はははっ、高野連のお偉方が文部大臣から苦言を♪
流石の文部大臣も、今回ばかりは世間並みの思考になっていたというか、当たり前の事を言って、感心されるんですから、高野連も罪が深いというか……。
ということで、本日は――
■Deligtfulee Morgan / Lee Morgan (Blue Note)
名盤・人気盤が多いリー・モーガンのアルバム中、これも飛びっきりの傑作です。
これが製作・発売された1960年代後半という時代は、はっきり言ってジャズはロックやR&Bに押され気味でしたが、ジャズはジャズなりにフリーとかジャズロックに活路を見出して、欧州や日本ではカッコイイ音楽であり続けていました。
特に日本ではジャズ喫茶という独自の文化がありましたから、このアルバムもそこから生まれた人気盤だったと思います。と言うのは、このアルバム自体が1970年代に入ると入手困難になっていたからです。もちろん日本盤もなかったと思います。
そのあたりは、ハンク・モブレーの「ディッピン(Blue Note)」と境遇が似ておりますし、また内容の快楽性とか痛快さも、然りです。
録音は1966年4月&5月、メンバーは演目によって異なります。
まず4月のセッションでは、リー・モーガン(tp)、ウェイン・ショーター(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ボブ・クランショウ(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) を核として、数名のブラス&リード奏者が加わっており、アレンジはオリバー・ネルソンが担当していますが、あえて「数名」と書いたのは、この部分のメンツに諸説があるからです。
そして5月のセッションは、リー・モーガン(tp)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ボブ・クランショウ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) というお馴染みの面々です――
A-1 Ca-Lee-So (1966年5月27日録音)
ラテンビートを使ったリー・モーガンの楽しいオリジナルです。
まず息の合ったリズム隊が作り出すイントロ、それ続くテーマが最高にウキウキしてきます♪
アドリブパートでは先発のリー・モーガンがオトボケとスリルを上手く融合させた絶妙の展開を聞かせるという、流石の名演です。もちろんタメとツッコミの「モーガン節」が溢れんばかりの躍動感ですねぇ♪
するとジョー・ヘンダーソンも、噴出し笑いのようなスタートから少しずつ自分のペースに持ち込んで、独特のウネウネクネクネ♪ ちょっと気持ち悪いほどの妙演だと思います。
しかしマッコイ・タイナーは生真面目です。ラテンビートの楽しさを追求しつつも、けっしてテーマから外れようとしないあたりは、如何にもいう感じで、憎めません。
もちろんビリー・ヒギンズ&ボブ・クランショウは、この手のブルーノート・セッションではお馴染みの快楽追求型のリズム隊として、ここでも秀逸です。
A-2 Zambia (1966年5月27日録音)
これもリー・モーガンのオリジナルで、新主流派を装ったハードバップになっています。刺激的なテーマが黒っぽいですね。
しかしアドリブパートはスピード感に溢れた展開となり、まずジョー・ヘンダーソンが本領発揮のウネウネ節! 高音部では猫の鳴声のような得意技を披露し、低音部ではタイトな音使いで好調さをアピールしています。
もちろんリー・モーガンも負けじと大ハッスル! こちらも十八番のフレーズを淀みなく繰り出して、場をダレさせません。ビリー・ヒギンズの調子の良いドラムスも最高です♪
またマッコイ・タイナーは当時、ジョン・コルトレーン(ts) のバンドを辞めた直後で、しかも急に仕事が無くなっていた苦闘時代に突入……。その所為でしょうか、ここでは何とか活路を見出そうとしているような、なかなか必死さが滲み出ていると感じます。
A-3 Yesterday (1966年4月8日録音)
ビートルズの、というよりも地球音楽の代表として説明不要の名曲に、オリバー・ネルソンがイナタイ様なアレンジを施し、リー・モーガンが朗々と吹きまくった快演です♪
あぁ、このテーマ吹奏の屈託の無さ! アドリブパートの潔さは居直りではなく、唯一無二の素晴らしさだと思います。背後を彩る分厚く柔らかいブラス&リードの響きも良いですねぇ♪
しかもウェイン・ショーターが、また実に良いんです。意味不明のフレーズの連なりから、突如、断片的に浮かび上がるテーマメロディの美味しさが、もう最高です♪
それとマッコイ・タイナーの意外な物分りの良さも侮れません。個人的にはマッコイ・タイナーにはラムゼイ・ルイス(p) の路線も「有り」だったかなぁ……、と思う瞬間まであるのでした。
B-1 Sunrise, Sunset (1966年4月8日録音)
これもオリバー・ネルソンのアレンジが入った演奏で、哀愁のテーマが力強く変奏され、なかなかハードバップな仕上がりになっています。
アドリブパートでは、まずウェイン・ショーターが妥協しない姿勢を貫いておりますが、楽しさも忘れていません。続くリー・モーガンも同じ路線を踏襲していますので、全体としてはちょうど良い塩梅でしょうか。
その中でマッコイ・タイナーは精一杯の力演! フィリー・ジョーのドラムスも違和感ギリギリで、好感が持てます。
B-2 Nite Flite (1966年5月27日録音)
私が大好きなリー・モーガンのオリジナルで、痛快至極なハードバップです。テーマメロディに秘められた仄かな暗さとミステリアスな黒っぽさが最高なんです♪
もちろんアドリブパートも素晴らしく、まずはリー・モーガンが絶好調! するとジョー・ヘンダーソンが、ミョウチキリンな変態節を連発してくれます。
あぁ、ビリー・ヒギンズのビシバシのドラムスとの相性が、如何にもブルーノートです♪ マッコイ・タイナーもジョン・コルトレーンのバンド時代のような音符過多なスタイルで突進するんですから、たまりません。終盤でボブ・クランショウのツッコミにシドロモドロになって、ラストテーマに戻るあたりのバンドの勢いは微笑ましい限りです♪
B-3 The Delightflu Deggie (1966年5月27日録音)
ちょっとした思わせぶりから始まるリー・モーガンのオリジナル曲で、アフロっぽい哀愁のテーマがジンワリと泣かせます。
このあたりは先発でアドリブを展開するウェイン・ショーターにとっても、百も承知というか、地味ながら、全く薬籠中の名演になっています。
もちろんリー・モーガンは、ウネリのあるリズム隊と一体化した素晴らしいグルーヴと絶妙のアドリブ展開です! 最後に余韻を残してマッコイ・タイナーにバトンタッチするあたりも、上手いですねぇ~♪
そのマッコイ・タイナーにしても、これは待ってましたのお膳立てだったのでしょう、短いながらも、後のアフロモード演奏に近い出来を示しています。しかも膨らみのあるグルーヴまで生み出しているのですから!
それはもちろん、ラストテーマをさらに味わい深いものにしているのでした。
ということで、これは聴き易くて骨のある作品だと思います。
リー・モーガンという人は天才だけあって、どちらかと言うとムラっ気が目立つ演奏も少なからず残していますが、このアルバムに関してはノー文句でしょう。
ちなみにCD時代に再発された時にはボーナストラックが幾つか入っていたようですが、持ってないのでご容赦願います。友人の話では、それもけっこう良い演奏みたいなんで、ちょっと気になってはいるのですが……。
ご存知のように、リー・モーガンは1972年に衝撃的な死を迎えています。そして、このアルバムあたりを聴いていると、来たるぺきフュージョン時代にどんな演奏をしてくれたか、想像しては悲喜こもごも……。
シャレの効いたアルバムタイトルとジャケ写の大らかさが、なんともいえません。