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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

福田栄一著「青春探偵ハルヤ」 (創元推理文庫)

2015-12-04 20:26:15 | 本と雑誌
青春探偵ハルヤ (創元推理文庫)
福田栄一
東京創元社


少し年の離れた妹が金のかかる私立の学校に通う為に 生活費はバイトで賄う大学生の浅木晴也は ひょんなことから相談ごとを持ち込まれ 解決に動くことになる

ストーカーに悩む女子大生が犯人候補に挙げた男性の一人は浮気相手の女性から強請られており ーなどというように次から次に事件に遭遇し 助けを求められて


玉森裕太さんが晴也役でテレビドラマ化されております

ドラマ化にあたっては多少の変更も

小説は少しだけ苦い部分もありますが 

ドラマも小説も楽しめます


「心中立て」

2015-12-04 09:58:40 | 自作の小説
「ちょいとお待ちよ・・・ お前」

下駄の音を響かせて 女が駆けてくる

せっかちに じれったげに


その音を聞くのが好きだった


時により「ほらほら 寒いンだから もうちょっとってば!」

背伸びして首に襟巻を撒いてくれながら
「もう!なんだって こんなに伸びたんだろ 首が疲れるよ」


「羽織くらい ひっかけていって下さいな」
肩にかけて 前に回り紐を結ぶ


「あ ほら 男振りがあがったよ」
お座敷があがってから 夜なべ仕事で縫った羽織 女の心の温かみが沁みた


何を トチ狂ったか俺なんぞに惚れてくれた女
寂し気な顔立ちなのに紅をさし にっこり笑うと華やいで とびっきりのいい女だった・・・



息を切らせながら「歩くの早すぎ・・・ 追い付けやしないかと思いました」


ずうっと共にいられるとは 思ってはいなかった

俺には そういう甲斐性はない

女の心が変わるまではー


遠くでの仕事を頼まれて 実入りがいいこともあり 出かけた
思いのほかに時間がかかりー
珍しい菓子と髪飾りなど土産に 久しぶりに女の家を訪ねるとー


女は死んだあとだった


座敷で 酔った客に無理矢理に押し倒されてー それで女はー
「芸は見せても はばかりながら この体も心も売り物じゃあ ござんせんのさ」

火箸で喉を突いた


客は逃げて帰りー

店の者が気が付くのが遅れた



ー馬鹿な女だ 愚かな女だ
その身に何が起ころうと 生きていてくれたら 

死んでしまえば もう抱いてやることもできない


「それでもさ お前さんの目をまともに見られない女には なりたくなかったのさ」


夢で女が言う

「ねえ それほどにお前さんが好きでした」


俺は お前がいるだけで それで 良かったものを





コトバンクより
「心中立て」とはー
1 男女がその愛情の契りを守りぬくこと。また、それを証拠だてること。
2 他人への義理をあくまでも貫くこと。「やめたあとまで会社に―することはない」