Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

純正律のように響く平均律 (3)

2009-04-11 08:50:55 | 新音律
ここまで来れば,そういう平均律を作ってみたくなる.まずシンセサイザーの教科書の音響合成の最初に書いてある,加算合成を試みた.

これがMaxMSPによるプログラムの一部.なにやら同じようなユニットか5つ並んでいるが,各ユニットは「倍音もどき」に対応しており,全部で12あるうちの5つである.高音側の7つは省略した.

midiコントローラのキーボードを叩くと,音程 (ノートナンバー) と音量 (ベロシティ:打鍵強度) がパソコンに送られてくる.音程からそれに対応する周波数,その2倍の周波数.3倍ではなく2.996倍の周波数,4倍,5倍ではなく5.039倍...を作る.
単純に2,3,4,5倍音...とすればふつうの平均律である.

これらの周波数を持つ音を作って足し合わせれば良いのだが,どの周波数音をどれだけの音量でという「調合」が必要だ.これを演奏中に行うためにスライドスイッチを並べた.ハモンド・オルガンのドローバーに対応するものである.高音側の音量を上げると明るい,トランペットのような音になり,下げるとくぐもった音になる.
合成音をスピーカーから出せば一件落着.

ここをクリックして出るのがドミソをならしてみた結果.4楽章 ! からなり,最初が変形平均律・続いてふつうの平均律・次がオクターブ上の変形平均律・最後がふつうの平均律の順である.

両者をスペアナで比較すると確かに思ったようになっている.でも聞いた感じでは,オクターブ上のふつう平均律のビートがきつすぎる感じ.なにか間違っているような気がして心配.

それはそれとして,こんなのっぺりした電子オルガン音ではおもしろくはない.現在は音源にエンベロープを作っているところだが, なかなか思うようにいきません.それなりの音楽的な音源を作って,古今の名曲の音律聴き比べをやってみたいのだが,まだまだ先のことになりそうだ.
この話題はいずれ,また.
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僕僕先生

2009-04-09 10:04:49 | 読書
仁木 英之著 新潮文庫 (2009/03)

*****内容 (「BOOK」データベースより)*****
舞台は中国唐代。元エリート県令である父親の財に寄りかかり、ぐうたら息子の王弁は安逸を貪っていた。ある日地元の黄土山へ出かけた王弁は、ひとりの美少女と出会う。自らを僕僕と名乗るその少女、実は何千何万年も生き続ける仙人で…不老不死にも飽きた辛辣な美少女仙人と、まだ生きる意味を知らない弱気な道楽青年が、天地陰陽を旅する大ヒット僕僕シリーズ第一弾!「日本ファンタジーノベル大賞」受賞作。
***********

2006/11刊行の単行本を面白そうと思いながら読みそびれていたので,文庫化を機会に購読.
芥川龍之介の杜子春は,親を見捨てることが出来ないので仙人になれなかったのだが (この小説では芥川のタネ本がちゃんと引用されている),こちらの王弁くんは仙人になりたいなどという高望みはしない.この小説での主人公と父親との距離感は,主人公と美少女仙人との距離感に負けずに面白い.

杜子春の仙人よりもっと,美少女仙人は人間好きらしい.それとも,主人公をからかっているうちに,次第に人間好きになったのかもしれない.芥川のはどことなく説教臭いが,こちらは軽くて,期待したとおり恋愛小説みたいに展開する.

蝗大発生に出向いて,蝗退治をしてやろうとして仙人は出ばなをくじかれる.人間の科学の進歩のためである.この仙人は時流に逆らって人間にちょっかいが出したいらしい.しかし時代とともに仙人の出番はなくなり,天界・仙界と人界の交渉が完全に切れたのが現代ということか.

このシリーズはすでにこれを含めて3冊出ていて,解説によれば著者のライフワークになるらしい.
でもこの第一作を超えるのは難しそう.
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純正律のように響く平均律 (2)

2009-04-07 09:16:28 | 新音律
前回4/4への補足.

ドレミを低いほうから ド0 レ0 ミ0 ファ0 ソ0 ラ0 シ0 ド1 レ1 ミ1 .....ド2 レ2 ミ2 ...等と書くことにする.すなわち,ドレミの後の数字はド0 から何オクターブ上にあるかを示す.

ド0の波に対して,純正律では,2倍波はド1,3倍波はソ1,4倍波はド2,5倍波はミ2,6倍波はソ2...の高さの音となる.2倍波・3倍波・4倍波・5倍波...は管の中の空気の振動や弦の振動に含まれている.だから管楽器や弦楽器ではド-ド,ド-ミ,ド-ソ等の響きが良い.

しかし平均律では,無理数を2の12乗根を物差しにしているので,ド1・ド2・ド3...は確かに2倍波・4倍波・8倍波...になるが,ソ1は3倍波からずれているし,ミ2も5倍波からずれている.
そこで,ずれているソ1・ミ2・ソ3...の高さの倍音もどきを計算機で作ってしまい,これらの「もどき倍音」を足し合わせて,楽器の音もどきを作ろうという作戦であった.

本日のふたつのグラフはいわゆる不協和曲線である.左端がドで,このドともうひとつの音を重ねる.第2音は右へ行くほど音が高くなる.めもりは半音に対応する.縦軸はドと第2音が重なったときの響きの「悪さ」で,曲線が下がっていれば第2音はドと良く響きあう.

