20世紀終わりに遺伝子さえ解明できれば病気やら薬開発やら人間の特性や機能まで全部の問題が解決されるという考えが盛り上がった。そこで、ビル・クリントン大統領の強力な後押しもあり、21世紀初頭に日本、アメリカなど世界の研究者が参加してヒトゲノム解析計画がスタートしました。
僕は同じころ、遺伝子絶対論には疑問が有り、「細胞内にはソフトウェアとハードウェアが存在し、循環論理の評価システムが等価的に形成され、進化の駆動力となっている」とする説を2003年の電気学会に発表した(稚拙な原稿ではあったが)。
そして、2003年に世界中が見守る中で全塩基配列が決定。しかし期待に反し、次第に遺伝子だけでは説明できないとの結論に導かれます。現在の新ダーウィン説はこの遺伝子の「唯一絶対」説によって打ち立てられたものだった。遺伝子が突然変異で変化し、自然選択され、優れた遺伝子が残るとの説です。遺伝子以外の登場人物は不在です。
遺伝子の唯一絶対説の破綻に伴い、本来は新ダーウィン説も変更が必要だったが、そこは学会の超保守性で、今でも絶対的な進化論として君臨しています。しかし、生物関連学会の腰は重い。学会の超保守性とは、これで権威と権限を保ち、給料を得ている人たちの既得権の問題なのです。
その意味で、NHKのシリーズ人体Ⅱでips山中教授がエピジェネティクスを語った事は大きいのです。エピジェネティクスは前世紀から研究されていましたが、特に注目を浴び始めたのは山中教授のipsからです。
自己宣伝ですが山中教授がマウスiPS細胞作製成功を発表したのは2006年で、僕の仮説発表は2003年です。発表原稿をさかのぼると、何と2014年の電気学会発表(愛媛大学)で僕の仮説を裏付けるデータとしてエピジェネティクスの文献(ネットで見つけた)を紹介していた。
ところが、当時、エピジェネティクスが何なのか分かっていなかった。エピジェネティクスが僕の仮説の一部を証明できると理解したのは、ネッサー・キャリーのジャンクDNAを読んだ時(2018年正月)でした。
学会の保守性は宇宙論でも言えます。宇宙論はひも理論など訳の分からない数学(そもそも現実への適用性が担保されていない)と絡めてあと20~50年ぐらいは世の中(特にマスコミ)を騙しながら継続できます(多分)。