早朝から仕事でバタついて……。
でも、なんかジャズモードが戻ってきましたんで、今日は、これを――
■Slavic Mood / Dusko Gojkovic (RCA)
現代ジャズ界の人気トランペッターと言えば、ダスコ・ゴイコビッチでしょう!
と、いきなり決め付けましたが、そのマイルス・デイビス系の歌心の妙、そして時にバリバリと突進するシャープなノリ、さらに重心の低いハードな演奏まで、ジャズ者の琴線を知り尽くした吹奏には、心底、シビレる他はありません。
このアルバムは1975年に欧州で発売されていますが、ちょうどその頃に、我国ではジャズ喫茶を中心として「アフターアワーズ(Enja)」というワンホーン盤が人気を呼んでいました。もちろん日本では、それがあって初めて、ダスコ・ゴイコビッチという聴きなれない名前が、ジャズファンの心に刻まれたのです。
しかし当時の日本では、欧州プレスの輸入盤は簡単に入手出来るものではなく、ましてジャズともなれば、極一部の店にひっそりと入荷しただけだったと思います。
実際、私がこのアルバムの現物を見たのは1980年代に入ってからでした。そして製作年代の割には妙に高値が付いていたので敬遠していたのですが、本音は聴きたい!
その夢が叶って、なんとCD復刻されました♪ それが本日の1枚です。
録音は1975年10月24&25日のローマ、メンバーはダスコ・ゴイコビッチ(tp)、Ben Thompson(ts,ss)、Vince Benedetti(p)、Joe Nay(b)、Andy Scherrer(ds) となっています。そして演目は全てがダスコ・ゴイコビッチのオリジナルです。
ちなみにオリジナルアナログ盤では、トラック「01」~「03」がA面に、「04」~「07」がB面に収録されているようです――
01 Slavic Mood
タイトルどおり、如何にも「東欧」というモードが漂う、重い演奏です。
ダスコ・ゴイコビッチの演奏からは、マイルス・デイビスの「アランフェス」っぽいノリが感じられ、それなりに楽します。またリズム隊のヘヴィなグルーヴも1970年代中期の王道モダンジャズそのもの!
しかし失礼ながら Ben Thompson のソプラノサックスに、イマイチ個性とキレがありません。ちょっと学生っぽいというか……。
それゆえに途中から助け舟のように絡んでくるダスコ・ゴイコビッチが見事というか、上手く山場を作っています。
まあ、あの時代を体験していればニヤリとしますが、今ではどうでしょう、精彩の無い演奏に聞こえてしまうのが、本音ではないでしょうか……。
02 Got No Money
ゴスペルワルツっぽいビートのハードバップですが、意図的にミステリアスな雰囲気を作り出そうとしたのが、やや裏目でしょうか……。
しかし刺激的なキメのフレーズからアドリブパートに入るあたりの興奮度は高く、Ben Thompson も健闘しています。
もちろんダスコ・ゴイコビッチは柔軟でファンキーなフレーズを連発♪ 思わずグッときます。そしてリズム隊は録音の所為か、ややバラけて聞こえますが、各々が熱演で、特にジョー・ナイのヘヴィなベースは、なかなかの味です。
03 No Love Without Tears
出ましたっ! ダスコ・ゴイコビッチが十八番のダークで哀しいバラードの妙技♪
とにかくスローでタメたテーマメロディの歌わせ方だけで、参ってしまいます。
またジョー・ナイのベースが絶妙の絡み♪ この2人は前述の名盤「アフターアワーズ」でも共演していますからねっ♪
あぁ、この1曲だけで、私は満足です。
04 Old Fisherman's Daughter
ダスコ・ゴイコビッチの人気演目のひとつで、マイルス・デイビス系のミュートと歌心が堪能出来ます。ちなみに、これは前述の「アフターアワーズ」でのバージョンが決定版とされていますが、これはこれで、良い味が出ていると思います。
ただしアドリブパートがほとんど無い、テーマ中心の吹奏です。しかしそれゆえに良いという、逆もまた、真なりです。
05 Kosmet
またまた1970年代ノリのモード演奏です。それはもちろん「東欧」がキーワードでしょうか、とにかく聴いているうちに、当時のジャズ喫茶にタイムスリップする感覚に捕らわれます。
ただしダスコ・ゴイコビッチのトランペットからは、温か味が失われることがありません。本当に良いフレーズの連発です!
そして中間では、この頃のお約束的なテンポフリーの展開から、一転して激烈ビートでのサックスが突進という展開にっ! もちろん、その後はドラムスが炎のソロを展開するのでした。
06 East Of Montenegro
ちょっとホレス・シルバー(p) みたいなリズムパターンとメロディを持った曲です。しかも中間部はマーチテンポになったりして変化があります。
したがってアドリブパートでも、そこが待ち遠しい展開です。
相変わらず Ben Thompson のサックスは学生っぽいのですが、ダスコ・ゴイコビッチは流石のハードバップ魂を炸裂させていますし、リズム隊もソツがありません。
07 Flying Rome
オーラスは痛快なハードバップです!
しかも、これまたホレス・シルバー調ですから、たまりません♪
こういう曲では Ben Thompson もボロを出していませんし、リズム隊もバカノリ寸前です。しかしダスコ・ゴイコビッチは、落ち着きを失いません。ソロリと出て、徐々に熱くなっていくという、これが当にベテランの味です。そして終盤のドラムスとの対決では、いきなりマグマの噴出! う~ん、演奏時間が短いのが残念無念です。
ということで、正直いうと、それほどの仕上がりではありません。分離し過ぎている録音にも好き嫌いか分かれるでしょう。オリジナルのアナログ盤を聴いたことはありませんが、マスタリングもまあまあだと思います。
しかし、やっぱり、聴きたいでしょう、なにせ、ダスコ・ゴイコビッチですからっ♪ ズバリ、この人が中心となった演奏ならば、全部OK! というのが私です。
ちょっと贔屓の引き倒しでしょうかねぇ。好きなんだから、今日はご容赦願います。