農水大臣の自殺には仰天!
訃報に対して、あまり言いたくはありませんが、現職大臣の自殺なんて、政治的に行き詰まりが動機だとすれば、国の恥だと思います。
という嘆き節は、これくらいにして、本日はこれで楽しみます――
■Wholly Cats / Buddy De Franco (Verve / Lonehill)
バディ・デフランコは白人クラリネット奏者ですが、レッキとしたモダンジャズ派の天才です。なにしろ、それまでベニー・グッドマンに代表されるスイング派の花形楽器だったクラリネットで、チャーリー・パーカー以降のモダンジャズのフレーズを吹きまくった第一人者ですから!
その豪快でウネリのあるアドリブのグルーヴ、豊かな歌心と緩急自在なノリ、情感と真情吐露が滲み出るスローな表現……等々、どこを聴いても、すぐにバディ・デフランコ♪ と分かる個性派でもあります。
しかし偉大な先人に対する畏敬の念は蔑ろにしておらず、全盛期に録音した企画盤として、ベニー・グッドマンとアーティ・ショウという、偉大なクラリネット奏者の十八番ばかりを演奏したアルバムを出しています。
それはヴァーブというレーベルがお得意のマラソンセッションから、合計5枚のLPに編集され、粋なジャケットに入れられて発売されましたが、それはもちろん録音順序に忠実なものではありません。しかしジャズ者にとっては、セッション毎・録音順に聴いてみたいという欲求が少なからずあり、そこをフォローして発売されたのが、本日ご紹介のCD♪
ですから、ジャケ写は一応「Wholly Cats」が使われておりますが、サブタイトルが「The Complete“Plays Benny Goodman And Artie Shaw”Sessions Vol.1」となっていて、まず2回のセッションから14トラックが収録されております。
ちなみに付属ブックレットには、前述5枚のLPジャケ写も掲載されておりますし、メンバークレジットの謎も解明されています――
★1957年10月29日録音
01 Benny's Bugle (Buddy De Franco Plays Benny Goodman)
02 A Smooth One (Buddy De Franco Plays Benny Goodman)
03 Air Special (Buddy De Franco Plays Benny Goodman)
04 More Than You Know (Wholly Cats)
05 Wholly Cats (Wholly Cats)
06 Goodbye (Buddy De Franco Plays Benny Goodman)
07 Seven Come Eleven (Buddy De Franco Plays Benny Goodman)
メンバーはバディ・デフランコ(cl)、ドン・ファガキスト(tp)、ジョージ・オールド(ts)、ビクター・フェルドマン(vib)、カール・パーキンス(p)、バーニー・ケッセル(g)、リロイ・ヴィネガー(b)、スタン・リーヴィ(ds) という、豪華なオールスタアズです。
演奏曲が、どのLPに収録されたかは、曲目の後に記載しておきましたが、いずれも名曲・名演ばかり♪ スイングスタイルを基本にしながらも、ハードバップ感覚のリズム隊が、まずグルーヴィで最高です。
もちろんバディ・デフランコは全曲で絶好調! チャーリー・パーカー直伝のドライブするビバップフレーズが冴えわたりで、ゾクゾクさせられます。特に初っ端の「Benny's Bugle」はアップテンポで間然することの無いアドリブの嵐です。
また「A Smooth One」では、時代的に粘っこいファンキー感覚までも打ち出していますし、「More Than You Know」や「Goodbye」という、スローな歌物における温かい表現は、クラリネットならではの味を大切にした名演だと思います。
それと全篇のアレンジがさり気なく、好感が持てます。バーニー・ケッセルやビクター・フェルドマンの入れるオカズも良い味ですねぇ~♪ もちろん隠れ名手のドン・ファガキストやジョージ・オールドのシブさ加減も、存分に楽しめるのでした。
★1957年10月31日録音
08 My Blue Heaven (Colsed Session)
09 Stardust (Buddy De Franco Plays Artie Shaw)
10 Cross Your Heart (I Hear Benny Goodman And Artie Shaw)
11 Frenesi (Buddy De Franco Plays Artie Shaw)
12 Medley:Danceing In The Dark - Moonglow - Time On My Hands
(I Hear Benny Goodman And Artie Shaw)
13 Indian Love Call (I Hear Benny Goodman And Artie Shaw)
14 Summit Ridge Drive (Buddy De Franco Plays Artie Shaw)
1日おいてのセッションメンバーは、バディ・デフランコ(cl)以下、レイ・リン(tp)、ポール・スミス(p)、バーニー・ケッセル(g / 08-11)、ハワード・ロバーツ(g / 12-14)、ジョー・モンドラゴン(b)、ミルト・ホランド(ds) という、こちらは些かシブイ面々です。
ここでもオリジナル収録されたLPを記載しておきましたが、実はヴァーヴレーベルの悪しき慣例というか、同じ曲を別なアルバムにダブリ収録するという節操の無さがありますから、こういうセッション毎に纏まった演奏集が必要になるのです。
実際、どのアルバムを買えばコンプリートに演奏を集められるのか、ジャケットやコンパイルを変更した再発が多いヴァーヴは、コレクター泣かせなんですねぇ……。
ちなみに、このセッションのピアニストはジミー・ロウルズという説もありましたが、ここではポール・スミスと断定してあります。
肝心の演奏は、前半に比べるとハードバップ色が少し稀薄になっていますが、その分、お洒落で粋なフィーリングが横溢♪ もしかしたらチェンバロを弾いてるようなポール・スミスやレイ・リンの楽しさ優先のトランペットが、実に良い雰囲気です。
もちろんバディ・デフランコの卓越した柔らかい歌心も、満腹するほどに楽しめますよ♪ このあたりは最初の「My Blue Heaven」で、気恥ずかしくなるほどです♪
それと、お目当ての「Stardust」は、全く期待どおりのアレンジと演奏が展開されて嬉しくなりますし、微妙なロックンロール感覚を盛り込んだ「Frenesi」とか「Indian Love Call」のリズム解釈の面白さは、アドリブパートで一転して熱い4ビートを聞かせてくれるジャズの魅力に溢れていると思います。
あぁ、ジャズは楽しい音楽なんですよぉ~♪
ということで、些か古臭い部分もありますが、それを温故知新で楽しまなければ、はっきり言って損をするという演奏集です。
実を言うと、この2つのセッションの間、つまり10月30日にはもうひとつのセッションが行われていますし、続けて11月1日にも、締めのレコーディングがありました。それらは続くCDの「vol.2」で纏められるそうですから、もう私には必須になりそうです。
いずれにせよ、オリジナル盤は高嶺の花というか、今となっては状態の良い盤に出会える可能性が低くなっておりますので、CDに抵抗の無い皆様には、これをオススメ致します。