秋の夜空を煌々と照らす十七夜のお月様。またの名を「立待月(たちまちづき)」と呼ばれるきれいな月を眺めて心地よく眠りについた。
そんな心地よい眠りを、うなされる夢でも見たように脂汗をかいて目覚めたのは、深夜も深夜午前2時半。
歯が痛くて歯が痛くて眠れない。これまで全く経験のないことで、さーどうする。困り果てた。悶々と朝を待つのか、と思いきや何のことはない悶々は約40分。歯は痛いままながら再び深い眠りに。
朝起きてからも同じように、右下側の奥歯がズシンと来るようなやり切れない痛みが続く。
何はともあれ掛かりつけの歯医者に「駆け込み診療」のお願い。普通、歯医者は完全予約制で、一般外来はおおむね待たされる。
そこんところを、長い付き合いの誼もあり、緊急事態である旨を少し威圧的に電話で伝えた。
そうして「では今すぐに来られますか」という返事を引き出した。
ず~~っと長い間、3ヶ月に1度の定期健診に通っているのに「何でいきなりこんなことになるのか」と、顔に書いてあるようなこちらの態度に、受付女性も心得た応対ぶり。待たされることもなく治療椅子へ。一通り診て「異常な夢か何かで、必要以上に歯を食いしばり過ぎて噛み合わせが狂ったようですね」などと、分かったような分からない話で「レーザー光線を当てて様子を見ましょう」ということで、ギーギーガーガーの治療もないまま、少し痛みが薄らいだ気分で帰って来た。
家で時間がたつにつれて、またぞろ同じように、突き上げられるような歯の痛みで頭の芯まで痛くなる。
再び電話で「痛みが全く治まらない。何とかしてもらわんと」。今度はキレそうな感情を込めて「朝診てもらったのは何じゃったの?」と。夕暮れのラッシュの中をまた歯医者へ。「出来れば神経を取りたくなかったが、痛いのなら一番奥の歯の神経を取りましょう」ということで、今度は麻酔注射にギーギーガーガー散々突っつかれて戻った。
夜中から痛くてたまらんと訴えたのに、いとも簡単に「レーザー当てて、様子を見ましょう」と言ったのは、歯は神経を取るともろくなる。できれば取らない方がいい。だから患者のためを考えてそうするのが「私の方針」だと。
ウ~ン、この手の理屈には弱いんだな~。それでも何日続くかわからない痛みに様子を見られてもねー。
兎に角結果オーライ。神経を取ってもらってから2時間あまり。完璧に痛みは去った。一件落着!
そこで思うのは、お医者にはお医者のポリシーもあれば、患者を思いやる気持ちも働くのだろう。痛がる患者を前に、どこまで手を施すか、今の痛みを取り敢えず抑えるのがいいのか。さーどうなんだろう。但し夜も眠れない歯の痛み。これも我慢するのは至難の業である。