上のグラフが平均律の不協和曲線である.ミ・ファ・ソ・ラの位置では曲線は確かに下がっているが,谷が最も深い位置とは微妙にずれている.ミのずれが相対的に大きい.
だから平均律のピアノはいまいち響きが悪い,ということになっている.

下のグラフは4/4のブログの計算結果に基づいて整数倍波の位置をずらした合成音の曲線である.ここでは全音のみならず半音の位置でも曲線が谷になり,しかもいちばん深い位置は平均律の音高とぴったり一致する.

ここまでの記述は

[1] W.A.Sethares ”Tuning, Timbre,Spectrum, Scale” 2nd. ed., Springer(2005).
[2] J.R. Pierce, "Attaining consonance in arbitrary scales", J. Acoust.Soc.Am. 40 (1966) 249.

を参考にした.

下のグラフでは,12音のほとんどの音が互いによく響くはずだが,こういう音律ではめりはりがなくて,演奏してもかえってつまらないんじゃないの...という気もする.

この項続きます.
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坂口安吾...

2009-04-06 08:48:32 | エトセト等
結婚式→披露宴→2次会 に出席.
(以下,不的確な記述がございましたら,慶事に免じご寛容の程お願い申し上げます.)

新郎は理系で小生の同業者だが,新婦は文系で,文理融合である.新郎は口ではかなわないだろう.
新婦は京大の大学院で坂口安吾を研究されたとのこと.新婦の恩師が「イノチガケ」を話題にされ,これが披露の席でなかなかフレッシュだった.

小生はといえば,坂口安吾には「不連続殺人事件」の印象しかない.ミステリーも好き・安吾も好きというひとには案外すぐに底が割れる小説かもしれないが,これが安吾初体験だったのでびっくりした.いまでもこの作品は「虚無への供物」「黒死館殺人事件」級の日本のミステリの最高傑作と思っている.
「明治開化 安吾捕物帖」というのもあって,勝海舟が迷探偵ぶりを発揮するのだが,こちらはやや手抜きの感じ.

mixiをのぞいたら,日本文学の専門家の日記に「桜の森の満開の下」の記述があった.こちらは岩下志麻主演で生々しく映画化されたのを覚えている.
この写真は英訳本のカバー.「不連続殺人事件」は文体そのものがトリックと言えなくもないので,英訳は難しそう.

著作権が切れたらしく,安吾の短編はたいてい青空文庫でダウンロードできる.
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純正律のように響く平均律 (1)

2009-04-04 09:26:43 | 新音律
このブログで,「のぼしぇもん」さんから,まっとうな12音平均律で純正律のように響く楽器はできないのか,というコメントをいただいたことがある.

そういう平均律を計算機で作るのは可能である.おそらく最初にこの問題に挑戦したのは,村上陽一郎訳「音楽の科学」の著者,ジョン・R・ピアースであろう.

響きが良いというのは,倍音同士の周波数が一致するからである.たとえば純正律では,ドの3倍波とソの2倍波の周波数は一致するので,ドとソの響きは良い.
12音平均律では音の高さは等比数列をなし,その公比は2の1/12乗である.公比が無理数だから,一筋縄ではいかない.

そこで,平均律の構成音の倍音の周波数を多少ずらすことにする.平均律において,根音から数えてx 番目の音が第n 倍音に一致するなら,x はこのカットの先頭の方程式を満たすはずである.倍音の倍数 n を決めたときの x が表になっている.
x は何番目という序数の指標だから整数でなければならない.そこでこの表に最も近い整数を採用し,その周波数を倍音もどきの周波数とすることにする.
こうして周波数位置にピークを持つ音源をソフトウェアで作る.

この項 未完です.
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ブックオフで105円

2009-04-02 09:06:40 | 読書
11 年前の単行本.北村薫「朝霧」東京創元社(1998)

語り手《私》と噺家の春桜亭円紫師匠が登場するシリーズの最後.シリーズ第一作「空飛ぶ馬」は北村薫氏のデビュー作だったはず.当時十代だった《私》も大学を卒業し,出版社に勤めている.現在は三十台半ばのはず.このあたりでもう一作...なんて無理だろうか.

ちなみにこのシリーズのカバーは高野文子さんで,《私》がいつも同じようなポーズで登場するが,次第におとなになっていく.文庫のカバーも単行本を踏襲している.ただし,たとえばこの朝霧の場合,文庫のカバーではスコップがなかったりする.

シリーズは5冊で,これを含め3冊が短編集.創元クライムクラブというシリーズに入っているが,この本では (そしてたいていこのシリーズでは) クライムは何もない.枕だけでおわってしまう落語のようなだが.そこが良い.はっきり言って,この作家に関してはこのシリーズが最高だ.
「空飛ぶ馬」時代は覆面作家で,あのころネットで男性か/女性か 話題になったのを思い出す.
当時北村さんは高校の先生だったそうだが,初期の作品には小説を書く喜びが感じられる.

初版の美本.だれも開けたことがないのではと思われる状態.古書ではしおりひもの先っちょがぱさぱさにほぐれているものだが,先までページの中に平たくなっていた.
これで105円では,なんだか《私》さんに悪いみたい.
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reading

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