萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

時限付日記@純文学って

2012-10-13 22:05:26 | 文学閑話散文系
切なさの表現は



秋10月、これが残暑の終りと思わせる日でした。
今日はコンナ↑写真を撮りに行ってきました、資料集めの写真旅です。
といってもね、今、連載中の小説の資料じゃありませんので悪しからず。笑

小説、佳境へ近づいていくターンになっています。
書いていて楽しい、反面すごーく疲れるのも現実です。
コンナヤヤコシイ話、なんだって書いてるんだよ自分って思う時があります。
モウね、セルフ・ぼけツッコミ。
コンナ自分に誰かツッコミ入れてくれって思ったりします。笑
なのでセルフ・気分転換にボヤいてみよう、とコンナの書いています。だからツマンないです、ごめんなさい。笑

この小説、ジャンルは純文学です。
で、純文学の定義って何さ?ですけど。こんなかなあって思います。

1、文章自体の研磨が見られること=情景描写などリアリティ&美しく想像させる力がある文章であること
2、人間心理についての追及がある=心理描写の説得力、読んだ人を惹きこむ力
3、文章の物語性は問わない、1かつ2が充たされていればOK

大学で教わったり自分で読んだ結論として、コンナ感じです。

でもね、元々は純文学ってソンナ好きじゃないんですよね、自分は。
なんで好きじゃなかったかって言うと、話の内容が自分に合わなかったからです。
日本の純文学って言われる作品の大半は所謂「私小説」のカラーがとても濃ゆい。
その「私」小説の世界観と、自分の考えが合わんなあと。

第1話から通して読んで下さっている方は、お気づきかも知れませんが。
自分はかなり理屈っぽいタイプです、リアルの友達や家族に言われます、困ったもんです。笑
理屈っぽい=客観的すぎ、なので私小説の感情的世界観に入り難くて面白いってことが少ないんです。
だもんで歴史小説や研究書ばっかり読んでいました←この手のって内容が濃い&理論的で面白い。

そんな自分が純文学を書いているのは、苦手をやってみよ、って考えでした。

理屈ヤな自分が苦手な、心理描写&感情表現を克服してみよっかな。
どうせ苦手にチャレンジするんなら、苦手要素を全部詰め込んで書いてみようか?
そんな苦手塗れでも、自分が納得できる文章が書けるかなあ?って感じで始めたのが、今連載中の小説です。

苦手筆頭は「恋愛小説」です。

感情表現、とくに恋愛の表現などは全くもって苦手、っていうか読んだことも殆どありません。
それでも高橋治さんの「風の盆恋歌」には感動しちゃった自分なので、ああいうのなら書いてみたいって思ったんです。
あの作品以外にも高橋治さんの恋愛小説は、家族愛や友愛など恋愛のバックグラウンドになる様々な人間心理が美しい。
恋愛って恋人同士だけの出逢いで育まれるモンではなく、それぞれの人格を作りあげる全ての要素があるからこそ恋愛も生まれますよね?
そういうリアルな人間感情の複層を、自分も書いてみたいなって思いました。

で、恋愛でどうせ書くんなら、今まで描かれたことのない恋愛関係がいいかなって思いまして。
それで友人から相談を受けた経験がある、リアルな同性愛のことを書いてみようって決めました。
いわゆるBL小説ではなく、リアルな男同士の恋愛をフラットに描けたら良いなあと。

BL小説ってファンタジーだと言う人も多いですが、自分も同じ意見です。
元来「fantasy」って言葉自体が「叶いっこない望み=非現実」って意味ですが、その通りな作品が多いよう思います。
この小説を書くにあたってWEBで作品をいくつか拝見しましたが、自分からすると説得力を感じられませんでした。

a.設定からありえない
b.同性愛に対する偏見と差別が書き手の根底にある
c.なぜ「同性」なのか背景が無くて、その因果関係が不分明
d.同性愛ならではの悩みや喜びが描かれていない

といった4つのポイントがBL小説の特徴かなあって思いました。
その辺りをよく考えながら自分は書いてみています、心理描写やストーリーの両面で。
たまにR18も描きますが、男性同士ならではの感情と心理的&肉体的問題と向き合うシーンとして入れています。
男女恋愛との差で最も顕著なのは身体的問題です、なのでコノ部分での心理描写は純文学として必須要素だなあと。
そして、この場でお詫びを→アレな話が苦手な方いつも申し訳ありません!!


