OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

明日は我が身……

2006-10-21 18:16:55 | Weblog

昼近く、近所の幼馴染が救急車で運ばれました。

脳梗塞か? ずいぶん酒が好きだったからなぁ……。

う~ん、面会謝絶……。

どうやら危篤状態ということで、本日は休載致します。

ご容赦下さい。

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フュージョン4ビート

2006-10-20 18:05:01 | Weblog

何かのきっかけで、ある日、突然に聴きたくなる盤があります。

これも、私にとってはそんな1枚なのですが――

Friends / Chick Corea (Polydor)

1970年代末のジャズ喫茶では人気盤であり、後にシーンを転換させた新伝承派の4ビート回帰現象の地ならしをしたアルバムです。

リーダーのチック・コリアは、ご存知のとおり、1970年代前半に自己のバンド「リターン・トゥ・フォーエバー」を率いてフュージョンブームを現出させた張本人ですが、その同じ人物が、今度は4ビートに率先して戻ろうと画策したのですから、いやはや、なんともです。

しかし内容は文句無しにジャズの本質を突いた傑作でした。

録音は1978年1月、メンバーはジョー・ファレル(ts,ss,fl)、チック・コリア(p,elp)、エディ・ゴメス(b)、スティーヴ・ガッド(ds,per) という、所謂ワンホーン編成というところが興味深く、ベースがアコースティックというのも、ミソでした――

A-1 The One Step
 ふらりっ、と演奏を始めるエレピとべースが妙に心地良い出だしから、スティーヴ・ガッドの生硬なドラムスが、これまた不思議とマッチしています。
 またエレピと生ベースという組み合わせが、フュージョン全盛期では心憎いばかりです。なにしろ基本が4ビートなので、ジョー・ファレルがソプラノサックスで奔放なアドリブソロを演じると、ジョン・コルトレーンの世界になってしまうところを、これが阻止しているわけですねぇ~。
 そしてチック・コリアは、自分のパートに入ると、グッとテンポアップしてエレピを弾きまくるのですが、全体に漂う爽やかな風みたいなノリは大切にしています。今思うと、それがフュージョン時代の4ビートならではの風情だったのかもしれません。

A-2 Waltz For Dave
 タイトルどおりワルツテンポの柔らかな曲です。
 ここでのチック・コリアは生ピアノ、ジョー・ファレルはフルートで妙技を聞かせますが、背後で躍動するスティーヴ・ガッドのブラシが意想外の健闘で、当時、愕いたものです。ただしステックになると、シンバルがスイングしていません。
 しかしエディ・ゴメスが屋台骨をしっかりと支えていますし、幾分軽い、その音色と、スティーヴ・ガッドのドッシーンとしたビートが、上手く噛合っていると思います。 

A-3 Children's Song #5
 不安感に苛まれるような短い曲で、これは次への繋ぎというところでしょう。

A-4 Samba Song 
 A面のハイライト曲で、タイトルどおりにラテンのリズムを徹底して分解再構築しつつ、どこまでもハードな演奏が続いていきます。
 そのキモはスティーヴ・ガッドの爆発的なドラムスで、ここではスイングしないシンバルを捨て、スネアとタム、バスドラのコンビネーションで勝負する、変態セカンドラインが強烈!
 ですからアドリブパートでは先発のジョー・ファレルがテナーサックスで本領発揮の全力疾走! ハードバップ~モード、さらにジャズロック~ブラックファンクのノリまでゴッタ煮状態で、リスナーを圧倒します。
 そしてチック・コリアは生ピアノで、圧巻のアドリブを展開し、本来スイングしないはずのスティーヴ・ガッドのシンバルを逆にリードして、猛烈な4ビートのグルーヴを発散させるのですから、たまりませんねぇ~♪
 もちろんその陰には、エディ・ゴメスの基本に忠実なベースがあるわけです。スピート感に満ちたウォーキングと超絶技巧のピチカートソロは、軽い音色ではありますが、それがチック・コリアやスティーヴ・ガッドと烈しく対峙していくあたりは、本当に爽快です!
 演奏はクライマックスで厳しい仕掛けが用意されており、バンド全員の息をもつかせぬアンサンブルとスティーヴ・ガッドの爆裂ドラムソロが、死ぬほど凄い大団円になっています。

B-1 Friends
 さて、B面は軽いラテンビートの楽しい曲でスタート♪ ジョー・ファレルのフルートがこよなく素敵ですが、初めて聴いた時は渡辺貞夫か? と思った記憶が今も鮮烈です。 
 またここでもスティーヴ・ガッドの変形セカンドラインが素晴らしく、ややハスキーなジョー・ファレルのフルート、仄かに暖かいチック・コリアのエレピが、ますます冴えています。

B-2 Sicily
 これもスティーヴ・ガッドのドラムスが冴える、チック・コリア節が満載の名曲・名演です。この控えめなマイナー調が、琴線にふれるんでねぇ~♪
 しかしアドリブパートは、ジョー・ファレルのフルートを筆頭にハードに展開され、途中テンポを落としてエディ・ゴメスのベースソロを導くあたりは、やや音程が危なくなっていますが、チック・コリアが十八番のキメでしょう。
 またラストテーマからの脂っこい展開も、このバンド特有のノリで、血が騒いでしまいます。
 
B-3 Children's Song #15 
 これも繋ぎの演奏という短さですが、個人的には妙に気になります。

B-4 Cappucino
 そしてオーラスは、初っ端から正統派4ビートを演じてしまいます。
 う~ん、このスイングしないスティーヴ・ガッドのシンバルは、なんとかならんのか! と思っていると、プログレみたいなキメのアンサンブルが始まり、アドリブパートでは、いつしかエディ・ゴメスのベースソロが始まり、スティーヴ・ガッドもスネア主体のドラミングに方針転換しているので、興奮させられます。このあたりは全盛期のイエスのような雰囲気も♪
 しかしジョー・ファレルがソプラノサックスで、そんな雑念妄想をブッ飛ばしてくれるんですから、痛快です。それはもちろん、ジョン・コルトレーンの魂が大切にされていますが、さらに新しい感覚が入っているので、スティーヴ・ガッドの煽りにも負けず、チック・コリアの意地悪な伴奏にも耐えて、猛烈に爆発する素晴らしさです。
 そしてチック・コリアは生ピアノで大奮戦! モードやフリー、ジャズロックまでも包括した強烈さですから、背後で暴れるスティーヴ・ガッドさえも、グウのネも出せない恐ろしさです。痛快!

ということで、これはハードで楽しいアルバムです。一時のジャズ喫茶では連日、鳴りっ放しという有様でした。なにしろ基本が4ビートですから♪

しかし一部では、エディ・ゴメスのベースの軽さが指摘され、またスイングしないスティーヴ・ガッドのシンバルがダメとされました。

個人的にも、確かにそのとおりだと思います。

ですが、チック・コリアがスタンリー・クラークでは無く、エディ・ゴメスをあえてここで抜擢したのは、長い目でみれば大正解でした。なにしろロックビートに走りたがるメンバー中、誰よりもジャズビートを大切にしていたのが、この人でしたから!

