サブタイトル「父敏雄と母ミホを探して」河出書房新社 (2018/8).
Amazon の内容(「BOOK」データベースより)が簡にして要を得ている*****
特攻くずれの私小説作家と、奄美の旧家の娘。ふたりの間に生まれた兄妹をむしばむ剥き出しの現実。次第に狂気にさいなまれる母と、家庭をかえりみない不機嫌な父。それは東京・小岩ではじまった。「家庭の事情」と「子供の事情」名作『死の棘』の舞台の片隅で翻弄される幼い二つの命。*****
「小岩へ」といタイトルだが「小岩にて」の方が適当だと思う.学齢以前の伸三の思い出が断片的に語られる.全7章からなり,両親に対しては最初から批判的だが,終わりに近づくにつれその内容が具体化するようだ.著者の本職は写真家で,ところどころ見開き2ページの写真が挿入されるが,小岩時代の写真ではない.
一時期 島尾敏雄の小説が琴線に触れ,けっこう読んだ.「死の棘」では嫉妬深い妻に夫が一方的に攻撃される,それはこの本でもその通りだが,息子・伸三も娘・マヤもまた攻撃の対象である
いっぽうでは夫はかなりの亭主関白.妻は夫にだけ美味しいものを食べさせたり,それなりに気を使うのに,夫はぷいと外出して戻らなかったりする.
ミホ著の「海辺の生と死」を読んだのは遠い昔で,リリカルな印象が残っているが,この本のミホは猛母・惡母でしかない.「見栄えの良い父と母のおかげで,マヤと私が放置されまともな食事もしていなかったなんて,誰も信じようとはしなかったでしょう.」雪の夜にイチジクの木にまる裸の子どもを縛り付けて,自分は寝てしまうなど,虐待でしかない.
ミホが自分の夢あるいは欲望を臆面もなく発揮する例として,終戦直後の神戸から東京までの汽車旅のことが書いてある.よそではボックス席に大人が10人詰まっているのに,赤ちゃんだった娘マヤのために座席間にハンモックを架け,本ばかり読んでいる夫のためにも座席1つをつかわせ,4人のためにボックスを死守する.
妻を満足させるために,夫は欲しくもない文学賞をもらったように書いてある.「死の棘」のことだろうか...なんだか変だ.
しかしこの家系の一員の書くことは,どこまで本当なんだろうか? ちなみに,伸三の娘は漫画家のしまおまほ.この子のことは知りません.
図書館で借用.個人的にはおもしろかったので,☆☆☆☆
Amazon の内容(「BOOK」データベースより)が簡にして要を得ている*****
特攻くずれの私小説作家と、奄美の旧家の娘。ふたりの間に生まれた兄妹をむしばむ剥き出しの現実。次第に狂気にさいなまれる母と、家庭をかえりみない不機嫌な父。それは東京・小岩ではじまった。「家庭の事情」と「子供の事情」名作『死の棘』の舞台の片隅で翻弄される幼い二つの命。*****
「小岩へ」といタイトルだが「小岩にて」の方が適当だと思う.学齢以前の伸三の思い出が断片的に語られる.全7章からなり,両親に対しては最初から批判的だが,終わりに近づくにつれその内容が具体化するようだ.著者の本職は写真家で,ところどころ見開き2ページの写真が挿入されるが,小岩時代の写真ではない.
一時期 島尾敏雄の小説が琴線に触れ,けっこう読んだ.「死の棘」では嫉妬深い妻に夫が一方的に攻撃される,それはこの本でもその通りだが,息子・伸三も娘・マヤもまた攻撃の対象である
いっぽうでは夫はかなりの亭主関白.妻は夫にだけ美味しいものを食べさせたり,それなりに気を使うのに,夫はぷいと外出して戻らなかったりする.
ミホ著の「海辺の生と死」を読んだのは遠い昔で,リリカルな印象が残っているが,この本のミホは猛母・惡母でしかない.「見栄えの良い父と母のおかげで,マヤと私が放置されまともな食事もしていなかったなんて,誰も信じようとはしなかったでしょう.」雪の夜にイチジクの木にまる裸の子どもを縛り付けて,自分は寝てしまうなど,虐待でしかない.
ミホが自分の夢あるいは欲望を臆面もなく発揮する例として,終戦直後の神戸から東京までの汽車旅のことが書いてある.よそではボックス席に大人が10人詰まっているのに,赤ちゃんだった娘マヤのために座席間にハンモックを架け,本ばかり読んでいる夫のためにも座席1つをつかわせ,4人のためにボックスを死守する.
妻を満足させるために,夫は欲しくもない文学賞をもらったように書いてある.「死の棘」のことだろうか...なんだか変だ.
しかしこの家系の一員の書くことは,どこまで本当なんだろうか? ちなみに,伸三の娘は漫画家のしまおまほ.この子のことは知りません.
図書館で借用.個人的にはおもしろかったので,☆☆☆☆