がっていても体を繋げてしまえば心も繋がる、そう思い込んで無理矢理に抱いた。
それがどんな苦痛を与えて周太を冒涜したのか、今、ようやく思い知らされて自責が苦しい。
こうして自分が抱かれて犯される、その不安と痛みと悦びに墜ちて今、ようやく解かる。
だからこそ今、この体で自分が犯してきた冒涜の罪を、この身を捧げて償いたい。
―償いの瞬間が今、この時だというのなら…幸福すぎる罰だ
贖罪に与えられる、幸福な罰。
この最愛の少年に抱かれて犯される、この歓びが罰なら幸せにすぎる。
いま犯されていく体から感覚を与えられ、この自分を操られる凌辱はある、けれど溺れている。
この愛しい無垢の心身に求められ、触れられ、全てを支配される悦楽は、プライドより甘く優しく自分を離さない。
「…し、ゅうた、っぁ」
ほら、愛しさに名前を呼ぶ。
いま自分を侵していく優しい支配者に、跪く。
「えいじ…すごくきれい…、っ、ぁ…ね…きもちいい?」
ゆらがす腰の律動に、愛しい声が問いかける。
言葉は幼さのまま、けれど声の艶深さに自信が薫らせて嬉しくなる。
もっと自信をつけてあげたい、願うまま見つめる黒目がちの瞳に、喘ぎと応えた。
「っ…き、もちい、しゅう…っ、ぁぁ」
「おしえてえいじ…もっときもちよくしたい、えいじのこと…、っ、どうしたら、いいの?」
吐息のはざま見つめてくれる瞳、微熱に潤んで愛おしい。
この愛しい微熱に自分を全て捧げたい、犯され操られ、永遠に縛りつけてほしい。
そんな望みのまま抱き寄せて、蕩かされた吐息に無垢な耳もと囁いた。
「…もっとだきしめ、て…さっき教えたとこに…っ、ぅ…ぁ、し、ゅうた…っぁ」
「こう?…えいじ、これでいい?…っ、ん…ぁ、」
応えて絡められる脚、合わせられる肌、ふれるごと熱くなる。
抱え込まれる腰にそった腕から繊細な筋肉の漣が熱い、肩のラインに肌艶めく。
突き上げる律動、離れては合される繁みもつれる、すべらす肌に芯は責められる。
深く挿しこまれる灼熱が快楽を抉らす、あふれゆく感覚に意識ゆらされ喘ぎ吐かされる。
「…ぅっ、ぁ、しゅうた…へん、になりそ、…ぁっ」
「うれしいえいじ…もっときもちよくなって?…おしえて、えいじのからだのこと…っ、もっと」
見上げる黒目がちの瞳は優しい熱、視線から愛撫される肌に雫こぼれる。
この自分を抱きしめる肌に汗の紗きらめき、滴る熱に濡らされていく。
「ぁ…しゅうた…キスし、て」
「はい…英二…」
名前を呼んで呼ばれて、重ねられる唇あまく熱をくれる。
抱かれる腕に委ねた体を快楽が奔る、やさしい唇から微熱に蕩かされていく。
ぎこちない腕、唇、舌、腰、それから熱の楔、どれも幼くて歓楽の淫靡に遠いはず。
けれど脊髄から奔る快楽は甘く熱く、見つめる瞳は愛しくて、その幸福が血潮に廻ってもう、戻れない。
―愛してる、帰ってきてほしい、護りたい…約束して、俺の隣でいて…
ほどかれ墜ちていく意識に唯ひとつ、想いは祈る。
(to be continued)
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