OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

自戒と熱気

2007-05-23 17:26:23 | Weblog

大リーグでの日本人選手の活躍、日本プロ野球では交流戦、ゴルフ界には新星登場と、スポーツが大いに盛り上がっているのに、昨日の横綱・朝青龍の失態というか、品格の無さには呆れ果てました。

折りしも某週刊誌では八百長疑惑の核心に触れるような報道があり、ただでさえ実力に疑問符がつけられている横綱が、真剣勝負で負けて本性をムキ出しにするようでは、見苦しい!

なんだ……、やっぱり……。

と思われたら、真剣勝負をウリにしているプロスポーツ団体は終りです。

人のふり見て、なんとやら……。

私も最近、キレる寸前が何度がありますが、やはり冷静さは必要と、自戒しています。

ということで、本日は――

Blue Stroll / Ira Sullivan (Delmark)

シカゴはブルースで有名かもしれませんが、けっこうジャズも盛んな都市です。街の雰囲気もニューヨークほど汚くないし、ロスほどノーテンキでもなく、東京に近い感じでしょうか。

そんな街で発足した「デルマーク」というレーベルは、これまたモダンブルースの秀作を発売していましたが、もちろんモダンジャズでも隠れ名盤を製作しています。

本日のCDは、そんな中のひとつ、「Ira Sullivan (DL-402)」にボーナストラックを付けた再発盤ですが、これが何故、ウラ人気盤かと言えば、ジョニー・グリフィンが参加しているからです。しかも大爆発なんですねぇ~♪

まあ、それは後で触れるとして、まずリーダーのアイラ・サリバンはトランペッターであり、サックス奏者でもあるという、所謂マルチプレイヤーです。しかも独特の歌心とグルーヴを持っているんですから、ジャズ史的には有名ではないけれど、けっこう隠れファンが多いと推察しております。

さて、このアルバムの録音は1959年7月26日、メンバーはアイラ・サリバン(tp,sax,peck-horn)、ジョニー・グリフィン(as,ts,bs)、ジョディ・クリスチャン(p)、ビクター・スプローズ(b)、ウィルバー・キャンベル(ds) とされていますが、このリズム隊はシカゴのローカルミュージシャンとしては過去にスタン・ゲッツのバックも務めていますから、ピカイチの存在だったと思われます――

01 Wilbur's Tune
 如何にもこの時代らしい、ゴリゴリのハードバップです。録音もエグミと埃っぽいところがあって、好ましいですねぇ。
 アドリブパートの先発はジョニー・グリフィンですが、やや調子が出ていません。しかし続くアイラ・サリバンのトランペットからは温か味のあるフレーズが連発され、ジョディ・クリスチャンは硬質なピアノタッチで迫ります。
 そして素晴らしいのがビクター・スプローズのベースです♪ ソロはもちろんのこと伴奏でもグイノリのグルーヴを作り出して、如何にもハードバップです。
 演奏は終盤でドラムスとホーン2人の対決となりますが、これは雑な雰囲気で良し悪しかと……。

02 My Old Flame
 ジョニー・グリフィンが抜けたワンホーン編成で、有名スタンダードが緩やかに演奏されますが、ここでのアイラ・サリバンはバリトンサックスで勝負しています。
 もちろんアドリブパートでは定石どおり、テンポを上げてグリグリのフレーズも吹いていますが、総じて歌心を大切にした好演だと思います。
 またジョディ・クリスチャンも崩れそうで崩れないという、味わい深いアドリブで印象的♪ ちなみにこの人は名前からして女性かと思ったら、CD解説書では「he」が使われていますから、男なんでしょうか?
 まあ、それはそれとして、ラストテーマでのアイラ・サリバンは強烈ですよ。

03 Blue Stoll
 浮かれ調子の楽しいハードバップ曲で、テーマメロディはひとつ間違えるとチンドン屋になりそうです。
 しかしアドリブパートに入ると、まずはジョニー・グリフィンが初っ端から大暴走! するとアイラ・サリバンはトランペットでクール&ファンキーなフレーズを連発です。ソロの受渡しに使われるリフもグルーヴィですねぇ~♪
 そして作者のジョディ・クリスチャンは薬籠中の名演と書きたいところですが、どこかしらぎこちなく……。しかし続くビクター・スプローズのベースが軋みつつ聴かせる最高のソロ♪ それが抜群のコントラストになっているのでした。
 ラストテーマの吹奏は完全ゴスペルです。

04 63rd Street Theme
 これはお馴染み、ジョニー・グリフィンが自作した十八番のファンキーハードバップですから、ここでもスローミディアムでグルーヴィに演奏されます。蠢くビクター・スプローズのベースも実に良く、あぁ、こんなに黒い演奏があるなんてっ!
 ですからアイラ・サリバンのトランペットからも思わせぶりなファンキー節がたっぷりと噴出していますし、リズム隊のバラバラ感もエグイと思います。
 そしてジョニー・グリフィンはヒステリックでありながら、実はじっくりと場の空気を黒くしていくという、恐るべき充実度です!
 さらにビクター・スプローズのドス黒いベース! この人は当時、ニューヨークでも伸し上がっていた若手で、後にはジャズメッセンジャーズにも入団した才人でしたが、こういうブンブンブリブリから歌伴での地味な寄添いまで、堅実にこなすという名手です。

05 Bluzinbee
 このセッションの超目玉演奏です。
 曲は快適なハードバップのブルースですが、20分近い長尺の熱演には凄まじい目論見があって、それはアイラ・サリバンとジョニー・グリフィンが楽器を持ち替えてバトルを繰り広げるという、無謀なものです!
 それにはまず、ジョディ・クリスチャンが露払い的にイカしたアドリブを聞かせます。あぁ、この硬いピアノタッチとフレーズは妙にクセになっちゃいます。
 そして続くバリトンサックスがアイラ・サリバン、するとジョニー・グリフィンがアルトサックスで対抗します♪ バックをつけるリズム隊も異常なほどの熱気です♪ するとアイラ・サリバンは幾分ハスキーな音色のトランペットで素晴らしい歌心を披露! 鋭いツッコミも良いですねぇ~~~♪
 こうなるとジョニー・グリフィンも負けておられず、本職のテナーサックスで猛烈な疾走! 辺りは修羅場と化しますが、それを受けるアイラ・サリバンは、なんと小型チューバのようなペックホーンという秘密兵器で応戦です。あぁ、これがまた、良いんですねぇ~。痙攣するようなフレーズまで繰り出すアイラ・サリバンは、本当に憎めません♪
 さらに続けて飛び出すバリトンサックスは、もちろんジョニー・グリフィンですが、あの「高速グリフィン節」が全く変わらずに放出されるのには吃驚仰天です!
 そして続くアイラ・サリバンのアルトサックスが、これまた痛快です。なんとジョニー・グリフィンのアドリブにそっくりな雰囲気なんですねぇ~♪ これまた吃驚です。
 演奏は大団円でウィルバー・キャンベルのドタバタしたドラムソロになりますが、この熱気と痛快な雰囲気は、ハードバップの核心にズバリと触れた名演だと思います。 

06 Wilbur's Tune (alternate)
 オーラスは冒頭曲の別テイクで、リズム隊の纏まりがイマイチながら、熱気は逆に濃いという感じでしょうか。ジョニー・グリフィンのアドリブも、こっちの方が良い感じです。

ということで、10年前に出たブツなんですが、ハードバップ好きの皆様には特にオススメです。ジャズ喫茶の大音量で聴いたら、中でも「Bluzinbee」には悶絶必至でしょう。

コメント (2)
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