実家に帰ってもノンビリ出来ないのは、何故なんだっ!
もう、いい加減にしてもらいたいんですがねぇ……。
そこで憂さばらしに、こんなDVDを大音量で鑑賞しています――
■Stockholm 1964・Antibes 1960 / Eric Dolphy (Impro-jazz)
あまりにも良い仕事ばっかりしてくれる Impro-jazz から、またまた歓喜悶絶のブツ!
なんとエリック・ドルフィがチャールス・ミンガスのバンドに雇われていた時代の映像です! しかもバド・パウエルと共演した奇跡のステージまでもが納められています!!!!!
もちろん映像はモノクロですが、おそらく初DVD化じゃないでしょうか!?
で、内容は前半が1964年の欧州巡業からオスロでの演奏ですが、これはリハーサル時にテレビ放送用に収録されたものでしょう。時間は30分弱です。
そして後半が、1960年のフランスはアンチーブジャズ祭でのライブで、これは1曲だけですが、バド・パウエルがゲスト出演♪ 音源だけは公式発売されていますが、映像はウルトラ級のお宝です――
★1964年4月13日、オスロ
メンバーはジョニー・コールズ(tp)、エリック・ドルフィ(as,fl,bcl)、クリフ・ジョーダン(ts)、ジャッキー・バイヤード(p)、チャールス・ミンガス(b)、ダニー・リッチモンド(ds) という、ミンガスバンドが全盛期の顔ぶれです――
01 So Long Eric (First Version)
ガランとした劇場内のステージで、テレビ用に集められたセッティングですから、椅子に座ったメンバーもいるわけですが、まずサングラスをかけたチャールス・ミンガスの凄みに圧倒されるでしょう。
演目は当時の定番だったグイノリのハードバップですが、いろいろと即興的な仕掛けが施されていますから、油断ならないスリルが満点です。音だけの演奏は多く残されていますが、実際の映像が付いていると、あぁ、ここはこんな風にやっていたのか! と目からウロコ♪
そしてアドリブパートでは先発のジョニー・コールズがマイルス・デイビスそっくりさんを軽く演じ、ジャッキー・バイヤードからクリフ・ジョーダンにバトンタッチ! さらにミンガス親分が短くも凄みのあるベースソロ! まあ、このあたりはメンバー紹介を兼ねているようなところもあります。
しかし次に登場するダニー・リッチモンドがエキセントリックなやけっぱちドラムス! ギョロ目の表情とニヤリの笑いからは、ラリルレロ疑惑も漂いますが、続けて出るエリック・ドルフィーのアルトサックスは、メッチャ、カッコイイ驚愕のブレイク! するとダニー・リッチモンドが素っ頓狂な叫び声! いやはや、気持ちは分かりますけど、キメすぎじゃ~~~。これには流石のミンガス親分も苦笑い♪ 全ジャズファンが必見という、最高の名場面だと思います!
全体では2分半ほどの演奏ですが、あまりのインパクトの強さに悶絶させられますよっ♪
02 Meditaions
幻想的でエキセントリックな演奏ですが、なんとスタートした直後にミンガス親父の指示で一端停止! グチャグチャと雑談&打ち合わせがあって、演奏が再スタートするという、なかなかの内幕が楽しめます。
で、まずはエリック・ドルフィーがヒステリックで浮遊感に満ちたフルートを披露♪ 背後を彩るバンドメンバーの緻密な演奏も流石です。
さらにアドリブパートではバスクラリネットに持ち替えたエリック・ドルフィーが、これまた熱演です。あぁ、こんなことやってたら、若死にするようなぁ……。そんな思いを強くしてしまうのが哀しいところですが、本当に渾身の激演なんですねぇ。
また逆にクールにキメるジョニー・コールズは、マイルス・デイビス顔負けの思わせぶりに撤して、好感が持てます。あぁ、動くジョニー・コールズが見られるなんてっ!
