その改竄を裏付けるように録音ファイルのプロパティー(作成日時)まで改竄し、作成日時が事故時のデータになっていた。このため、広島の弁護士は被告である岡三の主張を信じてしまった。被告と原告の弁護士同士は連絡し合っていた。残念ながらこの改竄の事実を証明しても裁判結果には影響しない。
何でこんなことがまかり通るか?民事裁判では訴えた原告が被告の過ちを、自ら証明しなければならないという証明責任を負い、かつ、トレードの情報は全て証券会社のサーバーに有りながら、被告は情報開示を求められても開示する義務が無いからだ。
専門弁護士によれば、裁判で証券会社は嘘八百を並べ立てる。仮にウソがばれたところで、それは裁判の結果には影響しない。また、証券会社側の弁護士はユーザーの情報を調べ上げ、SNSとかブログとかに掲載された情報を証拠として提出し(悪質:本来の証拠ではない)攻撃材料として使うため、嫌になって裁判を降りる人も多いらしい。
証券会社がシステムトラブルを起こした場合には、金融庁に報告しなければならない。この報告書を裁判で請求し得られるか?地裁では提出を命令する場合も有るが、証券会社が即時抗告すると高裁で却下されてしまう。つまり、被害者は証券会社や金融庁に決定的証拠が有るのを分かっていても全く入手する手段が無い。
ここらはアメリカの裁判とは全く異なる。アメリカではディスカバリーという情報開示ルールが有り、関連する情報の提出が義務付けられる。トラック一杯の証拠が出される場合も有る。問題が無い訳ではないが、このディスカバリーは概ね公正で平等なものと言えるだろう。
おまけにアメリカの民事裁判は一般人による陪審員制度で、懲罰的に天文学的な賠償金になる事も有る。日本企業はしばしばこれで大変な賠償金を払わされたが、一般社会の常識が通用する。
もし、被害を受けたユーザーが有力な証拠を持ち得るとしたら、
①証券会社との会話を録音し、証券会社が非を認める発言が含まれていた場合
②パソコンに向かって注文を出している様子を動画で正確に撮影していた場合
これらも内容によるが、例えば大阪証券から証券会社に届いた注文受付記録ほどの決定性は無い。
仮に、損害賠償が認められる場合(通常は有り得ない)でも減額されてしまう。
ディスカバリーでは様々な事実や問題点が明らかになり、多くの改善につながる。日本の裁判では全ての事実を知るのは証券会社だけ(証券取引所はシステム状況を把握、証券会社は金融庁への障害報告義務があるが)。闇から闇の葬られる。被害者は莫大な裁判費用と時間と労力を費やし、損害賠償請求が却下される。
総括すると、 ユーザーが証券会社のシステムトラブルで財産を失っても、殆どの場合、決定的な証拠を持ち得ず、損害賠償の裁判自体が意味が無い。最初から負けることがほぼ確定している。専門家は銀行と証券会社は裁判で負けないと言う。これが日本の現実。