Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

半減期を祝って

2016-11-02 09:06:48 | 読書
津島佑子 講談社(2016/5).

タイトル作は,Cs137 の半減期は30年.それを祝って戦後100年と強引に合わせてのお祭り騒ぎがある...という近未来小説.

すでにニホンという国は競争力を失い,鎖国に近い状態.オリンピックの熱狂から生まれた軍事独裁政権が支配している.5年前にも原発で事故が起こり,新しい放射性物質がばらまかれているが,気にしない.人々の生活そのものは表面上いつもと変わらず,一般的にはさしたる不満も出ない.
政権が後押しして「愛国少年(少女)団体 ASD」ができている.これには人種規定があって.チョウセン系,オキナワ系,アイヌ系は入団できないが,いちばん評価が低いのはトウホク人.ASD の本当の役目は反社会的人間を駆り出すことらしい.トウホク人の少年と ASD 少女との悲恋...

この「半減期を祝って」は30ページの短編だが,名前を持った登場人物が右往左往する長編として読みたかったと思う.
群像 2016年3月号に初出.しかし著者は2月18日にすでに逝去していた.

図書館で借りた.傾向の違う二つの短編と合わせた,100ページちょつとの本で,すぐ読んでしまった.

著者は太宰治の次女.
このひとの作品は,純文学にはめずらしく どれも面白い.「火の山-山猿記」は宮崎あおい主演の NHK の朝ドラに化けている.
作品が英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・オランダ語・アラビア語・中国語などに翻訳された,ノーベル賞級の作家だったのだ.
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