今年のミステリー第一位とか面白本№1とか謳う本が書店にあふれる季節になった。
多くのランキングの1位になっている『ジェノサイド』は、これはもう「比類なき」と形容したいくらいの作品で、前にも紹介した。
とくに話題になっていないけど、塩田武『盤上のアルファ』はおもしろかった。
文化部に配属になった新聞記者と、年齢制限ぎりぎりでプロ棋士を目指す青年(おっさん)とのお話。
将棋の世界はよくわからないのに、対戦の描写にはけっこうどきどきした。
最近読んだ、同じ作家の『女神のタクト』は、
~ 『30歳にして職と男をなくした矢吹明菜。旅先で出会った老人に「アルバイトせえへんか?」と誘われる。金がなく公演もままならない小さな楽団に、ある男を連れてくれば報酬があるという。それが明菜と、一度は世界的に活躍した引きこもり指揮者・一宮拓斗、そしてオルケストラ神戸の出会いだった。笑いがいつしか感動になる音楽の奇跡の物語』 ~
とアマゾンレビューにあるとおりの本で、話題も登場人物もつぼにはまった。
登場する音楽家たちの生活ぶりや人間性も極端だけど、けっこうあるある的に面白かった。
つぶれかけのプロオケの立て直しに携わることになる明菜と、音楽的には超一流でありながらハートがよわくて緯線から退いてしまった指揮者の一宮拓斗(このおなまえの方、けっこういらっしゃいます)。
「しっかりしろ」と明菜が拓斗にけりを入れるシーンがたびたびあることでもわかるように、漫画チックなキャラクターとどたばたの展開が続くのかと思いきや、アマゾンの紹介にあるとおり、「いつしか感動になる」物語だった。
立て直しをかけての演奏会で選ばれたのは、ラフマニノフのピアノ協奏曲2番。
ラフマニノフ好きの先生も納得のストーリー展開になっていると思うのだが。