スティーヴ・ガッドがモロジャズの世界で真価を発揮できたのも、それゆえのことです。そしてこの2人が、後にステップスで一世を風靡していくのもムベなるかなです。

おそらくジャズの歴史的名盤になる日も近いのでは……?

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心豊かなピアニスト

2006-10-19 17:36:24 | Weblog

最近、イジメの陰湿な事件が多く、いろいろと考えさせられます。

何よりも愕くのは教師や教育委員会の勘違い! 生徒を導く側に心の豊かさが欠如しているとしか思えませんねぇ……。

そこで本日は心が豊かになる、この1枚を――

Jazz On Broadway / Paul Smith (Vertical Jazz)

ジャズの世界はテクニックばかりでなく、創造力と個性が無いと認められません。上手いだけではリーダー盤を作れない、個性重視の世界なのですが、それを逆手とったというか、クセが無いのが個性という優れたピアニストが、ポール・スミスだと思います。

その芸暦は1940年代からレス・ポール(g) のサイドメンとして名を上げ、ビックバンドからスタジオの仕事まで多岐に渡る演奏は、決してジャズ一筋ではありません。

そして1950年代になると自己のバンドを率いての活動が多くなり、それはフルートやギター、クラリネット等を加えた、お洒落なアンサンブルがウリのイージー・リスニング調でしたから、広く一般大衆に人気がありました。

それは日本では想像もつかないほどで、1960年代になるとエラ・フィッツジェラルドの伴奏者となって世界巡業していても、スタア歌手と同等、あるいはそれ以上の拍手を貰っていたことは、いろいろなライブ盤や映像でも明らかです。

もちろん実力は本当に大したもので、抜群のテクニックと余裕の演奏は聴いていてリラックスしすぎるほどですから、その素敵なリーダー盤は、日本のジャズ喫茶では、ほとんど無視状態でした。

しかしジャズ魂は本物です!

このアルバムは比較的最近出たもので、録音は2000年5月、メンバーはポール・スミス(p)、Jim De Julio(b)、ジョー・ラバーバラ(ds) というトリオ編成♪ ポール・スミスのビアノは相変わらず歌心と余裕に満ちていますから、技術的に難しいフレーズを弾いていても、嫌味になっていません。

むしろ聴いているうちに和んできて、心が豊かになってきます。

共演者では、やはりビル・エバンスの晩年のトリオに抜擢されていたジョー・ラバーバラが流石ですねっ♪ 私はこの人の入っている盤は無条件で入手するほどのファンですが、ハズレが無い、保証書のようなドラマーです――

01 My Favorite Things
02 Spring Can Really Hang You up the Most 
03 I Could Have Danced All Night
04 Where or When
05 I Got Rhythm
06 Falling in Love With Love
07 Hello, Young Lovers
08 I've Got You Under My Skin
09 Surrey With the Fringe on Top
10 On a Clear Day

演目については、いちいち述べるまでも無い、全てが金太郎飴状態の好演ばかりです。ご想像どおりの、スマートでリラックスした音がたっぷり詰まっています。

個人的には静謐でゴージャスな雰囲気に満ちた「Spring Can Really Hang You up the Most」や「Where or When」の温か味のある表現に惹かれます♪

また「I Got Rhythm 」での意外なガチンコぶり、「On a Clear Day」の遊び心にもグッときますねぇ♪

最近、人気の若手ピアニスト=ビル・チャーラップがお気に入りの皆様にも、オススメ致します。

イブシ銀なんて言葉は似合わない、当に熟練の熱いハートと物分りの良さを併せ持った、素敵なピアニストがポール・スミスだと思います。

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続ユーゴのジャズ

2006-10-18 18:34:55 | Weblog

ちょっと気が早いとはいえ、もうそろそろ、年末の宴会芸を考えねばなりません。

毎年、「ひとりジミヘン」とか「不良番長」じゃ、顰蹙になっていますからねぇ……。ギター侍もやったんですが、ウケがイマイチでした……。

ということで、そんな事を思う現在の幸せを大切にしつつ、本日は――

Meeting In Studio 2 (RTB)

昨日に続いてユーゴのジャズです。

まあ、好きなんですから、ご勘弁を♪ 内容が本当に秀逸なんですよ! もちろんこれも日本でCD復刻されたものですが、オリジナルはウルトラ幻の10吋盤で、現在3枚シリーズになっていますが、この「2」が個人的には一番気に入っています。

録音は1961年3月4&5日、製作の「RTB」とはユーゴの国営放送局のことです。

メンバーはフランスから訪れたジャック・ディーヴァルのクインテット=ジャック・ディーヴァル(p)、ベルナール・ヴィテ(flh)、フランソワ・ジャノー(ts)、ジャック・ヘス(b)、アート・テイラー(ds) に、地元の俊英=プレドラグ・イワノビッチ(tp) とエデゥアルド・サジル(ts) が加わったジャムセッション形式ながら、非常に纏まりのある演奏ばかりです――

01 Pennies From Heaven
 初っ端からドラムスとベースにピアノが加わってグルーヴィな雰囲気が提示され、有名なスタンダード曲が和んで演奏されます。
 テーマをリードするエデゥアルド・サジルのテナーサックスはデクスター・ゴードンとハンク・モブレーの中間の様な好ましいもので、我国の松本英彦という雰囲気もあります。
 続くベルナール・ヴィテはクールなクラーク・テリーという趣で、ちょっとマイルス・デイビスにもなっていますし、フランソワ・ジャノーは当時バリバリのジョン・コルトレーン!
 おまけにプレドラグ・イワノビッチはミュートトランペットで、完全にマイルス・デイビスになっていますから、たまりません。
 演奏はこの後、フロントのホーン陣が入り乱れてのバトルとなりますが、リズム隊が力強く安定しているので、終始、素晴らしい展開が崩れません。ちなみにドラムスのアート・テイラーは、ハードバップ期に本場アメリカで大活躍した名手で、この頃から頻繁に欧州へ出稼ぎしていた記録が、これです。
 あぁ、それにしてもアレンジもほどよく刺激的ですし、欧州でもマイルス・デイビスとその一党の影響が如何に強かったか、窺い知れるのでした。

02 Moonlight In Vermont
 スタン・ゲッツの演奏があまりにも有名なスタンダード曲を、ここではプレドラグ・イワノビッチがミュートトランペットでクールに、そして暖かく歌い上げてくれます。
 それはもちろん、マイルス・デイビスの影響が色濃いものですが、ハリー・スウィート・エジソンの味さえも感じられます。

