夢見るババアの雑談室

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ほぼ身辺雑記です

堂場瞬一著「聖刻  警視庁総合支援課0」 〈講談社文庫〉

2025-01-27 16:44:56 | 本と雑誌

 

 

柿谷晶〈かきや あきら〉 相手が上司でも自分の思ったことは言う強さを持つ捜査一課の女性刑事

若い女性を殺した犯人が自首してくる

彼は有名な司会者の長男で自身も芸能活動していたことがある

動機となると話さない 黙秘を貫く彼

真面目で妹思いでもあり 将来の夢もある青年である彼が 何故二年前に別れた相手に会いに行って 殺してしまったのか

モデルをしている妹の由依の見せる翳りも柿谷は気になりながら

 

それからネットでの炎上

父親が有名人

容疑者も芸能人だったことがある

母親もかつてはテレビに出ていた

父親に「説明責任」があるだろう

番組降板くらいで納得してやるものか

つまりは加害者家族なんだ 悪いんだ 叩くこちら側に正義はある

何をしてもいいんだ

ーなんてね論調です

説明されても その内容が理解できない

「ますます疑惑は深まった」「納得できません」

なんて言葉を現実生活でも よく耳にします

相手の「説明」や「言葉」を理解できない

逆に馬鹿あじゃないかと思う方々も多い

週刊誌などの記事を根拠にネチネチしつこく流す人も

よっぽど暇なのか 私生活が不幸すぎるのか

この作中でも こういうやりとりがあります

{「実は、ネットでかなり炎上しておりまして・・・・・ツィッターとかひどいものです。罵詈雑言の嵐といいますか。

あまりにもひどいので、ご家族には、見ないように忠告しています」

 

「そんなにひどいんですか?」

「弘大くんが芸能活動をしていたせいもあると思うんですが、あることいないこと書かれています。前尾さんも俎上に載せられています」

「前尾さんは、好感度が低いわけじゃないと思いますが」

「芸能人とかスポーツ選手・・・・・自分たちの手が届かない人が少しでもヘマをしたら叩こうと、手ぐすね引いて待っている人は多いんですよ。

それまでどんなに好感度が高かろうが、関係ありません。

ストレス解消なんでしょうが、まさに正義中毒ですね」

 

正義中毒・・・・・最近出てきた概念だ。

少しでも悪いーその「悪い」は受け取る側の勝手な感覚だーことをした相手を貶すことで自分の正義を確信し、他人に対して優位に立とうとする。

必ずしもネット社会に特有のものではないだろうが、情報が伝播しやすくなったせいもあって、やたらと「正義」をふりかざす人が増えてきたのは間違いない。

不倫がばれた芸能人を叩いたり、失言した政治家を稀代の大悪党のように非難したり・・・・・それで「いいね」が増えると、気分が上がるのだろうか。

晶には理解できない感覚だった。}

 

{井端も同じ記事を読んでいたようで、スマートフォンの画面を見せながら「これ、ひどくないか?」と言ってきた。

「前から不思議なんだけど、どうしてスポーツ紙って、こういう感じで芸能ニュースを扱うのかな」

「普段はテレビ番組や映画の宣伝で芸能人のヨイショ記事しか書かないのに、誰かがスキャンダルを起こすといきなり掌を返すんだよな」井端が話を合わせた。

「それを事務所が抑えられるかどうか・・・・・馬鹿みたいじゃない?

もちろん犯罪だったら報道する意味があるけど、今回の件、前尾さんには関係ないじゃない」

「それを喜んで読んで、ネットで無責任な噂を拡散する人がいるから、面倒なことになるわけか」

「馬鹿じゃない?」晶は鼻を鳴らした。「SNSで『いいね』をもらいたいだけなんだから。承認欲求を満たすために、適当な情報でも嘘でも発言してもいいと思っている」

「スポーツ紙やテレビのワイドショーなんかの報道姿勢にも問題があるんだよ。

SNSの内容を紹介するなんて、ニュースになっていないだろう」}

 

前尾の娘であることを隠してモデルをしていた由依は自殺する

この死に責任を感じ 自殺の理由を調べる柿谷

なんとなれば彼女も兄が誤って人を死なせてしまい その後 父親も亡くなり 家族はばらばらになった

なんとか警察官にはなれた柿谷

しかし周囲には自分が加害者家族であることはふせている

だけど自分が加害者家族でもあるだけに もっとできることがあったのではないかと

 

そして由依にストーカーがいたことがわかる

同じ大学の男

この男は自身もかつてネットで炎上した経験がある

芸能人一家である由依に狙いを定め近づき 家族の情報を得て弱みを握ろうとした

ゆがんだ思い

昏い望みの為に 男が使ったのは覚せい剤

前尾一家は逆に犠牲者だった

陥れられ 傷ついた家族

 

被害者家族だけでなく加害者家族にも支援 なにがしかのサポート必要なのだ

マニュアルなんてないけれど

そこを柿谷は期待されている

 

 

著者である堂場氏のあとがきの言葉があります

そこには私が堂場氏の著作を読むきかけとなった刑事・鳴沢了の名前が出てきました

坂口憲二さん主演でドラマ化もされております

シリーズ物で初めて女性を主役に持ってきた著者

柿谷晶 この女性刑事を「令和の一匹狼」として かつての鳴沢了を思い起こしたのだと

刑事・鳴沢了シリーズのファンだった私は いつかなんらかの形で刑事・鳴沢了メインの物語が書かれることを待っています

 

そして柿谷晶のシリーズは始まったばかり

いつか彼女が 刑事・鳴沢了と同じ物語に登場することもあるのでしょうか

 

 

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ごめんなさい

 



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