OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

道化師

2006-10-06 18:21:42 | Weblog

仕事でトラブルが連続の今日、気分的には暴走したいところですが、これから偉い人の宴会に出るということで、グッと我慢、これ、聴きました――

The Clown / Chaeles Mingus (Atlantic)

チャールズ・ミンガスは偉大なジャズベース奏者という前に、「怒りの」とか「頑固な」という形容詞がついてしまうほど、暴虐的なエピソードが多い人です。

尤もそんな話はジャズ喫茶やそこに置いてあるジャズ雑誌で仕入れたネタで、実際にはどんな人だったのか、知る由もありませんが、このアルバムを聴くと、さもありなんと感じます。

なにしろ蠢いて爆発し、泣いて、また呻くというような演奏ですから!

録音は1957年2月13日&3月12日、メンバーはジミー・ネッパー(tb)、カーティス・ポーター(as,ts)、ウェイド・レグ(p)、チャールズ・ミンガス(b)、そしてダニー・リッチモンド(ds) という、いささかシブイところが集っています――

A-1 Haitian Fight Song / ハイチ人の戦闘の歌 (1957年3月12日録音)
 いきなり無伴奏でチャールズ・ミンガスのベースが蠢きます。それは打ち震えるような繊細な響きから、豪胆な地鳴りのような表現まで幅広く、ついには暗い情念に満ちたテーマメロディを導き出すのです。
 そこでは混濁したホーンセクションの合奏に多重録音が用いられ、リズム隊と意地の張り合いを聞かせてくれます。
 そしてアドリブパートでは、急にテンポが速くなったり、遅くなったりしますが、その度に統制のとれたリズム隊が絶妙のリフやビートを送り出してくるので、乱れるどころかキツイ締めつけから逃れんとするエルネギーが噴出するのです。
 中でも仄かな哀愁を滲ませるウェイド・レグには琴線が刺激されますし、あまり有名ではないカーティス・ポーターのアルトサックスが、意想外に泣きます。
 またチャールズ・ミンガスのベースは親分の貫禄ですし、その代貸しというダニー・リッチモンドは親分の意図を充分に理解したサポートが見事だと思います。

A-2 Blue Cee (1957年3月12日録音)
 ちょっと変則的なブルースですが、個人的にはシンプルな響きが気に入っています。なんと、ウェイド・レグのピアノはカウント・ベイシー調ですからねぇ~♪ 狙ったんでしょうか……? もちろん中身はハードバップですが!
 またカーティス・ポーターは艶やかなジャッキー・マクリーン(as) というか、もちろんセンは細いのですが、なかなか魅力があります。
 そしてジミー・ネッパーはオトボケで迫りつつも、要所でピリッとしたアクセントを入れる好演です。しかも全体に漂う脱力感が絶妙♪ そこがジャズのブルースかもしれません。

B-1 Reincarnation Of A Lovebird (1957年2月13日録音)
 タイトルどおり、バードが愛称だった天才のチャーリー・パーカー(as) に捧げた演奏です。
 出だしからメンバーそれぞれが音のコラージュというか、フリーなフレーズのぶっつけ合いを演じ、哀愁のテーマが導きだされる時には、リスナー皆がその世界の虜になってしまう仕掛けです。
 特にカーティス・ポーターのアルトサックスが泣きながらスローなパートを吹くあたりは、胸が締めつけられるような気分に……。あぁ、かすれたような音色と涙をこらえたフレーズの妙は、最高です!
 またウェイド・レグも哀愁モードが全開♪ 余計な手出しをしないベースとドラムスも分かっています。 

B-2 The Clown / 道化師 (1957年2月13日録音)
 これが非常に芝居がかった演奏で、ジーン・ジェファードという漫談家の語りが入り、予め用意されたシナリオにしたがってバンドのメンバーがそれぞれのパートをこなしているらしいです。
 それは確かにタイトルどおり、サーカスの道化師を模している雰囲気ですし、陽気さと哀しい部分が、音のコラージュで表現されていますが、さて、これがジャズかと自問すると、苦しくなります。
 それでも4分30秒を過ぎた頃からはアドリブの応酬が楽しめます。
 カーティス・ポーターは擬似ハンク・モブレーという風情ですし、ウェイド・レグはマル・ウォルドロンに成り切ったつもりでしょうが、う~ん……。
 しかしジミー・ネッパーが熱演です。多分このアルバムの中では、一番良いところかもしれません。
 とは言え、こんな演奏は嫌いです! もっと素直にやっていれば、快演になったはずなんですが、こういう実験精神がチャールズ・ミンガスの評価を高めているのも、また事実なんですねぇ……。実際、ジャズ喫茶ではこの曲が流れると、お客さんが帰り仕度を始めるのでしたが……。

ということで、最後は???ですが「Reincarnation Of A Lovebird」はノー文句で素晴らしい演奏だと思います。幸いなことにCD時代の今日、ラストのタイトル曲を簡単にすっ飛ばして聴くことが出来ますから、これは冒涜でも何でもなく、好きなジャズを好きなように楽しむ基本と考えて、さしつかえ無いはずです。ホーナストラックの存在も嬉しいところ♪

あぁ、なんだか今日は、自分自身が「怒りの」というモードに入りそうですので、ここまでに致します。

私は決して道化師では無いのだ!

コメント (3)
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