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くちぶえ番長 重松清

平易な言葉で書かれていてさらさらと読め、しかも内容も当たり前の予定調和的な話であるにも関わらず、何故か心を動かされてしまうという、重松清の術中に、いつものようにまんまと嵌ってしまった。クリスマスの奇跡という章も結末は見え見えなのだが、やはり結末を読んで感動してしまう。いじめっ子との最後の戦いで「松ぼっくり」をぶつけられたいじめっ子が「俺が悪かった」「許してください」と謝る可能性は、現実にはゼロ%に近いと思うが、それでもそうなることを期待して、期待通りになったことに安堵してしまう。全く騙されているとしか言い様がないのだが、それでも、次の作品を読んでしまうのは何故なのか。「その日の前に」ほどではないが、読んでいてじわっときてしまう度合いは、重松作品のなかでも上位に位置している作品だと思う。(くちぶえ番長)重松清、新潮文庫)
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