書評、その他
Future Watch 書評、その他
ケイト・ブランシェット ガラドリエル
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水銀虫 朱川湊人
この作者の作品は、直木賞の「花まんま」を最初に読んでから、「かたみ歌」「わくらば日記」と読み進め、本書で4作品目だ。最初の「花まんま」で「セピア色の都市伝説」という強烈な印象を植え付けられたせいか、その後の2作も同様の感触で楽しめた。本書についても、同じ路線であっても文句のないところであったが、作者自身はもう少し先に進んでいるようだ。「セピア色」も「都市伝説」敵要素も薄れているが、それでもこの作者の話は本当に面白い。とにかくストーリーの運び方が抜群にうまい。文章もわかりやすい。よく考えると非常に救いのない話なのだが、それでいて後味が悪くない。何故なのかよく説明はできないが、直木賞が生んだ大物ストーリーテラーであることは間違いないと思う(「水銀虫」朱川湊人、集英社)
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地下街の雨 宮部みゆき
本書に収められた短編では、いろいろ不思議な事件が起きるのだが、そこにちゃんとした理由があったり、謎が解明されない不思議のままで終わってしまったりする。それで、別に不満を感じないのは、とにかくストーリーが面白いからだ。普通であれば、謎解きがちゃんとなされる話と、そうでない話では、読むほうの心構えが違う。謎解きがあるのであれば、「この事件で一番得をするのは誰か」などと考えながら読むし、不思議のままで終わるのであればそんなことを考えてもしょうがない。そのあたりがどっちに転ぶか判らないところがこうした短編の面白さかもしれない。読み始めた時点で、作者との駆け引きが始まっている。しかも、この短編集の場合、初めから罠にかかってしまっている方が多かった。特に最後の短編「さよなら、キリハラさん」は、SF小説としても傑作だ。普通の人なら一生に一つ思いつくかどうかというほど面白いアイデアが盛り込まれている。こんな面白いアイデアを短編、しかもややコミカルな話に使ってしまっていいのか、などと思ったりする。こんなところでSFの傑作に出会おうとは思いもしなかった。これも、読み始めた時点ですでに作者の罠にはまっているのである。また、この作品の最初の日常生活の中の音についての記述は本当にうまかった。(「地下街の雨」宮部みゆき、集英社文庫)
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