Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

きみのいもうと

2017-07-03 07:56:10 | 読書
エマニュエル・ボーヴ,渋谷 豊 訳,白水社(2006/10).

カバーと装丁と出版社と 105 円という価格ゆえに古書として購入,正解だった.

著者 1898-1945 の作品は,繊細な観察眼とユーモアゆえに人気があったが,いかなるイデオロギーとも無縁であったため,戦後アンガージュマン (政治社会参加型文学) の隆盛に隠れてしまった.しかし1970年頃より再評価され,今日では多数の言語に翻訳されている...ということがあとがきにあった.ちっとも知らなかった.

金持ちの未亡人と暮らしている駄目男が,かっての駄目友と出くわし,その妹が住んでいるホテル (というが,下宿のようなものらしい) に押しかけて妹とキスしてしまい (ふたりの唇がふれただけである!),未亡人に追い出されるというストーリー.こう書くと身もふたもないが,人物の一挙手一投足が表情・心の動きとともに,実に丁寧に描写されていて,身につまされるのだ...それゆえに読むのに時間がかかった.
訳者は「都会で孤立する不器用な人物像が共感を呼ぶ」とあるが,まさにその通り.

ほとんど地名が出てこないことがあとがきで指摘されているが,時間も超越していた.1927 年の小説だが,そうは思えなかった.

☆☆☆★
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reading

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