なんだか今日は急激に寒くなりました。
またガソリンが高くなりましたですね。懐も寒くなります。
ということで、本日は熱~いアルバムを――
■秋吉敏子 in Japan (東芝)
我国が世界に誇る女性ジャズピアニストの秋吉敏子が、昭和45(1970)年の大阪万博で行ったコンサートのライブ盤です。
秋吉敏子という存在は、当時の日本では今ほど有名ではなく、それは本場アメリカを中心に活動していたこと、つまり日本を離れたところで、全然メジャーではない音楽のジャズをやっていたわけですから、その間にエレキブームやGSブームがあった我国では、すっかり忘れられた存在だったというのが、本当のところでしょう。
所謂、知る人ぞ知るでしょうか。
実は私も、リアルタイムの当時は中学生だったこともあり、秋吉敏子の存在は知りませんでした。それがテレビの芸能ニュースだったか、あるいはニュース映画だったか、とにかく万博でジャズのコンサートがあって、そこに秋吉敏子という女性ジャズピアニストが本場でバリバリの超一流メンバーを引き連れて出演したのを知りました。
へぇ、こんな凄い人がいたのかぁ!?
そして高校生になって生意気にもジャズ喫茶に通い出した私の前に現れたのが、その万博でのライブ盤でした。
録音は1970年8月18&19日、メンバーは秋吉敏子(p,arr)、ルー・タバキン(ts,p)、ボブ・ドハーティ(b)、ミッキー・ロッカー(ds) という本格派カルテットです――
A-1 Opus No. Zero
秋吉敏子のオリジナルで、緩急自在のアグレッシブな演奏です。
テーマメロディには哀愁も漂ったりして日本人好みなんですが、アドリブというか全体の構成が容赦無い雰囲気で、テンポが激烈に速くなったり、またアレンジされた部分と即興のパートが烈しく交錯したりします。
秋吉敏子のアドリブも新主流派~フリーに近いもので、とにかくバリバリにイキっぱなしです。あぁ、これを初めて聴いた時の私は、本当に驚愕させられました。つまり女性ピアニストということで、もっとムード系の演奏かと思いこんでいたのです。
バックのベースとドラムスも全く手加減しないどころか、必死で彼女についていくという感じですからねぇ~!
またテナーサックスのルー・タバキンが、これまた凄い! 時代的にはジョン・コルトレーン系のスタイルが主流になっていたわけですが、ここで聴かれるルー・タバキンはソニー・ロリンズというよりも、もっと古いコールマン・ホーキンス直系のモリモリグイグイの狂騒スタイルで、ガンガンに押しまくりです。あぁ、これも凄く新鮮でした! この物凄いスピード感とボリューム!
それはミッキー・ロッカーの爆裂ドラムソロに繋がり、突如、哀愁のテーマメロディが飛び出す大団円♪ ルー・タバキンのテナーサックスが仄かなキャバレーモードになるのも良い感じです。
演奏はどうやら編集が入ったような感じというか、中途半端に拍手が聞こえてフェードアウト気味に終了するのが???ですが、とにかく圧倒的!
A-2 Sweet And Lovely
本来は安らぎ系のスタンダード曲ですが、ここではグイノリのハードバップ仕立♪ 初っ端からルー・タバキンのテナーサックスが烈しく咆哮します! しかもベースとドラムスがビンビンバリバリに大ハッスルですから、たまりません。演奏が進むにつれ、修羅場と化していくステージに、秋吉敏子もブチキレの烈しいコード弾き!
あぁ、どうにもとまらないルー・タバキンの大暴走は、ソニー・ロリンズを聞いている以上にスカッとします! と不遜な気持ちになるほどに痛快なのでした。
まあ、とにかく聞いてみて下さいませ! 私は嘘は申しません!
そしてリズム隊だけの演奏になっては、ボブ・ドハーティの野太いベースが豪快なアドリブを展開し、そこに絡むミッキー・ロッカーの抜群のリズムセンス♪ もちろん延々と続くルー・タバキンとの丁々発止にも熱くさせられます♪
まさに大熱演です!
B-1 Long Yellow Road
秋吉敏子の代表的な名曲! これが出ないとステージは収まりがつきませんが、ここではまず、ミッキー・ロッカーのドラムソロからスタートする部分にテープを使用したエコーのような効果音が使われています。
こういう試みは当時としても、かなり進歩的だったように思いますが、賛否両論でしょう。演奏もフリーっぽいような展開が続きます。
しかしそれは、あの印象的な哀愁のテーマを導くための、素晴らしいお膳立て♪
ルー・タバキンはクレイジーに咆哮し続け、秋吉敏子は4ビートながらも意味不明なフレーズばっかり弾いています。まあ、こういう展開とか演奏のスタイルは、当時の常套手段というか、如何にも1970年のジャズです。
そしてラスト1分を切ったところで、ようやく出るんですよっ、あのテーマがねっ♪ なんて感動的なんでしょう♪ 観客も唖然として拍手している様が、しっかりと記録されているのでした。
ということで、とにかく大熱演ばっかりです。特に「Sweet And Lovely」は激烈!
そして秋吉敏子という女性が、こんなに凄いジャズ演奏家というよりも、女だったのか! と仰天させられた鮮烈な記憶が、このアルバムを聴く度に蘇えります。
いやいや、こんなタメグチきいちゃ、いけませんね。女性蔑視というわけでもないんですが……。
機会があれば、ぜひとも聴いていただきたい、これは傑作盤と断言致します。ちなみにかなり以前にCD化されていていましたが……。復刻熱望です。