マクロ的に見れば、日本は今後も整然と確実に沈下し、国際的な地位を下げて行きます。日本経済の力を削ぎ、規模を縮小させることは1990年代初頭のアメリカの計画でした。普通の国にするのが目標、その具体的イメージはフランスあたりでした。現在のところ、その計画は予想以上に進んでいます。
その理由は日本を形成する権力構造にあります。戦後、自民党一党支配が長く続き、民主党に換ったものの、実質的な権力は官僚が握り続けた。それは、軍事力に加え強力な諜報機関を擁するアメリカに屈服した官僚がアメリカ政府に従属し、代わりに既得権を維持することで妥協したからです。実はスパイ防止法が無い中では、国内最強の官僚と言えども諜報機関(戦争を仕掛けたり、必要に応じて殺人もやる)を持つアメリカには全く対抗できない。
アメリカの大統領は、日本の首相に会うことに大きな価値を認めません。そんなことをするより、官僚に直接電話し要望を伝え動かした方が早い。官僚は首相を動かせる。与党は官僚の人事に手を突っ込まないことで、官僚の支援を受けている。官僚はアンタッチャブルな国内最強権力者なのです。
問題は官僚に、新しい課題、困難な問題を解決するだけの能力と勇気が無いことです。この閉塞状況を変える手は、与党が官僚のトップ人事を積極的に動かし、官僚を手足で動かすことですが、民主党もすっかり骨抜きになり、逆に操りロボットに成り下がった。
一方で、経済が弱体化している日本の円が何故高いのか。それは、アメリカ経済を立て直すための受け皿として、デフレ・円高にする必要があり、財務省と日銀が全面協力している。この円高は、日本の製造業が壊滅するまで続く。既に相当疲弊している国内製造業ながら、1ドルが120円以上の円安に振れると、日本経済が大復活してしまう。
国内製造業が実質的に壊滅状態になった時、今度は超円安に振れる。それが私の言う、ビッグクランチである。この事態では日本は破綻し、助けようもない。為替は必ずしも、市場のニーズやバランスで動いている訳ではない。かねてより私が主張しているように、為替は最大の国家的な経済戦略なのである。経済力あるアメリカが為替を動かす。
何も有効な対策が打てない官僚、頑張る国内製造業。日本が何とか持ちこたえているのは中小企業をはじめとする製造業が耐えて耐えているから。その閉塞感の中で、じりじり国内製造業は寄り切られます。他方、アメリカによる日本搾取状態は未来永劫に継続されます。
余談ですが、アメリカは真珠湾攻撃を知っていたか?当たり前のこんこんちき。暗号は解読できたし、日本に潜入した大勢のスパイから情報は入っていた。何しろ、日本軍は鹿児島湾で真珠湾を想定して大々的に飛行訓練していたのだから、スパイに分からないはずがない。
遅れて暗号を解読したチャーチルがアメリカに警告したが大統領は知らん顔していた。日本は、アメリカにとって好都合すぎる罠にハマったのですよ。山本五十六はアメリカの軍事力を良く分かっていたので宣戦布告して真珠湾攻撃したら大成功しないと考えただろうね。
アメリカの最大の過ちは、日本を信用せず日本が憎いあまり(冷戦で対峙していたソビエトより怖かった)、共産党一党支配の中国を世界の工場にしたことです。また、自らの血を流して世界の警官になることにもこだわりすぎた。やがて、中国は経済力でも軍事力でもアメリカを上回る。そのことは20世紀の終盤で素人でも予想できた。
一方で中国の世界支配の限界も見えてきた。一つはイギリスだけでなくヨーロッパがアメリカとの協力体制を明確にしていること。日本はますます、力を弱めながらアメリカ、中国、ヨーロッパの戦略の谷間で木の葉のように揺られ続けることになる。
日本には国家戦略と言えるものが、第二次世界大戦開始時にもなかった。敗戦への転換点となったミッドウエイ海戦でも失敗することは全く想定外だった。だから、ミッドウエイへの上陸大部隊を世間の目に触れないようガダルカナルに送り込み、武器不足・訓練不足の兵士たちは殆ど何もできず全滅してしまう。
私は新しい進化論(ESCL)を提唱する中で、生命が戦略的に進化してきたことを仮定している。つまり、戦略の根源は生命の進化に有った。この仮説に従えば、戦略の基本は、事実を正確に把握すること(コアに優れた評価システムを持つ)、関連情報を可能な限り集めその正確な分析により解決すべき論理構成を作ること、そして正しく速やかに実行することだ。
これに照らしてみると、官僚には戦略が全くない。官僚の頭では戦略を理解できない。官僚はしばしば戦略という言葉を使うが、カッコよく見せるための付け足しで実質的な意味は何もない。現状では日本は未来永劫に救いようのない国なのである。
官僚は過ちを犯さない、従って責任を負わないということを大前提に置こうとし、そのために大嘘を重ね続け中ればならなくなっている。実績のないこと、難しいこと、都合の悪いことは棚上げ、先送り、封印する。官僚のスキルは戦略とは真逆なのである。戦略と真逆だから沈没する。
世界の激動する環境や情勢の変化の中で対策も解決も無く、日本は取り残されている。官僚は都合の悪い嘘を採用し、不都合な事実を排除することで、権益を守り続ける。官僚は常に安泰で、日本は沈み続ける。