それと映像的な面白さとしては、前曲に続いてヤバイ表情のダニー・リッチモンドが咥えタバコを落としたりするのは、ご愛嬌♪ 反対に短くなるまでタバコを指から放さないジャッキー・バイヤードは熱くないのかっ!? ギシギシの伴奏でメンバーを翻弄しまくりですがっ!
その点、クリフ・ジョーダンは物分りが良いというか、バンド全体のバランスを大切にした正統派ブローには安心感がいっぱいです。黒人っぽい極小サングラスも妙にカッコイイですねぇ。
演奏は大団円で、またまたエリック・ドルフィのバスクラリネットが大爆発! それに引張られてバンド全体が混濁していく展開に、ミンガス親分もニンマリです。
それと途中で倒れてきたシンバルを直すエリック・ドルフィの姿は、映像作品ならではの楽しみでしょうね。
03 So Long Eric (Second Version)
これは冒頭曲のロングバージョンです。
まずミンガス親分のベースソロがリードしてテーマに入っていくところで、すっかり虜になってしまうでしょう。あぁ、このジャズ的なスリルとサスペンス♪
アドリブパートでは、ジョニー・コールズが坊主頭にギョロ目の風貌ながら、またまたマイルス・デイビスの物真似をやってくれますが、いゃ~、実に良いですねぇ♪
続くクリフ・ジョーダンも、なかなかにブッ飛んだフレーズを連発していますが、やや無理している雰囲気でしょうか……。
しかしエリック・ドルフィーのアルトサックスは自然体で猛烈に咆哮します。緩急自在というか、異次元浮遊というか、全身全霊、渾身のアドリブは圧倒的なのでした。
それとここでもダニー・リッチモンドがキレまくり! 最後に敲くだけ敲いて叫んだあげく、演奏を放り出していく様が圧巻です!
★1960年7月13日、アンチーブのジャズ祭
このパートは約14分半で、画質もイマイチですが、バド・パウエルが出ていますから貴重♪ もちろん素晴らしい演奏です。
メンバーはテッド・カーソン(tp)、エリック・ドルフィ(as)、ブッカー・アーヴィン(ts)、バド・パウエル(p)、チャールス・ミンガス(b)、ダニー・リッチモンド(ds) という、これも凄い顔ぶれですねぇ~~~。
04 I'll Remember April
ビバップの定番曲ですから、バド・パウエル以下のメンバーも手馴れた部分があるかもしれませんが、しかし演奏は圧倒的です。
テーマに続いてのアドリブパートでは、まずバド・パウエルが全く鍵盤を見ず、例の唸り声をあげながら「パウエル節」を全開させます。もちろんそれは、全盛期の凄みには及びませんが、ミンガス親分とダニー・リッチモンドの真摯な伴奏もあって、流石の輝きが随所に聴かれます。
というか、なによりも動くバド・パウエルというだけで圧巻でしょう。
ホーン陣では、まずテッド・カーソンが温故知新の熱演です。
するとエリック・ドルフィーは唯我独尊のエキセントリック節! 基本はビバップながら、全く自分だけの世界に没頭していくのですが、そこで天空を仰ぐバド・パウエルの姿がインサートされる編集映像には感動させられます!
さらに続けてブッカー・アーヴィンとエリック・ドルフィの壮絶バトルが展開されるんですから、もはや歓喜悶絶するしかありません。
う~ん、ブッカー・アーヴィンの動く映像というのも、ウルトラ貴重ではないでしょうか!? この人は、どちらかというとスロースターターなんで、最初はエリック・ドルフィーに押され気味なんですが、後半ではアクの強さを発揮してブリブリギンギンに場を盛り上げていきます。しかも映像を見て初めて分かったんですが、ほとんどアクション無しに過激なフレーズを吹いているんですねぇ~! あぁ、この人も若死にしてしまうのが……。
ということで、これは本当に掛け値なしに凄い演奏&映像集です。
画質も前半はAランクですし、後半は少しボヤケも感じられますが、音質は問題無しですから、皆様にはぜひともご覧いただきたいと、サイケおやじは心からオススメ致します。
もちろん「リージョンフリー」ですよ♪