他の苦手要素は「現代もの」「警察もの」って所です。

なんかね、警察ものって言うと勧善懲悪orダークいずれでも「ヒーロー」だなって感じるんですよね。
どっちかいうと自分は所謂ヒーローものが苦手なのかもしれません、仮面ライダーとかは見ていたけど。笑
で、そういのとっぱらって「生身」の人間で男である警察官を書いてみようかなって思いました。
普通の人間である男が警察官という仕事を選び、仕事の苦悩と喜びに向き合い、成長していく。
そういう等身大の男の姿を描いてみたくて、ある意味人間的な狡い&弱い部分も描いています。

宮田は「ヒーロー」って要素を相当持っています、国村もです。
どちらも美形で才能も恵まれている、そういう「ヒーローと思われている人物」の等身大を描けたらいいなあと。
この二人は両方とも「自分はタダの男で人間」だと自覚しています、そしてお互いの「人間」を一番よく理解しあっている。
これって同じタイプだからこそ出来る相互理解であり、それが互いの信頼関係にもなっていきます。
で、国村について言えばトリックスター的ヒーロー、悪戯っ子で超自然的要素が強く、とても明るくて愛情深い。
これに対して宮田は白馬の王子に見えて実はダークヒーロー、天使かつ悪魔という両面性は「堕天使」という言葉が似合います。
こんなふうに同じヒーロータイプでも2人は真逆です、この対称形がタッグを組むことで「ヒーローとは何ぞや?」を描けたらなあと。


こんな感じで苦手要素を盛り込んで設定を作って書いています。
その結果として、純文要素3「物語性」については濃い内容となりました。
こういう濃いのって自分は好きなんだろうなあと思います、だから描いているんですけどね。

で、書くのは資料読んだりなんだりって作業も結構しています。
元々が苦手ジャンルばっかりなので、初心者無知からスタートするから資料は必読です。
で、ちょっと疲れたのでコンナぼやき?みたいなん書いてみました。わらい

乱筆乱文を失礼いたしました、良かったらまた小説読みに来てくださいね。
こっから話はまた転換していくので。





コメント (2)
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secret talk9 愛逢月act.8―dead of night

2012-10-13 01:49:33 | dead of night 陽はまた昇る
必要なもの全てになって、



secret talk9 愛逢月act.8―dead of night

アルトヴォイスの歌が、夜の潮風に優しい。

同じ海の風でも昨日とは香りが違う、葉山の方が甘い。
あの甘さは、自分の心理も関係あるだろうか?

―…俺ね、8月に異動するんだ。今朝その内示を教えてもらったの、第七機動隊の銃器レンジャーだよ

昨日、葉山の海で告げられた現実が、想いを裂く。

ずっと覚悟はしていた、幾度も考えて方法を積み上げた。
それでも瞬間が訪れた心は軋みあげている、本当は泣きたい、けれどもう捨てた涙は今はまだ、取り戻したくない。
次に泣くときは、幸せな「いつも」が始る瞬間だともう決めたのだから。

そんな想いにそっと、繋いだ掌を握りしめる。
この掌を離したくなくて、ずっと繋いだままでいたくて、きちんと別れ際も見送れるのか不安になる。
このままずっと隣を歩いていられたら良いのに?そんな本音にアルトヴォイスの歌は、代弁するかのよう歌詞を曲に乗せる。



Then make you want to cry The tears of joy for all the pleasure and the certainty
That we're surrounded by the comfort and protection of The highest powers In lonely hours The tears devour you

