今日も暑かったですねっ。
仕事場では一足早く、クールビスを奨励しています。
というか、点検で冷房が使えなかったのが真相ではありますが。
ということで、本日は熱くて痛快な――
■Cannonball Enroute / Julian Cannonball Adderlly (Mercury)
モダンジャズはアドリブが主体の音楽なので、個人芸という趣が強いが故に、ロックと違って、なかなかレギュラーのバンドというのが維持出来ません。
逆に言えば、ジャズメッセンジャーズとかデイブ・ブルベックのカルテットとか、そういう名門バンドを率いていた者は、ジャズ的な実力と人望&マネージメントの才覚に恵まれた天才と言えるかもしれません。
本日の主役、キャノンボール・アダレイもそのひとりで、フロリダからニューヨークに出てきた時から一躍注目を集めた天才アルトサックス奏者です。そして生涯の大部分をリーダーとして過ごした凄い人です。
しかしその歩みは決して順風というわけではなく、本格デビュー直後から結成したバンドはレコードの売行きも芳しくなかった所為もあって、1年半ほどで活動停止に追い込まれています。
そして結論から言うと、キャノンボール・アダレイはマイルス・デイビスに雇われる事になります。そして再び独立し、ファンキー&ソウル路線のバンドを率いて人気を獲得するのですが、だからと言って、最初のバンドの演奏が劣っていたわけではありません。
本日の1枚は、当にそうした中の傑作盤!
録音は1957年2月と1958年3月、メンバーはキャノンボール・アダレイ(as) 以下、実弟のナット・アダレイ(tp,cor)、ジュニア・マンス(p)、サム・ジョーンズ(b)、ジミー・コブ(ds) という、今では夢のオールスタアバンドです――
A-1 A Foggy Day (1957年2月6~8日録音)
イントロは理路整然としたアレンジになっていますが、キャノンボールがリードするテーマ・メロディは開放的なジャズの喜びに満ちています。そして再び、イントロのリフが入って始まるアドリブパートでは、もちろんキャノンボールがパワー全開!
このドライブ感、この野放図なファンキーさには脱帽です!
すると一転、ナット・アダレイはミュートでマイルス・デイビスの世界に近づいていきます。ただし中盤以降は兄譲りの陽気なノリが出ますから痛快です。
リズム隊もタイトで快適なビートを送り出してきますので、軽く聴いていても楽しめる演奏だと思います。
A-2 Hoppin' John (1957年2月6~8日録音)
いきなりアップテンポで弾けるジュニア・マンスとリズム隊の凄さ! それに導かれて襲い掛かってくるアダレイ兄弟のリフから、もちろんアドリブ先発はキャノンボール! これがまた強烈な凄さです!
何と言うか、暴風の中でリッターバイクを疾走させているような、猛烈な勢いなんですねぇ~。一瞬の弛みもありません!
ですから続くナット・アダレイも正統派の吹奏で、この人はやっぱりディジー・ガレスピーを基本としているのが分かります。
そしてジュニア・マンスが、これまた快演です。しかもパウエル派の早弾きの中に、ちゃ~んと独自のファンキー感覚を打ち出しているんですねぇ~♪
さらにクライマックスではジミー・コブ対アダレイ兄弟の対決があって、ジミー・コブのタイトで力強いドラムスが存分に味わえるのでした。
A-3 18th Century Ballroom (1957年2月6~8日録音)
ちょっと優雅でファンキーな不思議な味わいがある隠れ名曲ですが、なんと作曲が、あの名ピアニストのレイ・ブライアントとナット・アダレイになっています。リズム隊の動きもアレンジが入っているようですが、弾むような雰囲気がたまりません♪
そしてアドリブパートでは、まず先発のナット・アダレイがクール&ファンキーにキメると、キャノンボールはウネリの強いフレーズで兄貴の貫禄を聞かせてくれます。続くジュニア・マンスのピアノも、独特のハネたところが良い感じですねっ♪
A-4 That Funky Train (1957年2月6~8日録音)
サム・ジョーンズのベースとジミー・コブのドラムスがファンキー&ゴスペル感覚に蠢くイントロから、ゾクゾクさせられますが、続けて入ってくるジュニア・マンスとアダレイ兄弟の雰囲気の良さも最高という、黒~いハードバッブです♪
そして先発で蠢くサム・ジョーンズの軋みのベースソロが素晴らしく、続くジュニア・マンスのピアノもブルースの塊です。
またナット・アダレイのミュートもタメとツッコミのバランスが、これぞモダンジャズですねぇ~♪ なかなかの名演かと思います。
うっ、リーダーのキャノンボールのソロが出ないで終わるのかっ!
