今年もまた、赴任地でクマが出没して、連日騒動になっています。
私が家を借りている集落では140キロという大きな奴がワナにかかったそうです。また昨日は1頭、射殺されています。
クマにしてみれば山に食べ物が無く、座して死を待つよりはという決死の行動なんで、かわいそうな気も致しますが……。
ということで、本日もトランペット盤です。リーダーは地味ですが、マイルス・デイビス似ということで有名な人です。まあ、味わい深いということで――
■Little Johnny C / Johnny Coles (Blue Note)
ブルーノートはジャズの名門レーベルですが、存在そのものが地味~なアルバムが幾つか作られています。
本日の1枚も、そうした作品でしょう。
主役のジョニー・コールズはマイルス・デイビス系のトランペッターですが、本家よりも上手いということは、失礼ながら言えません。なんとなく同じ味わいがあるというだけだと思います。
ところが、そのジョニー・コールズだけの「味」が、妙にクセになるのが、ジャズの恐いところです。
このアルバムは数少ないジョニー・コールズのリーダー盤としても貴重ですが、メンツが地味~! というか、所謂ツウ好みという点でも面白みがあります。
録音は1963年7月18日&8月9日、メンバーはジョニー・コールズ(tp)、レオ・ライト(as,fl)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、デューク・ピアソン(p,arr)、ボブ・クランショウ(b)、ウォルター・パーキンス(ds)、ピート・ラロッカ(ds) という、味わい深い面々です。
ちなみに2人のドラマーはA面がウォルター・パーキンス、B面がピート・ラロッカとされています。
また演目は「A-2」以外、全てデューク・ピアソンの作編曲によるもので、実質的に現場を仕切っていたのは、この人だったのでしょうか?
A-1 Little Johnny C (1963年7月18日録音)
デューク・ピアソンのピアノがリードする景気の良いブルースで、アップテンポで溌剌としたテーマが、まず最高です。
アドリブパートでも、その勢いを持続して突進するレオ・ライトのアルトサックスがシンプルに素晴らしく、続くジョニー・コールズも簡素なフレーズとマイルス・デイビス似の音色が、何とも言えずにジャズそのものです♪
しかしジョー・ヘンダーソンは違います。短いながら、そのアドリブフレーズはウネウネと微妙に屈折していきます。音色もニャ~という猫の鳴き声を連想させるところがありますねっ♪
またデューク・ピアソンの小気味良いピアノも聴き物でしょう。
A-2 Hobo Joe (1963年7月18日録音)
これだけがジョー・ヘンダーソンの作曲で、曲自体はシンプルなプルースですが、楽しいボサロック調のビートがたまりません。
アドリブパートではジョニー・コールズが最初から奮闘し、ハスキーな音色でしぶといフレーズを綴っていきますが、要所で4ビートが交錯する展開が素敵です。
もちろんデューク・ピアソンも、そのあたりのツボは外しておらず、楽しくシンプルなピアノソロ、またレオ・ライトは幾分せっかちなフレーズばかりですが、その情熱は本物でしょう。
そして作者のジョー・ヘンダーソンは最後に登場し、意想外の落ち着いたフレーズを積み重ねていきます。う~ん、これはどうしたことだっ!? もっと烈しいものを求めているのが、リスナーの本音のはずだけど……!? まあ、いいか……。
A-3 Jano (1963年7月18日録音)
これも、やたらに調子の良いハードバップです。
と言っても、シンプルな音列が繰り返されるだけのモード系なんですが、リズム隊が快適なビートを送り出してくるので、先発のレオ・ライトは素直にノセられて、なかなかの好演です。
続くジョニー・コールズもマイルス・デイビス丸出しになってサービス精神旺盛なところを聴かせてくれますが、その姿勢は潔い限りだと思います。自分が何を期待されているか、分かっているんでしょうねぇ。
そしてジョー・ヘンダーソン! ここではファンの臨む激しさを存分に発揮し、屈折系のフレーズとネクラな叫びのコンビネーションが最高です。
またドラムスのウォルター・パーキンスが素晴らしく、ビシッとしたオカズと煽りの妙技が冴えているのでした。
B-1 My Secret Passion (1963年8月9日録音)
ちょっとマイルス・デイビスの「All Blues」を意識したワルツ調のブルースですから、ジョニー・コールズも自分が何をすればよいのか、完全に分かっている好演です。
ただしテンポが、やや速いのが意図的か否か、逆効果のような……。
ですからジョー・ヘンダーソンも煮詰まり気味だと思います。
しかし続くレオ・ライトがフルートで雰囲気を変えてくれますから、デューク・ピアソンも一安心というところでしょうか、快適なアドリブで場を盛り上げていくのでした。
B-2 Heavy Legs (1963年8月9日録音)
またまた調子の良いハードバップです。
テーマメロディにリズミックなリフが仕込まれているのがミソでしょうか、ジョニー・コールズはそのあたりのツボを押さえて、素晴らしいアドリブを聴かせてくれます。
そしてジョー・ヘンダーソンが珍しくも直球勝負で突進すれば、レオ・ライトは激情のフレーズを撒き散らすのです。
もちろん実質的なバンマスのデューク・ピアソンは、伴奏に、ソロに大活躍! 快適さを演出していきますが、ピート・ラロッカの軽くて変態的なドラムスも聞き逃せません。
B-3 So Sweet My Little Girl (1963年8月9日録音)
オーラスは幻想的なスロー曲です。
ハスキーな音色で迫るジョニー・コールズは丁寧にテーマを吹いていますし、バックをつける他のメンバーのハーモニーも素敵な響きです。
アドリブパートではデューク・ビアソンが一人舞台で美味しいところを独り占めですが、それしか正解が無いという説得力があるのでした。
ということで、リーダーのジョニー・コールズよりも共演者が目立っている雰囲気も感じられますが、それというのも、この人は残念ながら自分だけのキメのフレーズを持っていなかった所為かもしれません。
ちなみに本家のマイルス・デイビスは、幾つかのキメのフレーズと思わせぶりな部分だけで最後まで押し切ったからこそ、偉大なところがありました。誰もがクリフォード・ブラウン(tp) にはなれないわけですから、そいうい「手」を「逃げ」とは言いません。
しかしジョニー・コールズは、そういうところが無垢というか、それゆえに好感が持てるトランペッターなのでした。
このアルバム以外ではエピック盤が有名ですが、機会があれば、このブルーノート盤も聴いてみて下さいませ。調子の良さは天下逸品♪ ジャケットデザインも秀逸だと思います。