うざね博士のブログ

緑の仕事を営むかたわら、赤裸々、かつ言いたい放題のうざね博士の日記。ユニークなH・Pも開設。

執筆論・谷沢永一はどんな人?

2007年04月28日 05時15分26秒 | 活字中毒の日々、そして読書三昧
先日、谷沢永一の‘執筆論’-東洋経済新報社刊、を読んだ。結構、錯綜した叙述であり難解なことを材料にしているのにあっさり読んだ。
 ところで、谷沢永一はどんな人?

 この本の腰巻に
  稀代の著述家、
 七十年の軌跡

二百冊を越える著作活動を生み出してきた
  企画の視点と書く技術

 とあり、まことに持ってわかり易く明快な説明文である。
 齢八十近く、大阪市の人。関西大学名誉教授であり専門は日本近代文学・書誌学とある。斯界では知る人ぞ知る論争好きな御仁である。しこうして、気取りもなく著作物ともども上品さにはほど遠い。わたしもせっかくお金を出して買ったからにはあまり厳しくなれないのだが、一言で短所を挙げるならば、中身のない人という印象を与えるのだ。情報の蓄積と整理能力と的確な判断力は現代の論壇とかではすごいものであろうが、多作であるのに著作傾向にオリジナルなものが見当たらない。一所懸命に 方法論だけを数多く紡いできたように見受けられる。
 谷沢永一には身近なものを偏愛するところがあり、開高健と司馬遼太郎を高く評価している。わたしのこだわりで言うと、開高健の詩魂が表出した小説、エッセィはよしとするが、しかし司馬遼太郎の小説と言うと全部が全部、歴史小説になるのだがその歴史観に物足りないものを感じている。もっとはっきり言うと生身の人間が描かれていないとおもう。日本経済の高度成長期からバブル崩壊前後に日本人に好まれてベストセラーになっているが、英雄譚のストーリーではなくもうちょっと小説のフレーム作りに苦心していただきたかったとおもう。テーマが情念に流されていてほんの日常の瑣末事、平凡な人たちの表情が欠け落ちている。まあ、司馬遼太郎を批判すると反発する人が多くいるであろうが。

 戦後日本の出版界では、十数年前まで、教育界・文学界・実業界・宗教界には立派な人生を送り成功した方々が、社会に対し啓発的であり啓蒙的な内容の本を若い人向けに世に送り出したものである。最近、谷沢永一は、そういう役回りをさせられているようだ。一般向きに珍しくよく売れた、‘人間通’などがそうである。

 しかしそれでもわからない、一体全体、谷沢永一とはどんな人?
 キャラクターの面白さがそのまま著作物に出ている?、いえいえ世間はそんなふうに甘くは見ない。この人を理解するには、ご自身の性格とともに大阪人特有の得手勝手な人間性、つまり対社会的な距離感がキーワードになる。余計なことを言わせていただくと、後世の評価(?)が難しい分類に入るだろう。
 しかしながら、困ったことではあるが、わたしはその語り口と切り口に引かれ、またこの人の本を読むのでしょう。
      
コメント
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