Oh, can you see it baby? You don't have to close your eyes 
'Cause it's standing right here before you All that you need will surely come

I'll love you more with every breath Truly, madly, deeply, do
I want to stand with you on a mountain…I want to lay like this forever

君を泣かせたいんだ 確かな幸福の全てに満たされた喜びの涙で
僕らの孤独は壊されて、最高の力ある護りに抱えこまれているよ 
孤独な時にある時も 涙が君を呑みこむ時も 護られているんだ

愛しい君には見えている? どうか君の瞳を瞑らないでいて 
ここに、君の目の前に立っているから 君に必要なもの全てになった僕は、必ず君の元へたどりつく

息をするたびごとにずっと、君への愛は深まっていく ほんとうに心から、激しく深く愛している
君と一緒に、山の上に立ちたい…こんなふうにずっと、寄り添い横たわっていたい



ほんとうに、幸せな涙で泣かせてあげたい。

いま隣を歩いてくれる恋人も、たぶん泣くことを止めてしまった。
昨夜も独りきり屋根裏部屋で涙して、けれど泣顔は決して見せてはくれなかった。
きっと自分を哀しませたくなくて涙を消した、その凛とした強さは目映くて愛しい。
けれど、思ってしまう。

―いま、君の目の前に俺は立っているのに?

いま周太の隣を自分は歩き、ときおり目を合わせて話している。
それでも周太は甘えてくれない、泣き虫な癖に涙を見せないで、我儘も言ってくれない。
この自分の胸に縋って泣いてほしい、いま不安なら哀しいなら涙をみせて甘えて頼ってほしい、けれど泣いてくれない。
だから少し不安になる、そして思ってしまう。

―俺は今はもう、君の必要なものにはなれていないの?

ほら、こんなふうに自信なんてほんとは無い。
いつだって君から「必要だ」と見つめられたくて、甘えられたくて、だから手も繋いでしまう。
こうして手を繋いでいたら温もりを感じ合える、いま隣を歩いていると実感できる。
だから掌を離せない、この今の時間を終わらせたくはない。

“All that you need will surely come”
君に必要なもの全てになって僕は、必ず君の元へたどりつく

この歌詞は、本当は「僕」と「君」が逆なのかもしれない?
だって自分の方こそ本当は、君を「自分の全て」として見つめているから。

いま最愛の恋人と時間を過ごす、この幸福を教えてくれたのは君。
いま恋人と将来の幸福を約束交わす、この温もりを分けあえるのも君だけ。
いま最高峰を踏破する夢を見つめて追いかける、この夢すら君が与えてくれたもの。
そして山ヤの警察官として意地と誇りと能力と、この自分の全てを懸けた任務への熱情と「戦い」も君がくれた。
この戦いへの緊張と情熱と不安、その全ては男として誇らしくて楽しんですらいる、こんなプライドも君は与えてくれた。

“I'll love you more with every breath Truly, madly, deeply, do”

この「今」の全てを君が俺に与えてくれた、だから言える。
息をする度ごと君への愛は深く、激しく、真実にすらなっていく。

「周太、」

呼んだ名前に、黒目がちの瞳が見上げてくれる。
純粋で穏やかな微笑は明るんで、透明なまま美しい。

―どうして?

また疑問が心を引っ叩く。
もう昨日から幾度こうして心が叩かれている?
繰りかえし終わらない疑問に心の底は泣いている、その涙閉じこめたまま隣の体を引き寄せた。

「…えい」

ちいさな声が呼びかけた名前を、キスに閉じこめる。
この声ごと自分に君を閉じ籠めたい、そんな望みに昨夜の夢幻が蘇える。
この体に君を受容れて抱きあえた、あのまま君を体内に納めて眠りつづけられたら?

“I want to lay like this forever”

永遠に君と寄添い眠りたい、俺の全てである君と。







(to be continued)

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