池内 了,平凡社 (2020/05).
*****胃を悪くしても甘いものや煙草、コーヒーが止められず、医者が嫌いで、子どもに対しては異常なほど心配性……。寺田寅彦 1878-1935 の背中を追い続けてきた著者が描くとっておきの姿。
目次
第1章 甘い物とコーヒー好きの寅彦 / 第2章 タバコを止めない寅彦 / 第3章 癇癪持ちの寅彦 / 第4章 心配性の寅彦 / 第5章 厄年の寅彦 / 第6章 医者嫌いの寅彦と業病の由来 / 第7章 日記に見る戦争と関東大震災 / 第8章 書簡に読む社会批判*****
外面はいいかもしれないが,家ではうざったい内弁慶.ある程度進歩的だが,男尊女卑を主張し.国家という長いものには巻かれる主義.
でも著者は「私が寅彦への悪口を書いたと誤解してはならない.褒め上げるばかりが寺田寅彦を評価することではない.人間的な弱点,時代が課した制約,自分の好悪に左右された側面も含めて批判的に見て,その上で全体像を把握することこそが寺田寅彦を真に理解することに繋がるのである」と言っている.
以下は個人的な感想.
「寺田寅彦研究」と称してこんな本が出るのは,寺田さんには心外だろう.有名になると大変だ.
日記を奥さんに代筆させた ! そのくせ奥さんの日記を盗み読む.
かって日記は,いまのSNSのように気軽で気楽なものだったのだろうか.
その奥さんは3番目,ただしはじめの2人とは死別というのは,初めて聞いた.
ブラッグ親子が同じテーマで同じ時期にノーベル賞をもらったことを考えると,彼のX線回折業績の評価は,不当に低いとされる.でもあの時代,ノーペル賞はヨーロッパの小国スウェーデンのローカルな賞で,ニッポン帝国学士院恩賜賞の方がよっぽどありがたかったのかもしれない.
この本では彼の死因 転移性骨腫瘍の遠因として若い時のX線被曝に可能性があるとしている.でもウェブによれば 19 世紀生まれの日本人男性の平均寿命は 40 台で,彼の享年 58 歳は長生きした方かもしれない.
1920 年代初頭の2度目の大病以降,30代後半以降は,大学教授職はちゃんと勤めていたのだろうか.羨ましいことに,帝国大学教授は今よりずっと暇だったに違いない.
でもここで随筆を書く楽しみを覚え,物理以外の生物や防災にも思索を広げ,俳句に打ち込んだり... これらなしでX線回折だけでは寅彦の名は後に残らなかっただろう.
「コーヒー哲学序説」を契機として,図書館で借用.
*****胃を悪くしても甘いものや煙草、コーヒーが止められず、医者が嫌いで、子どもに対しては異常なほど心配性……。寺田寅彦 1878-1935 の背中を追い続けてきた著者が描くとっておきの姿。
目次
第1章 甘い物とコーヒー好きの寅彦 / 第2章 タバコを止めない寅彦 / 第3章 癇癪持ちの寅彦 / 第4章 心配性の寅彦 / 第5章 厄年の寅彦 / 第6章 医者嫌いの寅彦と業病の由来 / 第7章 日記に見る戦争と関東大震災 / 第8章 書簡に読む社会批判*****
外面はいいかもしれないが,家ではうざったい内弁慶.ある程度進歩的だが,男尊女卑を主張し.国家という長いものには巻かれる主義.
でも著者は「私が寅彦への悪口を書いたと誤解してはならない.褒め上げるばかりが寺田寅彦を評価することではない.人間的な弱点,時代が課した制約,自分の好悪に左右された側面も含めて批判的に見て,その上で全体像を把握することこそが寺田寅彦を真に理解することに繋がるのである」と言っている.
以下は個人的な感想.
「寺田寅彦研究」と称してこんな本が出るのは,寺田さんには心外だろう.有名になると大変だ.
日記を奥さんに代筆させた ! そのくせ奥さんの日記を盗み読む.
かって日記は,いまのSNSのように気軽で気楽なものだったのだろうか.
その奥さんは3番目,ただしはじめの2人とは死別というのは,初めて聞いた.
ブラッグ親子が同じテーマで同じ時期にノーベル賞をもらったことを考えると,彼のX線回折業績の評価は,不当に低いとされる.でもあの時代,ノーペル賞はヨーロッパの小国スウェーデンのローカルな賞で,ニッポン帝国学士院恩賜賞の方がよっぽどありがたかったのかもしれない.
この本では彼の死因 転移性骨腫瘍の遠因として若い時のX線被曝に可能性があるとしている.でもウェブによれば 19 世紀生まれの日本人男性の平均寿命は 40 台で,彼の享年 58 歳は長生きした方かもしれない.
1920 年代初頭の2度目の大病以降,30代後半以降は,大学教授職はちゃんと勤めていたのだろうか.羨ましいことに,帝国大学教授は今よりずっと暇だったに違いない.
でもここで随筆を書く楽しみを覚え,物理以外の生物や防災にも思索を広げ,俳句に打ち込んだり... これらなしでX線回折だけでは寅彦の名は後に残らなかっただろう.
「コーヒー哲学序説」を契機として,図書館で借用.
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