マレーの某ホテル、宿泊の部屋にはヤモリが出没しています。壁や天井に張り付いたり、スリッパの中に潜んでいたり……。けっこう、何匹もいるんですよ。
こんな時、猫がいたら、ヤモリ退治に大活躍してくれると思うんですが……。
まあ、明日は帰国出来そうなんで、やれやれです。
ということで、南国の宿では、こんなん聴いてました――
■Arching / Olivier Antunes & Jesper Lundgaard (Music Mecca)
Olivier Antunes は私のお気に入りのピアニストで、どうやらフランス生まれのデンマーク育ち(?)らしいのですが、そんなことは、どーでもよいでしょう。
とにかく清涼感のあるピアノタッチ、優しい歌心、しかし硬派な一面もあって、安易に妥協しない姿勢に好感が持てます。
このプログでも既に取上げた「This Is Uncle Al / Jesper Thilo」とか「Eugene Pao & Mads Vinging Trio」ではサイドメンとして素晴らしい力量を発揮して、私のハートを鷲掴みにしたんですねぇ~♪
このアルバムは2005年9月に録音されたCDで、ベテランのベース奏者=Jesper Lundgaard とのデュオで通した小気味良い仕上がりになっています。しかも演目が、これまた素敵――
01 Giv mig Gud en salmetunge
02 The Old Country
03 Jeg ser de bogeluse oer
04 Come Sunday
05 Reunion Blues
06 Estate
07 Lad det klinge sodt i sky
08 It's Me, Oh Lord
09 Mit hjerte altid vanker
10 Tit er jeg glad
11 Hjerte, loft din glaedes vinger
12 Autumn Leaves
13 Kirken den er et gammelit hus
14 Hymn To Freedom
15 I Danmark er jeg fodt
有名曲に混じって、たぶんデンマークあたりの民謡とか童謡、流行歌が取上げられていますが、いずれも琴線にふれまくりという美メロのテーマが素敵です。もちろんアドリブしていく2人は、時に絡み合い、信頼しあっての男の世界です。
「強くなければ生きられない、優しくなければ生きている資格がない」というチャンドラーの世界にも通ずるハードボイルドな部分さえ感じられます。
しかし基本は安らぎ追求でしょう♪ 和みの世界がトータル67分36秒、繰り広げられ、仄かな余韻も心地良いという、ほのぼの盤になっています。
もちろんジャズ本来のスリルとサスペンスも抜かりなく、ナット・アダレーが書いて、今や哀愁ジャズの決定版となった「The Old Country」は期待通りの快演ですし、夏の終りの失恋のような「Estate」もジンワリと効いてきます。
またお目当ての「Autumn Leaves」はスローな出だしから自由なサポートに撤するベースとのコンビネーションが最高で、自然体のグルーヴが良いですねぇ~♪
気になるオスカー・ピーターソン関連の2曲「Reunion Blues」と「Hymn To Freedom」は、ちょっと爽やか過ぎるというか、軽い雰囲気が優先されていますが、全体の流れの中では正解でしょうか……。個人的には、もっとグイグイ・ドロドロにやって欲しかったのですが、まあ、それでもモダンジャズのお手本のようなフレーズが次々に飛び出すという仕掛けは痛快です。
民謡関連の曲では、なんといっても冒頭の「Giv mig Gud en salmetunge」が泣きそうになるほど胸キュンなテーマメロディ♪ もちろんアドリブパートでテンポを上げて綴られる美メロの涼風には、何度聴いても、やられます♪ ちょっとクラシック系のピアノタッチも実に良いですし、ベースの Jesper Lundgaard の妙技には、このアルバム全体の良さが保証されていると思います。
そしてオーラスの「I Danmark er jeg fodt」も、不思議にせつない名曲です。ちょっと欧州キリスト教会音楽のようでもあり、静謐な気分にさせられてしまうんですねぇ~。
しかし、この素敵な演奏集にも欠点があります。それは、あまりに快適すぎて、マジ聴きしていると飽きてしまうという……。
ですから、これは所謂ながら聴きが一番♪ お洒落なカフェとか旅先のホテルとか、あるいは日常的な自宅でのブルーな朝にも最適です。
気分はロンリーでも、爽やかな心持を求めて間違いない、これは素敵なアルバムです。