OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

脱力快感盤

2007-05-01 17:36:46 | Weblog

連休の谷間ですが、全く休んでいる会社もありますね。景気が悪くて休むのか、休みたいから休むのは判然としませんが……。あんまり休んでばかりいるのも、どうかと思う、この頃です。

ということで、本日は――

Adam's Apple / Wayne Shorter (Blue Note)

今では元ウェザー・リポート、といった方がとおりが良いウェイン・ショーターですが、もちろん、それ以前にはジャズメッセンジャーズやマイルス・デイビスのグループで堂々のレギュラーとしてバンドに強い影響力を及ぼしていたのは、皆様ご存知のところです。

しかし、そのいずれもが、所謂雇われ稼業だったことを思えば、やはりウェイン・ショーターのリーダー盤を聴くが、その本質に触れることだと思います。

さて、このアルバムは所謂ワンホーン盤で、ウェイン・ショーターが縦横に吹きまくり、尚且つ、ディープな心情吐露に撤した作品だと思います。しかも難しい所なんか全く無いという楽しい1枚なんですから、たまりません♪

録音は1966年2月、メンバーはウェイン・ショーター(ts)、ハービー・ハンコック(p)、レジー・ワークマン(b)、ジョー・チェンバース(ds) という俊英揃いです――

A-1 Adam's Apple (1966年2月3日録音)
 ミステリアスな響きを持った、如何にもウェイン・ショーターらしいジャズロックですが、ハービー・ハンコックのコード弾きのイントロも妙にカッコイイですし、レジー・ワークもジワジワと蠢いて、不気味です。
 しかし演奏そのものの楽しさ、ファンキーさは本物ですし、ウェイン・ショーターのアドリブも単純なフレーズの積み重ねと、ここぞで出してくるキメの連続ワザが冴えまくり♪ けっこう事前に考え抜いていた疑惑も濃厚です。
 またハービー・ハンコックがノーテンキに弾んでいますねぇ♪ こういう自然体とウェイン・ショーターの深い企みが、なんともいえない快感を生み出していると思います。

A-2 502 Blues (1966年2月24日録音)
 またまたミステリアスな雰囲気の変則ブルース! この仄暗いムードがウェイン・ショーターのテナーサックスの音色とピッタリ合っていると感じますが、何と作曲が Jimmy Rowles くクレジットされています。
 う~ん、それにしても脱力しきったアドリブソロと芯の強いリズム隊のコントラストが良いですねぇ~♪ ゆるやかなテンポなんですが、ダレません。
 そしてハービー・ハンコックが十八番の繊細な感情表現で、おぉ、マイルス・デイビスが出てきそうな!

A-3 El Gaucho (1966年2月24日録音)
 出ましたっ! この変態ボサロックの名曲は、もちろんウェイン・ショーターが書いたものですが、メロディラインそのものよりも、リズム隊の快演があってこその名曲という気がします。
 あぁ、こういうのを敲かせるとジョー・チェンバースは本当に上手いですねっ♪ この人はバリバリの新主流派ドラマーという定評がありますが、その内実にロックビートがあるのがミソだと思います♪
 そしてアドリブソロではウェイン・ショーターの煮え切らなさが最高で、何を吹きたいのか意味不明というフレーズの繋がりと、刺激的なリズム隊が織り成す楽しさが、もう最高ですねっ♪

B-1 Footprints (1966年2月24日録音)
 マイルス・デイビスのバンドでも録音され、ステージでも定番演目になっていた大名曲ですが、これがオリジナルバージョンです。
 もちろん力強い4ビートで演奏されていますが、どこかしらロック的に聞こえてしまうのは、私の気の迷いでしょうか……? リズム隊のグルーヴが素晴らしい限りなんですねぇ~♪
 肝心のウェイン・ショーターはテーマメロディの変奏を主体にしながらも、少しずつ烈しい心情吐露に移行し、リズム隊と対峙していきます。そこには無駄なフレーズが全く無いという素晴らしさ♪
 またハービー・ハンコックは、ちょっと調子が出ていない雰囲気もありますが、独自のノリを大切にしたアドリブソロは流石! 中盤からジョー・チェンバースが早い4ピートを敲いたりしますが、幻惑されることが無いのは、優等生すぎるかもしれません。
 するとレジー・ワークマンが、どっしり構えたベースソロから、あの定型リフを弾きだすという名人芸を聞かせてくれるのでした。
 
B-2 Teru (1966年2月24日録音)
 ウェイン・ショーターが書いた幻想的なスロー曲です。もちろん普通一般のメロディではなく、アドリブの延長のようでもあり、煮詰められた美しさでもあるという、とにかく身も心もまかせて聴く他は無い演奏になっています。
 まあ、そのあたりが苦痛と言えばそのとおりなんですが、一端ウェイン・ショーターの魅力の虜になってしまうと、こういう苦行が快楽に変わってしまうんですねぇ。
 個人的にはウェザー・リポートでジョー・ザビヌルの多彩色のキーボードとデュオで演じて欲しいと思うことが度々です。
 つまりリズム隊も頑張っているのですが、ちょっと違和感があるというか、ウェザー・リポートを知っていると、そう思わずにはいられないという……。

B-3 Chief Crazy Horse (1966年2月24日録音)
 ジョー・チェンバースのラテン系ポリリズムが冴えた演奏です。
 この手の曲は、エルビン・ジョーンズ&ジョン・コルトレーンという雰囲気なんですが、ウェイン・ショーターは全く別なアプローチに撤しています。それは反シーツ・オブ・サウンドというか、ひとつの音を大切にしてフレーズを作り出し、アドリブ全体を構築していくかのようです。
 またリズム隊が良いです。特にハービー・ハンコックのアドリブパートからジョー・チェンバースのドラムソロに至る展開は、グワッと盛り上がっていますよっ!

ということで、それほど派手なアルバムではありませんが、楽しさと脱力感がいっぱいです。それはサウナの後の虚脱的快感に近いかもしれません。冷えたビールが欲しくなります。

また後年のウェザー・リポートを知っていると、この演目の再演を望みたくなります。思えばウェザー・リポートだって、ウェイン・ショーターのワンホーン体制ですからねぇ~。

ちなみに私のウェイン・ショーター初体験は、もちろんウェザー・リポートでした。あぁ、なんか急激に聴きたくなりましたです。

コメント
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