長野まゆみ,講談社文庫(2019/8).単行本は 2013/3.嵌ったので星4つ半.
Amazon の内容紹介*****カフェで、ファストフードで、教室で、ケアホームで、一見普通の人物が語りはじめる不可思議な物語。一卵性双生児、夢の暗示、記憶の改竄、自殺志願者など、ちりばめられた不穏なモチーフが導く衝撃の結末。読んでいるうちに物語に取り込まれ、世界は曖昧で確かなことなど何もないと気づかされる戦慄の9篇。*****
この作家の本を読むのは1995年の「八月六日上々天気」以来.「八月六日...」はカバーイラストも気に入っていたのだが,なぜか本棚から行方不明.
本書のタイトルを並べると,
「11:55」「45°」「/Y」「●」「+-」「W.C.」「2°」「×」「P.」
帯に「読むエッシャー」とあったので買ったようなもの.「●」で一卵性双生児が向かい合って面対称に動作するばかりか,相手は鏡の中にいると思い込んでいるらしいという場面は,いかにもエッシャー的.ここでは双子のうちの1人は左利きということになっている.「/Y」の認知症の世界,「×」の記憶喪失の世界などは時間的にもエッシャー的.
この短編群では語り手のいうことも鵜呑みにできない.語り手そのものが最後に犬と判ったする.
解説は学習院大学フランス語圏文化学科教授・中条省平という方で,エッシャー云々はこの方が言い出したのかな.たしかに,この本は広義のミステリーということになるのだろう.
CDケースのボトムに窓枠,リッドに室内を,内側からアクリル絵の具で描いた.重ねると視線により視野が変わる.
2019年7月26日付 朝日新聞デジタルの写真による.
室内はガラス絵手法ではなく普通の手法で描くのだが,そのために勝手が違い,うまくいかなかったように思う.
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