犬飼鯛音,KADOKAWA (2019/3).
ネット小説の書籍化.カバーイラスト (志村貴子) がかわいい.でも図書館で借りるときは恥ずかしかった.
著者の性別不明.読み慣れたミステリと比べると,文章が行き届いていて,とてもうまい.
ちびでぶで食いしん坊の女子高生・小春=私は,となりの席の,美形の朧くんにひそかに惚れている.ある日,へたくそに女装して街を歩いている朧くんに遭遇.小春は年齢の離れた兄の美容院へ彼を引っ張って行く.「お兄ちゃん、おぼろくんをもっと綺麗にしてあげて」....「はんぶんこ」は,体は男子,心は女子ということらしい.
自分で自分がわからない年頃なのに加え,ずれた組み合わせの小春と朧くんの手探り状態のつきあいが,じれったくほろ苦い.朧くんの秘密を知っているのは,小春とその兄だけ.朧の母も気づいていないという設定.舞台の半分は学校.何か食べてばかりいる. ふたりは,学校ではよそよそしいが,帰りに毎日のように朧が小春を訪ねてくるようになる.もやもやとした関係が,最後には一応区切りがつく.
こんな小説とは思わなかった.びっくりしたので点が甘くなり,☆☆☆☆.