Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

唐牛伝

2016-11-06 09:52:36 | 読書
佐野 眞一 「唐牛伝 敗者の戦後漂流」小学館 (2016/7).

この本は,60 年安保以降,居酒屋になったり漁船で飯炊きをしたり,職を転々としながらアル中気味に漂流するように生きた唐牛の 47 歳までの生涯を丁寧に書いている.文章には品がないが,読みやすい.

予備校生だったので,60 年安保はマスコミを通じての知識しかない.このとき全学連を率いた唐牛は,70 年安保ではすでに伝説の人物だった.この本の「敗者の戦後漂流」というサブタイトルがひっかかるが,70 年安保後の漂流 ? 人生の例ならけっこう知っている.
「革命」でも何でもいいから,若い時に,自分の人生を無茶苦茶にしたいと思ったことがあるか/ないかで,唐牛に共感できるか/できないか が,決まるのではないか.
読みながら,思い出したくないことを次々に思い出してしまった.

図書館で借用.

以下は個人的妄想.
60 年時の敵役は岸信介だが,彼の路線は右寄りとは言うもののアメリカにべったり迎合したもので,それは現在の安倍晋三にそのまま受け継がれいてる.それに反対した学生たちには,戦争の記憶が生々しく残っていて,それが「反米」となって,情念の一部として運動に現れたのかもしれない.全学連といわゆる右翼との接近もそう思えばなるほどと思える.

著者は学生運動はその後に続く高度成長社会への嘔吐と捉えているようだ.しかし現代では「成長」はもはや幻想でしかない.この幻想にしがみついているのが,英国の EC 離脱とか,安部とか,トランプとかいう現象だろう.

さすが! の装幀は,菊地信義.
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