Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「タルト・タタンの夢」と「離れた家」

2014-06-17 08:43:26 | 読書


近藤史恵「タルト・タタンの夢」 創元推理文庫(2014/4).
日下三蔵編「離れた家 山沢晴雄傑作集」日本評論社(2007/6).

タルト・タタン...はあっという間に読了したが,隠れた家には時間がかかった.大半が時間トリック・アリバイ崩しで,何度も前の方をひっくり返して読み直さないと理解できない.巻末の日下氏の文章によれば,ミステリ読書のベテランが何度も読み返して,はじめて理解できたという作品もあるらしい.
速読術とか言うものがあるが,あの術は本の内容によらないのだろうか.そうはいかないから,やっぱり受験勉強等には無効なのだろう.


「隠れた家」

3部構成で,Part 1 が砧順之介なる私立探偵の事件簿という体裁の短編が 4 編,Part 2 はちょっと毛色の変わった 5 短編,Part 3 はタイトルとなった中編「離れた家」.やはり Part 1 と 3 の本格ものが充実している.著者は大阪市役所水道局に定年まで勤務するかたわら,じっくり執筆したということだが,ここにある短編ひとつを,流行作家だったら引き伸ばして長編にすることだろう.
舞台は全部大阪だが,書かれた時期は 1951 年から約半世紀にわたっていて,時代の変化が分かる.

「本格派の鬼」と呼ばれたそうだが,トリックが新しいわけではなく,いくつも組み合わせて複雑にする方向だ.芦辺拓が「離れた家」の解題で「ここまでやるか !」と言ったそうだ.
ただし,山沢氏の文章には独特ののあじわいがあって,けして読みにくいわけではない...というより,読み出したら止められない.
本格派とはいいながら,すっきり解決とはいかないものもあり,後世のメタミステリを先取りしたみたい.このもやもや部分を拡大すると Part 2 の短編群になるのかな.

図書館で借用.


「タルト・タタンの夢」

作者は食いしん坊に違いない.全部をお料理ネタでそろえたところは努力賞.「タルト・タタンの夢」「ロニョン・ド・ヴォーの決意」「ガレット・デ・ロワの秘密」「オッソ・イラティをめぐる不和」...と目次に聞いたことがないコトバが並ぶのは圧巻! と思ったが,この調子が残る3編まで及ばなかったのは残念.

ヴァン・ショーがしばしば登場するが,実は小生はこの本の続編「ヴァン・ショーをあなたに」を先に読んでしまったのだった.

以下ネタばらし.
水瓜のウオッカ漬けを試みたいところ.レシピは,本にあり.
シェフ探偵は自分の推理をわざと小出しにするあたり,性格悪そう.「ロニョン・ド・ヴォーの決意」で特にそう感じた.探偵の性格が悪いのはシャーロック・ホームズ以来の伝統ではあるけれど.
表題作で,サルモネラ菌で嫌がらせが確定的に成り立つかどうかは疑問.

朝日新聞の書評に取り上げられたそうだ.
電子書籍を半額でゲットした.

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