書評、その他
Future Watch 書評、その他
マリオ・ルミュー
印象的だったのは、ガンから復帰してきてプレーする彼に、観客が惜しみない拍手をして迎えるという感動的な試合で、突然、対戦相手のチームの選手の1人が彼に殴りかかるという事件が起きた。ホッケーの試合で殴り合いは珍しいことではないが、ルミューのようなNHL全体の宝物のような選手が、殴り合いの当事者になるのはかなり珍しい。そもそも、殴り合い・乱闘には、自分のチームのスター・プレーヤーへのラフプレーに対する報復など、スター選手やゴールキーパーを守るための戦術という側面もある。それが、スター・プレーヤー自身が相手になってしまっては元も子もない。その時は、まず、会場全体が、はっとして、何が起きたのかという反応。数秒してから、せっかく復帰してきたスーパースターのルミューがまた怪我でもしたらどうする、ということで、観客全体が殴りかかった選手に対して非難囂々だった。試合後も、その選手には何試合かの出場停止という処分が下されたと記憶する。しかし、私はちょうどその試合をみていたが、最初に手を出したのは、ルミューの方で、相手の選手の足をかなりしつこくスティックではたいていた。殴りかかり出場停止処分を食らった選手としては、ルミューの執拗な嫌がらせに、「いい加減しろ」という感じだったのである。グレツキー選手の大ファンとしての感想に過ぎないが、ルミュー選手、グレツキー選手と比較するにはまだまだだなぁと思った。
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前世への冒険 森下典子
本書は、読んでいてそれなりに面白いし、評判も良いようなのだが、私にはどうしても腑に落ちないことがある。本書は、人の前世が見えるという人のところへ行った著者が「あなたの前世は、イタリアルネサンス期にいた天才彫刻家」と言われて、その真偽を確認するためにイタリアを旅するという話だ。そこで、その前世がみえるという人がまやかしとは思えない事実が次々と明らかになる。ここで、どうしても解せないのは、著者が、その謎の多いイタリアの天才彫刻家の生涯を追いかけることに没頭しはじめてしまうことだ。ここに2つの謎がある。1つは、前世が見えるという人の謎だ。もう1つは、謎の多いイタリアの彫刻家という存在である。前世はその人だったと言われた本人が後者の謎に惹かれるのは致し方ないとしても、私を含めて多くの人がもっと知りたいのは前者の謎ではないか。それが解き明かされないものだとしてもである。謎の多いイタリアの彫刻家の謎が幾ばくか真実に近づいたとしても、前者の謎が完全に置き去りにされてはどうも居心地が悪い。この流れのなかでは、著者は観察者ではなく、「ロマンティックな乙女」になってしまっているような感じする。実は著者と私は昔の知り合いなので、必要以上に厳しくなってしまうのかもしれないが、他の作品「日々是好日」などで感じる小さい日常への慈しみのような文章の方が、彼女自身に合っているような気がする。(「前世への冒険」、森下典子、知恵の森文庫)
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