03 Gloria
 これは前曲からのメドレー形式でスタートするムーディなスロー曲で、エデゥアルド・サジルのテナーサックスが太く逞しい部分からサブトーンの魅力まで、当に王道の響きをたっぷりと聴かせてくれます。
 う~ん、やや古いスタイルですが、いつまでも聴いていたい歌心に満ちていますねっ♪

04 Theme No.4
 ここからはオリジナル盤ではB面となり、ジャック・ディーヴァル・クインテットの演奏となります。
 これはアート・テイラーのハードなドラムスが導く楽しいハードバップのブルースで、アドリブ先発のベルナール・ヴィテが完全にマイルス・デイビス♪ 続くフランソワ・ジャノーは、もちろんジョン・コルトレーンという、当時第一線のスタイルを絶妙にコピーしていますが、憎めません。
 リズム隊ではジャック・ヘスのベースがワイルドにドライヴしていますし、アート・テイラーは言わずもがなのタイトなビートを送り出しているのですから、演奏は白熱していくのでした。
 それにしても、こんな演奏がブラインドフォールド・テストで出題されたら、誰も当てられないでしょうねぇ……。ジャック・ディーヴァルのピアノはセロニアス・モンクがビル・エバンスしたような、これも憎めないスタイルですから♪

05 My Birthplace
 リズム隊だけの演奏で、ちょっとドビッシー風のイントロ~テーマが魅力的です。
 ジャック・ディーヴァルはクラシックとジャズの両刀使いらしく、なかなか洒落たスタイルを聴かせてくれますねぇ♪ テンポの選択も好ましく、ストライド~ビバップ、さらにはモード~クラシックと様々なスタイルをゴッタ煮にして聴き手を飽きさせないのは、流石だと思います。

06 Bon Voyage
 締め括りは粋なモダンジャズになっています。
 まずジャック・ディーヴァル中心のお洒落なビアノトリオが雰囲気を作り出し、ベルナール・ヴィテのフリューゲルホーンが優しく歌い、フランソワ・ジャノーはコルトレーンになっていますが、それはそれとして、アート・テイラーの強靭なリズムに支えられた快演になっています。

ということで、当時の欧州ジャズも、やはりマイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン、そしてセロニアス・モンクの影響下にあったことが分かります。

参加ユーゴ組は、当時、国内でジャズが冷遇されていたにもかかわらず、反共ラジオ放送から流れるアメリカのジャズを熱心に聴いてコピーしていたとか! それを完全に自己の表現にしようと奮闘している様が、ここに記録されたのは幸いでした。

私は同じユーゴ人ジャズメンのダスコ・ゴイコビッチというトランペッターが大好きですが、そのマイルス・デイビスに似ている演奏スタイルが、なにもこの人だけでなかったという事実! とりわけプレドラグ・イワノビッチのミュート・トランペットには、あまりにもズバリと核心を突かれて、ドギマギしてしまいました。

機会があれば、ぜひとも聴いてみて下さいませ。ニヤリとして和みますよ♪

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ユーゴのジャズ

2006-10-17 17:35:24 | Weblog

さて世界は某国の核実験によって、どうにもキナ臭いものが漂いはじめています。

実は私は以前、ボスニア紛争の折にドイツで、避難民が集っているキャンプを訪れたことがありますが、悲惨の一言でした……。

そこで本日は、その国で製作された幻の1枚です――

Meeting In Studio (RTB)

私の大好きなトランペッターのダスコ・ゴイコビッチは、良く知られているようにユーゴスラビア人で、この人の実力はジャズの歴史に残るはずです。ということは、その故国のジャズシーンも非常に充実したものであろうと、推察出来ます。

しかし残念ながら、1980年代後半までは、ユーゴスラビアも含めて、欧州ジャズの実態に触れることは、非常に困難を極めました。しかも諸情勢によってユーゴスラビアの存在が否定される等の動きもあったのです。

ところがバブル期になって、当時の貴重盤が経済力さえあれば聴けるようになったのですから、罪作りです。

しかし救いの神は、必ず現れるというか、本日の1枚は超幻のユーゴスラビア・ジャズシーンを記録した、オリジナルは10 吋盤の復刻CDです。

録音は1960年6月16日、メンバーはボスコ・ペトロビッチ(vib)、ダボール・カイフェス(p) というユーゴ組に加えて、ジェローム・リチャードソン(ts,fl)、ジュリアス・ワトキンス(frh)、バディ・カトレット(b)、ジョー・ハリス(ds) というアメリカ組の共演セッション♪

ちなみにアメリカ組は、当時、欧州巡業中だったクインシー・ジョーンズ楽団からのピックアップメンバーです――

01 Two Songs
 快適なテンポで繰り広げられるソフトバップです。
 つまり柔らかな曲調とアレンジがウエストコースト風でありながら、ビートは黒くて強いビバップという、なかなか好ましい演奏です。
 アドリブの先発はダボール・カイフェスのピアノが良い感じ♪ 続くジェローム・リチャードソンのテナーサックスはハードスイングで、可もなし不可もなしでしょう。
 しかしボスコ・ペトロビッチのヴァイブラフォンは、硬質なファンキー・フィーリンクがたっぷりです。
 そして、それを受け継ぐジュリアス・ワトキンスのフレンチホルンが、これまた妙なスイング感なんですねぇ~♪
 リズム隊のドラムスとベースは新しい感覚ではないのですが、フロント陣に影響されたか、なかなかの好演だと思います。

02 Way In Blues
 ジェローム・リチャードソンのオリジナル曲で、無機質なファンキー・フィーリングが絶妙、というか如何にも1960年という解釈になっています。
 アドリブパートではバディ・カトレットのベースソロに続いて現れるジュリアス・ワトキンスのフレンチホルンが、かなりファンキーです。
 またボスコ・ペトロビッチのヴァイブラフォンもクールで熱く、ミルト・ジャクソンの味わいを脱色したようなフレーズが素敵ですねぇ~♪
 しかしジェローム・リチャドソンが、何を勘違いしたか、妙に古臭いノリに終始してしまうんですよ……。まさか自作のお手本がこれっ、ということは、無いでしょう……。もっと新しい感覚で良かったのでは無いでしょうか?
 なにしろダボール・カイフェスのピアノが引張るリズム隊が、素晴らしいですからねぇ~♪

03 Minor Flute
 タイトルどおりにジェローム・リチャードソンのフルートが活躍する、ミディアムのハードバップです。そして、このマイナー調を大切にして、絶妙のソロを聴かせてくれるのです♪ う~ん、素晴らしい♪
 淡々としたリズム隊のグルーヴも懐が深く、ジュリアス・ワトキンスも深遠な世界を表現しようと苦悶するあたりが、琴線に触れます。
 またダボール・カイフェスのピアノは、ここではビル・エバンス調というか、如何にも欧州のミュージシャンらしいコードの使い方が、新鮮です。
 それとバディ・カトレットのベースソロの背後で絶妙な余韻を漂わせるボスコ・ペトロビッチのヴァイブラフォンが、最高のスパイスですねぇ~♪ なんか映画音楽のようです。