それもあり!? と妙に納得してしまうのは、リズムがあまりにも素晴らしいからでしょうか……。
B-1 Lover Man (1957年2月6~8日録音)
天才チャーリー・バーカーが色々な意味で歴史的な演奏にしてしまった名曲ですから、同じアルトサックス奏者のキャンボール・アダレイがどんな演奏をしているか? 大いに気なるトラックということで、私はジャズ喫茶でこのアルバムを最初にリクエストしたのが、このB面でした。
で、ここでは最初からファンキーなアレンジが施されていますが、テーマからアドリブまで、ほとんどがキャノンボールの真摯な吹奏による一人舞台! 忽ち、暗く情熱的な歌心を聞かせるアルトサックスの魅力の虜になってしまいます。
B-2 I'll Remember April (1958年3月8日録音)
これも有名スタンダード曲ですが、このバンドの猛烈な演奏には心底参ってしまいます♪ テーマ演奏終了から、待ってましたとばかりにアドリブに邁進するキャノンボールの瞬発力は最後まで衰えず、シャープで豪快なリズム隊のツッコミにも屈しません。
ちなみにキャノンボールは、このセッションの直後にブルーノートで名盤「Somethein' Eles 」を録音していますから、その好調さは言わずもがな! そう思って聴くと、ナット・アダレイがマイルス。デイビスに聞こえる瞬間さえありますが、すぐにディジー・ガレスピー直系のスタイルに逆戻りしますから、痛快です。
あぁ、それにしてもジミー・コブのドラムスは最高です♪
B-3 Porky (1957年2月6~8日録音)
アダレイ兄弟が合作した楽しいファンキーオリジナル♪
アドリブ先発では、ナット・アダレイがまたまたマイルス・デイビスをやってしまいますが、ジミー・コブのドラムスがあるが故に、ますますそう聞こえてしまうんですねぇ~。しかし今回はリー・モーガン風もやっていますから、憎めないです。
そしてリズム隊のグルーヴィな雰囲気は天下一品! 思わずノセられてしまうキャノンポールもウキウキしているのでしょう、短いながらも鋭くうねるアドリブソロは、余人に真似が出来ないところだと思います。
B-4 The Way You Look Tonight (1957年2月6~8日録音)
これも有名スタンダードで、定石どおりにアップテンポの激烈演奏を聞かせてくれます。しかもテーマ部分の2管の絡みが素直に凄いんですねぇ~♪
もちろんアドリブパートも明るく楽しく烈しいという全日本プロレスモード! こういうストレートな演奏こそが、ジャズの本質かもしれません。
ということで、全篇が痛快な演奏ばかりですが、聴き通すと少しばかり飽きが来るかもしれません。
実はこのアルバムは、セッションから大分時が流れた1961年中頃に発売されたようです。つまりお蔵入りしていた演奏の寄せ集め的な性格があるのです。
しかし演奏そのものは極上のトラックばかりですから、本当にスカッとしますよ。
ちなみに前述したように、キャノンボール・アダレイはレコード会社との軋轢もあって、上手く行かなかった自己のバンドを解散させ、ジミー・コブと一緒にマイルス・デイビスのバンドに雇われるのですが、マイルス・デイビスはキャノンボール兄弟がニューヨークに出てきた時から契約はブルーノートを勧めていたそうですから、渡に舟だったでしょう。
邪推すれば、以前から目をつけていたジミー・コブを欲しいがために、キャノンボールを入れたとするマイルス・デイビスの目論見か!?
まあ、そんな妄想も楽しいというのが、このアルバムの聴き方かもしれません。