風(その1)
皆さんは風を知っていますか、などと言うと叱られるかも知れない。
でも線路上の熱風は知っている人は、そう多くは無いのではと思います。
私も砂漠の熱風を知っている訳ではない。
しかしそれに近いのではないかと思われる経験は持っている。
真夏の線路上である。
ご存知のように夏場のレール温度は55度を超える事も珍しくはない。
その中での気温は図ったことも無いが、陽炎が燃え立ちレールからの輻射熱と、
砕石からの熱気は喉が痛くなるほどの事もある。
その熱気を吹き飛ばしてくれるのが風である。そよ風でさえ全く温度は違ったものになる。一時期働いていた保線管理室と言えば、足で歩いて検査データを集めるのが専門だった。
灼熱の線路上さえ、当然のように歩いた。風のありがたさを思うのはこの時だ。
微風でさえ、向かい風なら汗の蒸発を助け涼しくしてくれる。
しかし反対に追い風、しかも歩く速度と同じ程度となると最悪である。
サウナ風呂に入ったような状態となる。
シャツのみでなく、作業ズボンさえ汗まみれになってしまうのだ。
(続く)