Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

王様の背中

2014-12-12 08:33:13 | 読書
内田 百 著, 谷中 安規 イラスト,旺文社文庫(1984/1)

序に「はしがき」とルビが振ってあって
「この本には,九つのお伽噺が載って居ります...... この本のお話には,教訓はなんにも含まれておりませんから,皆さんは安心して読んでください.」
とある.

九つとあるが,文庫本には第十のお話として,「狐の裁判」が載っている.ゲーテの作品の翻案である.
その後に「おくがき」があって
「どんなに正しい者でも,強い者でも,智慧がなかったら,悪者に勝つことができないといふ教訓であります」.

教訓云々についての はしがきとの矛盾は,文庫にするとき,もともと別な本であった「狐の裁判」をくっつけて一冊にまとめたためである.「王様...」は画主文従と言っていいくらい絵が多いが,「狐..は文主画従である.はっきり言うと字ばっかりで,百さんには悪いが厭になる.

王様の背中の初版本はたいへんな豪華本らしい.文庫解説の位置に平山三郎 (阿房列車に登場するヒマラヤ山系さん) の「雑記」があって,佐藤春夫の文章が引用されている.
「内田百のこの童話は,お世辞にも名作とは言われないが,この本を埋め尽くした装画は,谷中芸術の万華鏡を見る思いがする.本即芸術というのは,これらの本のことである.」
http://hiroyasu-tangerine.blogspot.jp/2013/11/blog-post_1702.html にこの豪華本が紹介されている.

でも文庫本でも,谷中芸術の片鱗をうかがうことができる.文庫本も絶版でけっこう高いらしい.


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