04 Night In Tunisia / チュニジアの夜
 モダンジャズでは定番曲なので、ここには各人のアドリブソロで実力の優劣を判定する楽しみがあります。
 テーマからのブレイク、そして先発のアドリブはボスコ・ペトロビッチのヴァイブラフォンで、これが王道一直線の素晴らしさ! クールで熱いフレーズとノリは楽しい限りです。
 またジュリアス・ワトキンスは本場の底力を発揮していますし、ダボール・カイフェスのピアノも健闘していますが、ジェローム・リチャードソンが、無難過ぎて面白くありません。
 しかしそれを救うのがジョー・ハリスとのソロチェンジ♪ う~ん、演奏時間が短いのが残念至極です。

ということで、オリジナル盤はトラック「02」を境にAB面が分かれているようです。

そして個人的にはアメリカ組より、ユーゴ組に心惹かれてしまいますねぇ~。このシリーズは他に2枚出ていますが、いずれもジャズ者の気を惹く作りになっています。

しかも今回の復刻は、オリジナルジャケットに忠実な紙ジャケット仕様! たまりませんねぇ~。あのバブル期、どうしても手が出なかった高嶺の花が、復刻物とはいえ手元で聴けるこの幸せ♪ 大切にしたいものです。

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アルトの熱いやつ♪

2006-10-16 18:04:28 | Weblog

秋晴れの爽やかな天候が続いていますから、体力的にも情熱系の演奏に耐えられるようです。

というか、体がそういうものを欲しているような……♪

そこで――

Soul Eyes / George Robert & Phil Woods (Mons)

昨日のソフトなアルトサックスから一転、本日は情熱のアルトサックス・バトル盤を聴きました。

主役はジョージ・ロバートという、何処の国の人かは知りませんが、とにかく白人で、実は正直言うと、共演のメンツと演目に惑わされて買ったCDです。

録音は2000年5月10日、スイスでのライブセッションで、メンバーはジョージ・ロバート(as)、フィル・ウッズ(as)、ケニー・バロン(p)、ルーファス・リード(b)、アルヴィン・クイーン(ds)! このクレジットを見て震えないジャズ者はいないと思われますが、演目も最高なんです――

01 Alone Togehther
 哀愁系の人気スタンダード曲が熱く、熱く演奏されています。
 テーマをリードするジョージ・ロバートにフィル・ウッズが絡むという構図も美しいのですが、それにしてもジョージ・ロバート本人のスタイルが、共演した巨匠と酷似しています。
 で、先発のアドリブソロがフィル・ウッズ♪ 相変わらずタフに吹きまくっていますが、往年に比べると音色がやや、細くなっています。そして、それゆえにジョージ・ロバートとの判別が難しくなっているのです。
 ただし猛烈なドライブ感は健在ですから、ご安心下さい。
 リズム隊ではケニー・バロンのピアノがやはり熱くて上手く、アルヴィン・クイーンのドラムスもハードパップの真っ只中!
 そしていよいよ登場するジョージ・ロバートは、フィル・ウッズばかりでなく、さりげなくキャノンボール・アダレイやディビッド・サンボーンあたりのフレーズまでも取り込んで、情熱のアドリブを聴かせてくれます。ただし、ややノリが性急なのが若気の至りでしょうか。
 演奏はこの後、ルーファス・リードのアルコ弾きを経て、ジョージ・ロバートが先発でドラムスとのソロチェンジ♪ フィル・ウッズの余裕が光りますが、まあ、これは顔見世の小手調べというところでしょうか、それでも充分に熱くなれます。

02 Kin Tama
 ちょっと日本人にはドキリっとさせられるタイトルですが、作曲はジョージ・ロバートの猛烈なハードバップです。
 イントロからスピード感満点に2本のアルトサックスが絡み合い、テーマに入ってもウラにオモテに縦横無尽な展開がビバップ色!
 そしてアドリブパートでは先発がジョージ・ロバート、続いてフィル・ウッズの順で、情熱の吐露と泣きじゃくりの掛け合いが繰り広げられますが、それは若さにまかせてヒステックになるジョージ・ロバートに対し、余裕で多彩なフレーズを連発するフィル・ウッズは流石という、本当に楽しい演奏です。
 もちろんリズム隊にも破綻は無く、流麗でタイトなビートには安心感がありますし、ケニー・バロンのビアノはソロに伴奏に、とにかく炸裂モードで爽快です。
 最後のソロチェンジにドラムスが参入するのは、お約束♪

03 Blues For C.T.
 ジョージ・ロバートが書いたミディアムテンポのブルースで、如何にも白人らしいファンキーさがあり、和みます。
 ここでのアドリブ先発はフィル・ウッズで、往年に比べれば音色に力みが感じられますが、ツボを押さえたフレーズが多く、やっぱり上手いですねぇ~♪
 続くケニー・バロンのピアノも安らぎ狙いのフレーズが多く、個人的には、もう少しファンキー色を出して欲しかったところ……。
 そしてジョージ・ロバートは、モロにフィル・ウッズというか、それよりもジーン・クイルの味で勝負しています。もちろん黒っぽさよりも、激情のモード的展開とでも申しましょうか、とにかく泣いて、叫んで、ドライヴしまくりの名演だと思います。あぁ、これにはフィル・ウッズも、ニンマリしながら、心中穏やかではないでしょうねぇ♪

04 I'm Confessin'
 リズム隊だけの演奏ですが、ネタが楽しいスタンダード曲なので、初っ端からケニー・バロンがストライドピアノでテーマを変奏したり、一人舞台で大活躍♪ さらにドラムスとベースを従えてのパートに入っても、和みの姿勢を崩さないあたりに好感が持てます。
 もちろん演奏が進むにつれて、それはハードバップ~モード風の展開になるのでした。 

05 Soul Eyes
 マル・ウォルドロンが書いたネクラの名曲を、ジョージ・ロバートがじっくりと歌い上げます。もちろんそこには、フィル・ウッズのフレーズが頻発されますので、一瞬、どちらが吹いているのか疑心暗鬼にとらわれるほどですが、とにかく音色の若々しさからして、ジョージ・ロバートがメインで吹奏していると思われます。
 そして流石はアルバムタイトルにしただけあって、素晴らしい出来栄えですねぇ~♪ ほどよい情熱の発露、原曲に潜むシミジミとした情感が、とても熱い演奏に集約されています。
 リズム隊も流石のサポートで、何気なく聴いていて、思わず惹き込まれてしまいます。多分、フィル・ウッズは参加していないと思われますが……。

