電子顕微鏡で見る事の出来る最小サイズは0.1ミクロン(100nm:ナノメートル)で当然肉眼では見えない。ところがビッグバンで生まれた宇宙卵のサイズはその0.1ミクロンの百万分の1の、更に百万分の1の、更に百万分の1の、更に百万分の1より遥かに小さい。
宇宙卵は実に10の-35乗メートルという大きさで生まれたことになっている。想像を絶するが理解頂けるだろうか?無に等しいサイズながら、質量はこの宇宙全体と同じなのだから、どういう世界?
そのごくごく小さい卵が現在約900億光年(光の速度で移動して900億年かかる直径*)の大きさに拡大し、なお、光速の3倍の速度で膨張を続け、しかも膨張速度は加速されている。*宇宙年齢を137億年として、ビッグバンで天体が飛び散り、光速で膨張しても光速×137億年=137億光年(宇宙の半径)。宇宙の直径は274億光年にしかならばいハズ。
宇宙卵と大宇宙の到底理解を超える対比だが、一般の人は関心が無いから騙されてしまう。
この宇宙卵の極小サイズ実現に関して、ヒントになるのはブラックホールである。ブラックホールは周りの物質を吸収し、圧縮し限りなく小さくなる。ブラックホールが全宇宙を吸収し、限りなく圧縮されれば宇宙卵になれる。
ところが、ブラックホールの物質吸収が永久に続かない事が明らかになっている。巨大銀河の中心にはブラックホールが有るとされているが、その質量が銀河の大きさや構成に関わらずの全質量の0.15%付近なのだ。銀河全体の質量に比例した質量のブラックホールが形成されている。
つまり、ブラックホールはある時点で、物質を吸収するのを止めてしまう。全宇宙を吸い込むわけではない。こうなると全宇宙が10の-35乗メートルというサイズになる事の根拠が崩れてしまうのである。
一方、宇宙物理学者にとって、今一番頭の痛い事は、宇宙の膨張速度が「加速」している事だ。有名なホーキング博士によると、宇宙の膨張はある時点で止まり、収縮し始める。ところが現実は、膨張は止まるどころか加速しているのだ。
そこで宇宙の膨張速度を加速させている犯人探しが始まった。突然登場してきたのがダークエネルギーと呼ばれる、宇宙全体を反発させ、膨張させる巨大な斥力エネルギーである。つまり、あっちへ行ってよと突き放すエネルギーだ。
実は宇宙の端にある天体(宇宙物理学者は宇宙には端が無いと仰る)は宇宙全体の物質の引力で中心方向へ引っ張られている。その引力が有りながら外側に拡散する速度が加速されるというのはただ事ではない。
反発の力=斥力を持つエネルギーが遠ざかる天体の至近距離から追いかけてこない限り、遠ざかる速度は加速されない。かくして、ダークエネルギーは宇宙の端で遠ざかる天体の後に無尽蔵に湧いて出ることになった。
宇宙は光速の3倍で膨張している。どこから、どのようにしてダークエネルギーが遠ざかる天体の真後ろに湧いて出てくるか?誰も答えられない。その量は半端じゃない。ダークエネルギーは全宇宙で観察できる物質の14倍(質量換算)も有る。
ここで我田引水だが、私の循環宇宙論になる。この宇宙の外には巨大なブラックホールなどで構成される大宇宙が有り、その引力で引っ張られていれば膨張速度が加速するのは当然で、小学生でも理解しやすい。
この宇宙の一つの始まりはブラックホール同士の衝突による物質放出だ。この物質拡散と物質吸収という循環が繰り返されているとするのが私の循環宇宙説である。ビッグバンに比べてあまりにも単純すぎて申し訳ない。
私のオリジナリティーを証明するため、今年3月の電気学会全国大会で発表した。「宇宙論で何か工学的なサジェスチョンは有りますか?」との座長の一言は厳しかった。
追記:アインシュタインによれば光速を超える速度は存在しない事になっているが、 国立天文台によれば、宇宙が光速の3倍で膨張する事は物質速度ではないのでアインシュタインの理論に反しないのだそうだ。つまり、宇宙物理学も文学の世界に入りつつある。