Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

武満 徹「サイレント・ガーデン」

2016-11-15 10:02:43 | 読書
サイレント・ガーデンなんて,いかにも武満の曲のタイトルにありそうだが,本のタイトル.図書館の古書交換市に出す本を探していたら出てきた.

 武満 徹「サイレント・ガーデン-滞院報告・キャロティンの祭典」新潮社(1999/10).

布らしきものを貼った函の両面に窓があって,一方からはこの写真のように「滞院報告」の文字がのぞき,反対側からは「キャロティンの祭典」の文字がのぞく.つまり,この本自体が二冊を合体した構成で,右とじ縦書きが「滞院報告」で,反対側から左とじ横書きの「キャロティンの祭典」というしかけ.

「キャロティンの祭典」は病床で書かれた手書きレシピをそのまま収録している.色鉛筆による材料の野菜や魚が挿入されていて,まえがきの「徹さんへ」という文章で武満真樹 (お嬢さん) が書いているように,実物を見ずに描いたわりにはとてもよく描けている.

この本を買ったころは,もっぱら「キャロライン...」を眺めていたが,今では「滞院報告」に読みふけっている.
何月何日何曜日,天候の次に,体重が書かれる.点滴とか,体温とか,尿の量とかの記述が半分くらいだが,ときどきマスコミなどで知っている名前を持つ見舞客が現れる.

黛敏郎のこまやかな心遣いに感謝しながら,内心ではこの人の右翼的言動との差にとまどう.
小澤征爾...もっと話したそうだったが (容体のため?) 帰っていった,とか.
井上陽水・小室等に対して,「やさしいひとたちだ.クラシックの若い人たちとは気性がまるで違う」とか.

滞院中に石川セリ (井上陽水夫人) が MI YO TA (「小さな空」を含むポピュラーソング集) を録音していたことがわかる.テープを聴いて「二ヶ所大事なメロディがちがう」「Mix をちょっとやり直したほうがいい,とくに羽田 (健太郎) 氏の」「想っていたよのいい.ものによってはたいへんいい.『恋のかくれんぼ』直したというが前より悪い.困った.前の消えてなければあれでいきたい」など.

阪神の勝敗を気にしたりしているが,あとはもっぱら家族のこと.日記は 1995 年 65 歳時のものだが,75歳まで妻と暮らしたいと書いている.この「滞院報告」のあとがきは武満浅香 (奥さん) で,日記だけでは飲み込めない病状の推移がわかる.著者はこの日記が書いた時期を経て一時退院したが翌年死去した.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg