無事にマレー到着です。
それにしても蒸し暑い! 冷房あっても汗びっしょりです。
メシを喰ったりすると、余計に汗が噴出してくるので、冷たいウーロン茶みたいな飲物をカブ飲み状態……。
ということで、本日は逆効果の熱~い、これを――
■Black Vision / David Gazarov (Skip)
David Gazarov については、何も知らない私ですが、名前からしてロシア系のピアニストでしょうか?
それでもこのCDをゲットしたのは、例によって演目とジャケットデザイン♪ 太い態度の本人のポートレートはともかくとして、3面見開きのデジパック仕様が、ねぇ~♪
で、結果は大正解! ガンガン、ビシビシの正統派ピアノトリオ作品でした。もちろんスロー系の演奏では優しくも浮遊感のある表現が♪ 録音も私の好みの歯切れの良さがあります。
録音日は残念ながらジャケットに記載してないのですが、どうやら発売されたのは2000年らしく、私が入手したのは2002年でした。
メンバーは David Gazarov(p)、Chris Lachotta(b)、Keith Copeland(ds) となっています――
01 Lazybird
ジョン・コルトレーンが名盤「ブルートレイン(Blue Note)」で歴史的名演を残しているウルトラ級のハードバップ・オリジナルに、敢然と挑んでいます。
なにしろイントロ初っ端からトリオ全員がブッ飛びっぱなし! バリバリと硬質に迫るピアノ、野太いベース、トニー・ウィリアムスとアート・テイラーを足したようなパワー抜群のドラムスという、全く私好みがビッシリです♪ もうこれを聴いた瞬間、このアルバムは間違い無し! と独り納得してしまったですよ♪
全篇で暴れるドラムスの Keith Copeland が、実に良いですねぇ~♪
02 Like Someone In Love
ビシッと終わった前曲を受けて、フワァ~とテーマを弾き始める David Gazarov ♪ もちろんこれはアルバム構成の詐術なんでしょうが、最高にキマッています♪ テーマをソロピアノで変奏し、ドラムスとベースを呼び込んでからのグルーヴィなノリは、常套手段とはいえ、トリオの躍動感が抜群ですから、たまりません。メリハリがバッチリという、些か古臭い表現がピッタリです。
そしてアドリブパートでは、この有名スタンダード曲のキモと美味しい部分を徹底抽出したような、素晴らしい美メロと仄かなブルースフィーリングが最高に好ましい という、David Gazarov の名人芸ピアノが存分に楽しめるのでした。
03 For My Mom
おぉ、これはキース・ジャレットか!?
と思ってしまうほどに、清涼感溢れる美しい演奏です。しかもあの唸り声が聞こえませんから、個人的にはずぅ~~っと好きです。
まあ、それはそれとして、密かにロックビートを内包したドラムスも繊細ですし、ベースは若干、音程が危なくなっていますが、トリオが一体になったノリが素晴らしいですから、結果オーライだと思います。
う~ん、録音も本当に素晴らしいですねぇ~♪ 終盤のピアノを中心とした盛り上がりも嫌味なく、しかも過激に録られていますから、聴いていてグッと熱くさせられてしまいます。良いなぁ~~~♪
04 Solar
マイルス・デイビスが1950年代に書いた屈折のオリジナル曲なので、ここではビバップ魂全開の力演が展開されています。
そのキモは Keith Copeland のハチャメチャ寸前の暴れ太鼓! ロックを基準とした4ビートという、妙な感想しか書けないですが♪
しかし David Gazarov はマイペースを貫き通し、ロクにテーマも弾かないですから、これが本当に、あの曲? と思うまもなく、トリオは過激なアドリブ地獄に入り込んでいるというわけです。もちろんノリは自然に4ビートへ移行しているんですねぇ~♪
抽象的な仕上がりとはいえ、モダンジャズのエッセンスを濃厚に感じてしまいます。
05 Black Vision
アルバムタイトル曲は、David Gazarov が書いた10分超の大作です。
ゆったりとしたビートの中で、まず Chris Lachotta がアルコ弾きで雰囲気を出し、土人の太鼓のような Keith Copeland の変態ビートの中で、David Gazarov が宇宙空間を漂流するような幻想ピアノに撤していきます。
なんかこのあたりは、英国ジャズのプログレ化という感じになっていきますが、正直言って聴き続けるのが苦痛になったその刹那、妙なスイング感に全体が支配されていることに気づいてしまうという、些か苦しい言い訳のような演奏です。
でも、きっと凄いことをやっているんでしょうねぇ……。
06 Purity
そして前曲のモヤモヤをブッ飛ばすのが、この演奏です。
とにかく猛烈なエネルギー、どうにもとまらない勢いが最高です! これを聴いて熱くならなかったら、ジャズを感じる体質では無いと、暴言吐いてしまいますよっ、私は! あぁ、強烈にドライブしまくるトリオの凄み!
当にハードバップ~モードの極みです。爆発的な Keith Copeland のドラムス、疾走して燃え尽きる寸前の David Gazarov のバリバリビアノ、グイノリに撤する Chris Lachotta のベースも烈しいですねぇ~♪ 最高です!
07 Round Midnight
セロニアス・モンクが書いたモダンジャスそのものという大名曲ですから、この世にジャズがある限り、夥しいバージョンが名演となりうる可能性を秘めているのですが、この新鮮な解釈には、ちょっと脱帽です。
全篇がソロピアノ演奏ですが、テーマのバリエーションから始まって、全体のメリハリやメロディフェイクが素晴らしいの一言です♪
08 Lotus Blossom
これまた私好みの有名スタンダード曲なので、嬉しくなりますねぇ~♪
もちろん David Gazarov はオリジナルに秘められた優しい想いを大切に演奏してくれます。まぁ、ちょっとビル・エバンスになっているところもありますが、硬派なドラムスとベースに支えられ、あくまでも歌心優先に展開されるところは、やっぱり素敵です♪
09 Little Sunflower
フレディ・ハバードが書いた隠れヒット曲で、ハードバップにもフュージョンにも、如何様にも解釈可能という汎用性の高さがキモですから、ひとつ間違えるとイモ演奏になると思うんですが、流石に David Gazarov はハズしていません。
擬似ボサロック調のノリでありながら、音数を切詰めて「間」を活かしていく David Gazarov のピアノタッチとアドリブは、本当に気持ち良いです♪ う~ん、このあたりはアーマッド・ジャマル・トリオの現代版でしょうか? 本当に魅惑のメロディしか出てこないという感じで、とにかく飽きません♪
10 Freedom Jazzdance
さてオーラスは、マイルス・デイビスも取上げた過激系ジャズオリジナル!
もちろん、このトリオは最初っからガンガンに突進していきますが、特に Keith Copeland のドラムスが烈しすぎます! なにせ、ついつい David Gazarov までがフリー系に走りそうになるんですよっ!
しかし、ハッと目が覚めたかのように、中盤でグルーヴィな展開に持っていき、満を持して高速4ビートに導いていくあたりは、流石 David Gazarov の実力発揮の名場面でしょう。
当然、終盤では、Keith Copeland の爆裂ドラムソロが用意されています。ここはスピーカーがブチ壊れそうな音圧で聴きたいですねぇ~~~。
ということで、珍しいほど硬質のビアノトリオ盤ですから、見つけたら即ゲットをオススメ致します。もちろん個人的には、David Gazarov が聴ける他の作品を探しているんですが、どうも……。
こんな凄いピアニストが埋もれているんですから、世界は広いと、今更ながらです。