Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

林光「私の戦後音楽史」

2023-02-08 09:29:35 | 読書
林光「私の戦後音楽史 楽士の席から」平凡社(平凡社ライブラリー 2004/12).
初出はカワイ音楽研究会の月刊誌「あんさんぶる」の連載. 1978/2 晶文社単行本.
著者 1931-2012 は 16 トンより 10 歳年長.ここにあるのは 14 歳から 47 歳までの戦後史.

帯に「社会に立ち向かう音楽」とあるように,漠然とサヨク音楽家として存じあげていたが,この本で肉声を聞いた思いがした.著者の社会との関わりのクライマックスは 1952 年の血のメーデーのあたりだったようだ.この本の最後は樺美智子の詩で終わり,1960 年後半の全共闘などには付き合いきれないという感じかな.
16 トンはうたごえ運動の裾野も遥か下のほうで,たまに うたごえ喫茶に行った程度だが,そういう話題はなかった.
この文庫本の解説に三浦雅士は「ほんとうのことを言って,林光の一連の『政治的』なあるいは『左翼的』なあるいは『進歩的文化人』ふうな作曲活動には,一度も感心したことがない」と書いている.これに対し著者あとがきには「歯切れのいい解説をいただいた」とある.

本の大半は「楽士の席から」の音楽のはなしであって,著者の交響楽の類をきいたことはないのだが,にもかかわらず読みやすく おもしろかった.

ネットに「宮沢賢治の詩によるソング集」を発見した.林によれば,ソングは リート(たとえばシューベルト)とちがって,移調・編曲・伴奏の書き換えや異なった楽器の使用,発声,歌い回し(歌い崩し)等,すべての点で原曲の楽譜から距離をとることが許されるのだそうだ.16 トンはオペラチックな歌い方が苦手なので,この HP では歌唱がボーカロイドというのがありがたい.
動画は こんにゃく座による オペラ「セロ弾きのゴーシュ」ハイライト,本書では解説で誉められていた.

カバー図版 真鍋博.意外な取り合わせだが,テキストにも一箇所で真鍋氏が登場する.



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