水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

スラムドッグミリオネア

2009年04月26日 | 演奏会・映画など
 「スラムドッグミリオネア」は、ひさしぶりに観る洋画だが、あたりでよかった。
 じゃ何がよかったのかと尋ねられたら答えに窮してしまうのだが。
 貧民街育ちのインド青年が「クイズミリオネア」で最高賞金を獲得できたのはなぜか。ミステリーのようにそれが明らかになっていく過程で、一人の若者の人生がうかびあがる。

 センター試験や大学入試でとりあげられた、加藤周一先生の「文学とは何か」は、科学との違い、日常との違いを示しながら文学とは何かを簡潔に説明した名文として知られる。
 文学とは具体であるという。
 科学的経験は蓄積され分類されることを志向する。
 文学的経験は具体的かつ一回かぎりのものである、と。
 愛しい人と始めてデートできた日の空とか、またはふられた時に見る景色とかを思い浮かべればわかりやすいかもしれない。
 加藤先生は、梶井基次郎の「檸檬」をとりあげて説明する。

 ~ 梶井基次郎の「レモン」の場合には、別の問題ではない。文学的経験は、単に具体的な、一回かぎりの経験なのではなく、それを通して当事者の人生の全体、つまりその人の世界の全体に対する態度が現れざるをえないような経験である。~

 自信をもって理解できているとはいえないが、また授業してみたい文章だ。
 そしてそのときは、この映画の話をネタにできているかもしれない、できれば熟成させたいなどと思った。
 現代社会の様々な問題が前面にでてくるけど、幹の部分に「純愛」という筋が通っていて泣けるのもよかった。
コメント
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