06 Cannonization
 オーラスは、タイトルからして、多分キャノンボール・アダレイに捧げられたと思われるファンキー・ハードバップです。
 イントロからアルヴィン・クイーンがゴスペルピートを敲き、2本のアルトサックスが絶妙のユニゾンと絡みを聴かせてくれますから、先発でアドリブに突入するジョージ・ロバートは、最初っから出来上がっているようです。
 実際、そのアドリブは魅力的なフレーズの連発ですし、熱き心の吐露、絶妙なタメとモタレがファンキーで新しい!
 するとフィル・ウッズは、いきなり「ワークソング」のテーマを流用してアドリブを始めるのですから、もう、たまりません♪ しかしこれが、アッという間の短さなんですねぇ~。まったく憎いことをやるもんです。
 またケニー・バロンがバカノリです! 俺はファンキーだって大好きなんだよぉ~、と告白のフレーズがドンドン出てきます。ただし、ここも短いのが残念であります。まあ、ラストテーマの楽しさで帳消しでしょうか。

ということで、歴史的な傑作盤にはなれそうも無い演奏集ですが、これも日常的ハードバップ中毒者には必須の1枚かもしれません。

なにしろ演奏が熱いんですからっ!

そしてジョージ・ロバート、この人についても気になる存在ということで、いろいろと音源漁りをしていますので、機会があれば、またご紹介しようと思います。

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気ままな暮らし

2006-10-15 18:06:32 | Weblog

秋の夜長は意外と短い!

歳を重ねる毎に、そんな風に感じていますが、とにかく大切にしたい和みの時間には、これを聴いています。気ままな暮らしは、あこがれです――

Easy Living / Paul Desmond (RCA)

元祖ソフト&メローなアルトサックス奏者のポール・デスモンドが、RCAのに残した最後のアルバムです。

それゆえに録音時期が1963~1965年、幾つかのセッションからの寄せ集めで構成されているものの、全曲の相方が天才ギタリストのジム・ホール!

しかも何故かジム・ホールの出来が素晴らしく、ほとんどこの人のリーダー盤のような趣を成しています。穿った解釈をすれば、それゆえにお蔵になっていた演奏を集めたのかもしれません。

とにかく私は、自分のレコード棚のジム・ホールの場所に、このアルバムを入れるのが礼儀のような気がしています。

メンバーはポール・デスモンド(as)、ジム・ホール(g)、ジーン・チェリコ(b / 1963)、ジーン・ライト(b / 1964)、パーシー・ヒース(b / 1965)、コニー・ケイ(ds) です――

A-1 When Joanna Loved Me (1964年録音)
 ジム・ホールが絶妙のイントロを作り、ポール・デスモンドが限りなくソフトな情感をこめてテーマを吹奏してくれるだけで、あたりは何とも言えない幸福感に満たされます。
 あぁ、このもったいぶったような、お洒落な感覚が嫌味になっていないところが良いですねぇ~♪
 そしてポール・デスモンドは、もちろん最高なんですが、ここでのジム・ホールは伴奏に、ソロに異常なほどの素晴らしさです。特に伴奏のコードチェンジとか、バリエーションが豊かだと思います。

A-2 That Old Feeling (1964年録音)
 快適なテンポでテーマを吹奏するポール・デスモンド!
 全て分かっているコニー・ケイのブラシが気持ち良い限りですが、アドリブパートでは無理にハードスイングしようとするバンドが、いじましい雰囲気です。
 しかしジム・ホールが伴奏に加わると、一転してグルーヴが豊かになるのですから、本当に不思議です。耳が完全にジム・ホールのコード弾きに奪われてしまうのですから!
 もちろんアドリブソロでは千変万化のフレーズを連発し、内向的な美学を追及しています。あぁ、こんなギターが弾けたら、人生も楽しいだろうなぁ……。 

A-3 Polka Dots And Moonbeams (1963年録音)
 ジム・ホールが無伴奏でテーマを爪弾きながら、ベースを呼び込んでいくテーマ解釈にシビレます。
 そしてポール・デスモンドが入ってくると、ジム・ホールが沈黙をきめこむあたりの潔さ♪ 存分に花を持たせた後に伴奏を始める心憎さ♪
 さらにアドリブパートでは淡々とフレーズを綴りつつ、ラストテーマの一人舞台の素地を作るんですから、参っちゃいます♪
 このあたりの黒人的解釈がデヴィド・T・ウォーカーでしょうか……?

A-4 Here's That Rainy Day (1965年録音)
 けっこうテンションの高い4ビートで、ポール・デスモンドはツッコミも鋭いのですが、伴奏のジム・ホールが百も承知の穏やかさですから、和みますねぇ~♪
 こんな事を書いている自分が、本当に野暮天に思えてしまう演奏です。

B-1 Easy Living (1964年録音)
 アルバムタイトルに選んだだけあって、素晴らし過ぎる演奏です。
 ジム・ホールのイントロと伴奏に導かれ、ハスキーに柔らかい音色でテーマを吹奏するポール・デスモンドは、当に神がかりです。
 どんな美女でもイチコロの耽美世界♪ ジム・ホールも最高の神業を聴かせてくれますよ♪ そしてパット・メセニーに影響を与えている証明が、ここに!

B-2 I've Grown Accustomed To Her Face (1965年録音)
 パーシー・ヒースの躍動的なペースワークが素晴らしく、それゆえにポール・デスモンドやジム・ホールもテンションの高い演奏を聴かせてくれます。
 特にジム・ホールは熟慮と謙遜の美徳を歌心に昇華させた素晴らしさです♪
 あぁ、この人には、CTIのウェス・モンゴメリーみたいなリーダー盤を作って欲しかったですねぇ……。

B-3 Bewitched (1965年録音)
 泣きのテーマが人気のスタンダード曲が、なおさらに泣けてしまう解釈になっています。しかも甘さに流れていないのが鋭いところです。
 ジム・ホールはテンションの高いコード弾きとハーモニクスの飛ばし、さらにダンマリを決めこんだりする間合いの上手さ! このセンスの良さは天才の証明でしょう♪ 

B-4 Blues For Fun (1963年録音)
 有名スタンダード曲が続いたアルバムの中で、これだけがポール・デスモンドのオリジナルです。とは言っても即興のブルースですが、これがズバリ、なかなか刺激的な演奏になっています。
 それは時期的に、そして人種的にハードバップでは無いのですが、とてもハードドライヴなモダンジャズになっています。
 もちろんポール・デスモンドは歌心を大切にしていますし、ジム・ホールも無機質なフレーズで対抗し、お互いに絶妙なブレイクを織込んで奮闘しています。
 う~ん、それにしてもジム・ホールのアドリブはコピー不可という、意想外のニュアンスに満ちていますねぇ~!

ということで、どちらかと言えば、全篇が同じようなテンポと演奏パターンの金太郎飴状態なんですが、それがまた、美味しいんです♪ ハマると中毒!

個人的にはジム・ホールの演奏中心に聴いている盤ですが、ポール・デスモンドはもちろん、リズム隊もセンス良く頑張っていますので、安心して身も心も任せられる1枚です。

特に仕事を終えて、夜に独り……、とか、一番良いのは美女といっしょに聴きながら♪

そんな夢まで見せてもらえるこのアルバムは、ジャケットも秀逸です。本当に内容をズバリと表現していますからねぇ♪

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ジョニ、ジャコ、メセニー

2006-10-14 17:43:27 | Weblog

天気が良かったんで、久々にバイクでブッ飛ばしてきました。

風をきる気分の良さ、これが止められませんねっ♪

革ジャンに「番長シャロック」口ずさみ♪ 気分爽快でした。

うん、今度は「不良番長シリーズ」を特集してみようか……、なんて事まで画策しています。

が、その前に本日はこのDVDを――

Shadows And Light / Joni Mitchell (= DVD / Warner)

女性シンガー・ソングライターのジョニ・ミッチェルが製作に深くかかわった映像作品の決定版です。

それはライブ映像をメインにしつつも、イメージフィルムや既存の映画の名場面、さらに彼女自身のプロモ映像等々を嫌味なく混ぜ合わせた、非常に完成度の高い傑作になっています。

もちろん何よりも凄いのが、ライブ演奏の中身です。

それは1979年9月の巡業からサンタバーバーラのステージが中心で、メンバーはジョニ・ミッチェル(vo,g)、パット・メセニー(g)、ジャコ・パストリアス(b)、ドン・アライアス(ds,per)、ライル・メイズ(key)、マイケル・ブレッカー(ts) ! これだけのメンツが勢揃いしているだけで、震えが止まりません。しかも怖ろしいばかりのテンションに満ちた演奏が展開されているのです。

皆様良くご存知のように、ジョニ・ミッチェルはデビュー当時から、密かにジャズっぽい部分を内包していましたが、それが1970年代前半のトム・スコット(ts,ss,as) とのコラボレーションを経て、1975年頃からはジャコ・パストリアスとの共演に発展していきました。

もちろんこの間に発表されたアルバムは全てが傑作♪ そして集大成的な作品として屹立するのが、このDVDというわけです。ちなみに同じ音源を仕様した同名のライブ盤も発売されていますが、収録曲や編集に相違があるので要注意とは言え、やはり動くバンドメンバーの魅力が優っています――

01 Shadows And Light - Juvenille Delinquent
 作品全体の印象を表したパートで、ジェームス・ディーン主演の「理由なき反抗」や少年黒人歌手のフランキー・ライモンといった1950年代の映像が使われています。

02 In France They Kiss on Main Street / フランスの恋人たち
 そして始まるのが、この素敵なフュージョン・フォーク・ロックです。
 オリジナル演奏は1975年に発表された「夏草の誘い」に収録されていましたが、ここでのライブバージョンが決定的な名演でしょう。
 特にパット・メセニーのギターがブッ飛んだ素晴らしさで、伴奏に、ソロに間然すること無い出来栄え! ここは何度見てもトリハダです! 本当にピッキングが上手いなぁ~♪ 映像からして、同じフレーズを弾くのにもワザワザ難しい押さえ方をしているパット・メセニーは天才です。もちろん、その方が綺麗な音が出せるはずですからねぇ!
 ちなみに映像中には、1950年代の映画から「暴力教室」やジルバのダンスが流用使用され、雰囲気を盛り上げています。 

03 Edith and the Kingpin / イーディスと親玉
 これも前述のアルバムに収められていた、極めてジャズ色の強い曲です。
 ここでの演奏はジョニ・ミッチェル自身の変態コードが入ったギターから始まり、そして抑揚の無いメロディを彩る伴奏陣の凄さが浮彫りになっていきます。
 中でもジャコ・パストリアスの的確な音選び、パット・メセニーの浮遊感のあるコード変奏が素晴らしいと思います。

04 Coyote / コヨーテ
 ジョニ・ミッチェルの代表作で、ザ・バンドの解散コンサートでも披露されていましたが、ここではドン・アライアスのパーカッションを中心にした伴奏が、やはり素敵です。
 特にパット・メセニーとジャコ・パストリアスのハーモニクスの飛ばし合いが強烈! 押されたジャコが突如、暴れのフレーズを弾いてドン・アライアスをニヤリとさせる名場面が見所でしょうか♪
 もちろん、そんな事にお構いなしに歌いまくるジョニ・ミッチェルが、一番最高なんですけど♪ 挿入されたコヨーテの映像も印象的です。

05 Free Man in Paris / パリの自由人
 さてここでマイケル・ブレッカーが登場し、あの因数分解フレーズを存分に披露します。またドン・アライアスのディープなドラムスとジャコ・パストリアスのコンビネーションも最高ですし、ジョニ・ミッチェルも気持ち良く歌っています。尤も何を歌ってんだか、意味深長な歌詞が???

06 Goodbye Pork Pie Hat
 ジャズベースの頑固おやじ=チャールズ・ミンガスが、天才ジャズメンのレスター・ヤング(ts) に捧げた名曲に、ジョニ・ミッチェルが歌詞をつけた演奏です。
 したがって完全なジャズになっていますが、ミステリアスな伴奏をつけるバンドの恐さは流石で、聴いている私は、本当に緊張感に苛まれてしまいます。
 特に本領発揮のライル・メイズのエレピが!

07 Jaco's Solo
 ここはジャコ・パストリアスの一人舞台で、例のディレーマシンを使った無伴奏ソロが存分に楽しめます。
 詳しくは見てのお楽しみ♪ とは言え、実はこの時期を境にして、ジャコ・パストリアスは常軌を逸した世界に行ってしまうので、その紙一重の絶頂期が、このライブには残されています。当然ながら、このパートでも狂気と円熟の狭間が楽しめるのでした。発狂しそうです。
 
08 Dry Cleaner From Des Moines / デ・モインのおしゃれ賭博師
 今度は4ビートで歌いまくるジョニ・ミッチェルが素敵です♪
 ビートのウラから入るあたりは流石ですねぇ~♪ アニタ・オデイ(vo) のフレーズをかなり借用していますが、憎めません。
 インストのパートではジャコ・パストリアスのベースがバカノリ♪ 後に「ジャコる」と形容された独特の4ビートが楽しめます。
 またマイケル・ブレッカーも「ブレッカー節」を炸裂させて烈しく反抗するあたりが、この時期のジャズ・フュージョンの花園でしょうか♪ 映像を見るとエア・タンギングを駆使するマイケル・ブレッカーの喉の膨らみが凄いです。
 そしていきなり演奏を止めて、何事もなかったかのように振舞うバンドメンバーは貫禄でしょう。

09 Amelia - Pat's Solo
 ジョニ・ミッチェルの弾語りで、映像には古い飛行機や女性飛行士の映像等々が使われています。
 そして後半からパット・メセニーが密やかに参入し、魅惑のギターソロ♪
 ジョニ・ミッチェルが作り出す変態コードが気持ち良かった分だけ、パット・メセニーは自分の世界を一人舞台で演じていくのでした。メセニー・ファンは必見です♪

10 逃避行
 そして続く映像は、ジョニ・ミッチェルのスケート姿!
 カナダ生まれだけに、ごく自然にやっていますねぇ。
 たぶんプロモ映像でしょうが、音源はライブのようで、ドン・アライアスのパーカッションが鮮やかです。

11 Black Crow
 さて、これが強烈なジャズロックです!
 なにしろ全篇でジャコ・パストリアスのベースが唸りまくりですし、テンションの高いリフとマイケル・ブレッカーの咆哮! さらにライル・メイズの幻想的なコード伴奏にパット・メセニーの恐いサイドギター! ドン・アライアスも容赦ないドラミングです。
 う~ん、マイケル・ブレッカーの全盛期も、この時期だったのかも……♪ 

12 Furry Sings the Blues
 これもジョニ・ミッチェルの静かな弾語りから始まり、途中でパット・メセニーの神業スライドギターが入ってくるのですから、たまりません!
 そしてドン・アライアスのブラシも絶妙なんですねぇ~。

13 Raised on Robbery / 陽気な泥棒
 スバリ、ファンキーロック大会です!
 もちろんジャコ・パストリアスが大暴れ! ライル・メイズの生ピアノは見事にロックン・ロールしていますし、パット・メセニーのオチャメなフレーズ、マイケル・ブレッカーの爆裂テナーサックスにドン・アライアスのハードロックなドラムスも冴えています。
 もちろん観客も大喜びですが、田舎の会場ということもあって、素朴な美女が散見されますねぇ♪ 本当に楽しいです♪

14 Why Do Fools Fall in Love ?
 前曲の盛り上がりが、このオールド・ロックンロールで最高潮となります。
 ゲストには黒人コーラスグループのパースエイションズが登場、マイケル・ブレッカーのテナーサックスが楽しく炸裂して、ステージと会場は一体となった楽しい雰囲気に満たされます。
 ちなみにこのビデオの冒頭に登場したフランキー・ライモンが、この曲のオリジネイターなんですから、二重の仕掛けにニンマリです。しかもここでの演奏はドン・アライアスのドラムスだけが伴奏の擬似アカペラですからねぇ~♪
 クライマックスに相応しい、どこまでも楽しい演奏です。

15 Shadows And Light
 そして最後に、冒頭で流れたタイトル曲の完全バージョンが演じられます。
 それはジョニ・ミッチェルとパースエイションズのアカペラですから、仄かなゴスペル風味が心地良く、さらに途中から絶妙なコードで伴奏するライル・メイズのキーボードが味わい深い感動を呼ぶのでした。

ということで、これは数ある音楽ライブ映像作品の中でも筆頭格の素晴らしさです。

なにしろ参加メンバーが夢のようですし、単にロックとジャズの好ましい邂逅に止まらず、より奥深い世界に進歩したフュージョンの最高峰でしょう。

ジャコ・パストリアスの凄さはもとより、、ぜひとも全人類に楽しんでいただきたいと、せつに要望する私でした。12月頃に再発されるようです。

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パリのズート

2006-10-13 17:30:27 | Weblog

気の合う人との仕事は、やっぱり良い!

もちろん馴れ合いになってはいけないわけですが、阿吽の呼吸というか、仕事とは言え、楽しい達成感、みたいなものがありますねぇ。

今日はそんな1枚を――

Zoot Sims On Ducret Thomson (Ducret Thomson)

ズート・シムズとパリは相性が良い♪

確かに、この人のパリ録音には傑作が多いのですが、そう言われるのも本日の1枚があっての事です。

録音は1956年3月16日のパリ、メンバーはジョー・アドレイ(tp)、ズート・シムズ(ts)、アンリ・ルノー(p)、Benoit Quersin(b)、Charles Saudrais(ds) です――

A-1 Captaen Jetter
 アンリー・ルノーが書いた哀愁のハードバップ曲です。
 そしてこういうものなら、ズート・シムズは得意中の得意♪ 淀みなく和みのフレーズを吹きまくって、安らぎのアドリブ天国を現出させています。
 そのスタイルはレスター・ヤング系の柔らかいフレーズが基本になっていますが、やはりモダンジャズ時代の突っ込みのあるテンションが特徴でしょうか、和みの中に潜む刺激がクセになるのです。
 また相方のジョー・アドレイもビバップというよりは、プレモダンの中間派的な響きありますし、リズム隊も若干、その傾向があるので、そういう最高の相性が、この快演を生んだのでしょう♪
 思わずラストテーマを口ずさんでしまいますねぇ~♪

A-2 Muzzolese Blues
 かなりハードボイルドなブルースで、ズート・シムズはサブトーンから思い切った低音域までを駆使して、素晴らしいアドリブを展開しています。それは和んでいながら、かなり黒っぽいところまで行っているのです。
 そして続くジョー・アドレイのトランペットが、また、最高です。決して新しいスタイルではないのですが、チェット・ベイカー味がありますし、それ以前のカンサスシティのスタイルというか、土の感触を様式美として表現しているようです。
 またアンリ・ルノーはニューオリンズ系R&Bの味を漂わせた伴奏とアドリブが、これも素敵ですねぇ~♪ それとなくバックビートを強調したベースとドラムスも良い感じです。本当に何度聴いても飽きません。

A-3 Everything I Love
 これも快適なビートにノッた哀愁のハードバップですから、たまりません。
 こういう味はズート・シムズしか出せないような気がするほどです。
 とは言え、先発でアドリブを聞かせるジョー・アドレイが泣きのフレーズを連発していますし、続くアンリ・ルノーも本当に味わい深い美メロばっかり弾いているのです♪
 そしてズート・シムズ! やっぱりこの人の名演のひとつでしょうねぇ~、これはっ! とにかく聴いて納得のアドリブが完成されているのでした。
 ちなみに作曲はコール・ポーターですが、これが最高のバージョンかもしれません。

B-1 Evening In Paris
 クインシー・ジョーンズが書いた有名なジャズオリジナルを、ズート・シムズはダークに味わい深く演じてくれます。
 あぁ、この音色の魅力に、まずKOされますねぇ~♪ 演奏者の本音とためいき、とでも申しましょうか……。とにかくテーマメロディの解釈が抜群です。
 短い演奏ですが、ズート・シムズの一人舞台が存分に味わえます。

B-2 On The Alamo
 これも哀愁系のスタンダードが和んで演奏されています。
 テーマをリードするジョー・アドレイのトランペットもハスキー味で素晴らしく、アドリブパートでの引っ込み思案な内気の解釈に、胸キュン状態です。
 アンリ・ルノーのピアノも趣味が良く、続くズート・シムズは歌心の塊ですから、いつまでも聴いていたい快演で、全く独自のドライヴ感には脱帽♪ ラストテーマの絡みの上手さも、名人の証明でしょう。

B-3 My Old Flame
 美メロのスタンダードを、より美しく吹奏してしまうズート・シムズ♪ これだけ和んでテンションの高い演奏を残すのですから、この時期は当に神がかりだったのでしょう。
 実際、この1956年をズート・シムズの全盛期とするファンが多く、残された録音は全てが世界遺産という輝きとシブサがあるのです。
 もちろんジョー・アドレイもハスキーな音色で魅力的♪
 そしてラストテーマのブレイクではズート・シムズの真髄がっ!

B-4 Little Jon Special
 アルバムの最後を飾るハードバップはジョー・アドレイの作曲で、溌剌としたテーマからズート・シムズが猛烈なドライブ感に満ちたアドリブに突入するのですから、これが嫌いなジャズ者はいないはずです。
 あぁ、それにしてもここでのズート・シムズは、かなり前衛的なフレーズまでも入れ込んで圧巻の出来! あまりに突進力が強すぎて、途中で我を忘れてしまう場面すらありますが、直ぐに体制を立て直してからはスイング&グルーヴィンの嵐です。
 またジョー・アドレイも思いっきりハードバップしていて爽快ですし、余計な手出しをしないリズム隊が快適なビートを送り出しているのも、高得点♪

ということで、これは文句無しの傑作盤です。

一時は幻化していた作品でもありますが、現在はCD復刻されていますので、聴かずに死ねるかの1枚でしょう。なによりも、聴いているうちに一緒に口ずさめるフレーズばっかりですからねぇ~♪ ジャズの楽しさが、いっぱい、詰まっているのです。

そして個人的にはズート・シムズのベスト5に入れています。

ちなみにズート・シムズとアンリ・ルノーは本当に相性が良いみたいで、5年後には「ズート・シムズ・イン・パリ(United Artists)」なんていう名盤を残しており、それも必聴ですよ。

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ネオバップ・グルーヴ

2006-10-12 18:07:01 | Weblog

今日はギンギンにジャズモードに入っています。朝、起きぬけから、これ聴きました――

The Meeting / Jackie Mclean & Dexter Gordon (Steeple Chase)

1970年代前半のネオバップ・ブームを決定付けたアルバムです。

主役はハードパップ男のジャッキー・マクリーンと大御所のデクスター・ゴードンですが、私には参加したリズム隊が生み出す強烈なグルーヴが魅力になっています。

録音は1973年7月20&21日、コペンハーゲンのライブハウス「モンマルトル」でのライブセッションで、メンバーはジャッキー・マクリーン(as)、デクスター・ゴードン(ts)、ケニー・ドリュー(p)、ニールス・ペデルセン(b)、アレックス・リール(ds) です――

A-1 All Clean
 短いメンバー紹介があって演奏がスタートしますが、ノッケからリズム隊のグルーヴが強烈です。跳ねるケニー・ドリューのピアノに捻れたようなニールス・ペデルセンのベース! そして如何にもバリバリの若手らしいアレックス・リールの新感覚ドラミングが良いですねぇ~♪
 こういう快適なバックに煽られて、まずデクスター・ゴードンが貫禄の大ブロー! 自作のブルースということもあって、余裕と楽しさに満ち溢れたアドリブは、とことん安らぎます。
 そして続くジャッキー・マクリーンが、これまたギスギスと永遠の青春物語を吹き綴りますが、やや緊張気味でしょうか……? なにしろ大先輩が横にいますからねぇ。それでも徐々にアグレッシブなフレーズを繰り出していくあたりは、全く憎めない奴です。
 しかし本当の聴きものはケニー・ドリューを中心としたリズム隊のパートです。このファンキーでグイノリのグルーヴは、従来のハードバップには感じられないもので、それはニールス・ペデルセンとアレックス・リールという欧州組の新感覚とケニー・ドリューという、クラシックの素養をたっぷりと身につけていた黒人が、奇跡の合体を果たして生み出されたものでしょう。これこそがネオバップやそれを引張っていたスティプルチェース・レーベルの人気の秘密ではないでしょうか!?
 特にニールス・ペデルセンが大ブレイクしたのも、ここに由来していると思います。

A-2 Rue De La Harpe
 ちょっと1960年代ブルーノートを連想するハードバップです。
 もちろん先発のジャッキー・マクリーンにとっては十八番の展開ですから、泣いて、泣いて、泣きじゃくるフレーズの連発、と言いたいところですが、実は「嘘泣き」を混ぜているところが油断なりません。
 そしてそこを鋭く突くのがアレックス・リールのドラムスです♪ ジャッキー・マクリーンが、ウッと我に返って吹きまくるあたりがジャズの楽しさですねぇ。
 そこにいくとデクスター・ゴードンは愚直なまでに正攻法です。自然体で吹きまくり、リズム隊を逆に煽ってしまう場面は流石! ついついボリュームを上げてしまいます。
 ケニー・ドリューの「跳ね」と「疾走」は言わずもがな♪

B-1 Sunset
 ケニー・ドリューが書いた哀切のスロー曲です。
 それをジャッキー・マクリーンが、例のギスギスした音色でテーマをリードするのですから、たまりません。ハーモニーをつけるデクスター・ゴードンと彩りを添えるケニー・ドリューも、匠の技です。
 ただしアドリブパートでは全員が、やや冗漫な雰囲気に陥っています。
 もう少しコンパクトに纏めてほしかったのです……。

B-2 On The Trail
 オーラスは楽しい和みのハードバップ大会♪
 いきなりジャッキー・マクリーンがギスギスとテーマを提示すれば、続くデクスター・ゴードンはバリバリ・グイグイとアドリブを爆発させ、もうここで、辺りはモダンジャズのグルーヴに満たされてしまいます。あぁ、これがジャズです♪
 それはリズム隊のイキイキとした躍動と呼応したものであり、本当に何時までも聴いていたですねぇ~♪ 若気の至りが丸出しなったアレックス・リールのドラムスも最高です。
 するとジャッキー・マクリーンも負けていません。激情の音色と泣きのフレーズで対抗すれば、聴いている私は、身も心も躍りだしたくなりますねぇ♪ 指パッチンに足は4ビートの世界です♪
 そしてケニー・ドリュー! 飛んで弾ける独特のグルーヴは、この時期にますます磨きがかかったようで、それはニールス・ペデルセンとの邂逅を抜きにしては語れない、その証明がここで聴かれます。

ということで、実は発売当時はマンネリの事なかれジャズと陰口もたたかれていましたが、今聴くと、やっぱり良いです。いや、むしろ年々その奥底の価値が分かってきた私なのです。

こういうアルバムって、他にも沢山あるはずですから、いろいろと聴かなくなった盤を引っ張り出してみようと思います。

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